検討進むカジノサイト接続遮断 「通信の秘密」犠牲に何を守るのか

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若江雅子
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記者解説 編集委員・若江雅子

 オンラインカジノのブロッキング(接続遮断)をめぐり、法制化の是非が総務省の有識者検討会で議論されている。ブロッキングはカジノで遊ぼうとする客だけでなく、全てのインターネットユーザーの通信の秘密を侵害する手法だ。それが許容されるかどうかについて、検討会では「通信の秘密と引き換えに何を守ろうとするのか」「効果があるのか」「他に手段はないのか」の三つの視点から検証している。

 しばしば混同されるが、ブロッキングは問題があるサイトのドメイン名の登録を解除して閉鎖させたり、問題ある投稿を削除したりする手法とは根本的に異なる。問題のサイトには手をつけずに、インターネット接続事業者(ISP)がそこにアクセスしようとするユーザーの通信を遮断するのが、ブロッキングである。

 だが、その通信を見つけるには、全てのユーザーの全ての通信を把握する必要がある。つまり、ブロッキングは問題サイトとは無縁のユーザーの通信の秘密を犠牲にすることによって、はじめて成り立つ手法だということになる。

 通信の内容や宛先を知られたり利用されたりしない通信の秘密の権利は、憲法で保障されている。それを具体化する形で、電気通信事業法は通信の秘密の侵害行為を禁じており、ISPが勝手にブロッキングすれば重い罰則を科されることになる。

 それでも、児童ポルノサイトに限っては2011年からブロッキングが実施されている。児童ポルノの流通は、被害児童の心身に生涯回復不能な傷を与える深刻な人権侵害であり、それを止めることは「緊急避難」として、違法性が阻却されると判断されたからだ。

 一方、漫画を無断掲載していた「漫画村」などの海賊版サイトについては、政府が18年にISPにブロッキングを要請したものの、批判を受けて断念。ブロッキングの法制化も検討されたが、法律自体が違憲で無効となるおそれが指摘され、実現には至らなかった。

 児童ポルノと海賊版サイトの結果の違いは、ブロッキングによって守ろうとする「法益」の重さの差にある。

 前者は個人の尊厳、後者は著作権者の経済的利益だ。児童の尊厳を守るためには通信の秘密を一定程度犠牲にしてもやむを得ないが、経済的利益のために犠牲にすることは許されない。こうした考え方は、海賊版サイトをブロッキングしようとしたISPへの差し止め訴訟の19年の東京高裁判決でも明確に示されている。

 では、今回のオンラインカジノ対策で通信の秘密とてんびんにかけられる保護法益とは何か。

ポイント

・ブロッキングはカジノ利用者だけでなく全ネットユーザーの通信の秘密を侵害する
・オンラインカジノ対策は急務だが、まずは国民の権利を侵害しない手法で対応を
・目的は依存症患者の救済なのか、国内ギャンブル産業の保護なのか明確にすべきだ

 まずは賭博罪が検討された…

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