憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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第5話:企業殲滅依頼①

 

「これは……」

 

 俺は便利屋が座っている椅子に向け、1つの端末の画面を見せる。

 画面を見た便利屋ははっとした表情を浮かべ、悩み込む仕草を見せた。

 

 それもその筈。

 その画面に表示されているのは、全て便利屋が詐欺を受けた企業の名前のリストだったからだ。

 

 何故便利屋を欺いた企業を俺が割り出すことができたのかは、非常に簡単な事だ。

 

 まず、プレジデントに直談で『不穏因子の排除』を名目に各子会社のデータ提供を求める。

 勿論俺を信用し切っているプレジデントはそれを認め、データを俺が受諾。

 そして、俺が受け取ったデータを部下に解析するよう指示。

 その中から『未成年の子供』または『学園の生徒』との接触回数を多い企業をピックアップし、諜報部に詳しく調べさせただけだ。

 

 プレジデントとの直談は便利屋がここを訪れる以前から監査が必要そうな子会社を割り出す為に行ったのだが、今回はそれが思わぬ利益を招いた。

 既に受け取っていたデータの中から、先ほど部下に調べさせ即座にピックアップさせただけのこと。

 

 かなり急ぎの荒技ではあるが、俺の部下が優秀で助かった。

 

「さあ、どうする便利屋?」

 

 俺は改めて彼女らに問う。

 騙され、金を不正に取られたり、報酬が支払われなかった件については絶対に恨みを持ってるはずだ。

 

 仮にその場で責任者がハルカやムツキ辺りに成敗されていたとしても、企業が消滅した訳ではない。

 便利屋を騙した企業も企業で、便利屋への恨みを募らせているのだ。

 

「……もしかして、私達のことを監視してた?」

 

「はて? 何のことかね。私は前から汚職の疑いがある企業の名を並べているだけだ」

 

 ここは安定のすっとぼけと行こう。

 変に関与した痕跡を残したくはない。

 

「……そう。で、どうする?社長」

 

「ど、どうするって言われても………」

 

 突然にカヨコに話を振られ、動揺するアル。

 アルは数十秒考え込んだ後に、口を開いた。

 

「……報酬は保証されるの?」

 

「勿論だとも。どこかの三流企業と違い、資金にも理念にも余裕があるのでね。仮に支払われなければ、私なり事務所なりを吹っ飛ばすが良い」

 

「分かったわ!! その依頼、受けさせて貰う!!」

 

「ククク、そうか。こちらとしても喜ばしい限りだ、結果に期待しているぞ。便利屋68」

 

 

⬜︎

 

 

 あの後便利屋は依頼の決行日時と内容を受け取り、事務所を後にした。

 

 依頼名は『企業殲滅依頼』

 カイザー・マーセナリー取締役兼PMC総括指揮官名義での、極秘依頼だ。

 

 内容は至って単純である。

 リストアップした6つの企業の事務所の破壊及び責任者の捕縛。

 捕縛時の状態は生きていれば()()()()()()()、とした。

 

 これで依頼は出したし、場所と日時も示した。

 

 事務所爆破の爆薬については便利屋達に『保存状態の関係で作動するか不明な為、処分される予定だった爆薬』を正規価格より圧倒的に格安で売却した。

 勿論後払いで。

 

 後は彼女達に任せるだけだ。

 

「便利屋68、幸運を祈るぞ」

 

俺はそう呟き、社宅へと向かった。

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

「皆…準備は良いわね?」

 

「うん、ばっちり」

 

「準備万全だよ、くふふ〜」

 

「わ、私はいつでも…」

 

 薄暗い裏路地に身を潜めた便利屋68の面々は、互いに小声で確認を取り合う。

 目の前の建物は、カイザーから殲滅対象に指定された六つの企業のうちの一つ。

 小規模なPMC(民間軍事会社)でありながら、自社の兵力を用いて他の事業へ干渉していたとされている。

 

 他には銀行や商社、研究施設など、異なる性質を持つ企業が殲滅対象に含まれていた。

 

 カイザーの将軍からは『殲滅する順番は問わない。但し、襲撃の際は会社名を必ず伝えろ。殲滅後に部下が建物の差し押さえと後処理を行うのでな』と伝えられている。

 

(本当に至れり尽くせり……何がしたいのかは分からないけど、今は依頼をこなす他ないか…)

 

 カヨコは若干の不信感を抱きながらも、そう自分を納得させた。

 事実、自分達が生きていくには依頼を受けるしかない。

 それに、将軍が確約した報酬は具体的な要件が多く、少なくとも()()()の観点からであれば信用に足るものであったのだ。

 

「それじゃあ、行くわよ!! ハルカ、ムツキ!!」

 

「おっけ〜!」

 

「了解です!」

 

 

ドゴォォォォォォォン!!

 

 合図と共に、事務所の正面玄関が轟音と共に吹き飛ぶ。

 ムツキが事前に仕掛けた、カイザー製の高威力爆薬が詰め込まれたバッグが起爆したのだ。

 爆風はガラスと扉を粉砕し、周囲のコンクリ壁までも抉り取る。

 

「な、何事だッ!?」

 

「クソ、警備がやられた! 即応戦力を出せ!!」

 

 爆音に驚き、ロビーにいた職員が外へと駆け出す。

 だが、彼らの視界に飛び込んだのは、銃を構えるカヨコだった。

 

「カヨコ、今よ」

 

「分かってる」

 

バスッ! バスッ!

 

「ぐァッ!?」

 

「ぐへッ!?」

 

 カヨコの拳銃が、寸分違わぬヘッドショットで2名を無力化。

 たった一撃で、職員はそのまま硬直し、前のめりに崩れ落ちる。

 

 その隙に、ムツキとハルカが建物正面までダッシュ。

 砕けた瓦礫と煙に紛れ、遮蔽を取りながら配置につく。

 

 ――その瞬間。

 

「敵襲だ!! 武装した連中が――!」

 

 ロビー奥から飛び出してきた武装職員たちが、火器を構えるより早く。

 

「それじゃ、いっくよ〜!」

 

「し、死んで下さい死んで下さい死んで下さい――!」

 

「ひぃ、何だコイツら!?」

 

 ムツキが姿を現し、ハルカが正面から飛び込む。

 ロビーの空気が一瞬止まる――その間に、ハルカが至近距離に接近。

 

ダァン!! ダァン!! ゴシャ!! ダァン!!

 

 ショットガンの連射が炸裂。

 1発、2発と職員の顔面を吹き飛ばし、受付の奥まで弾き飛ばす。

 さらに隣の職員の腹部を銃床で叩きつけ、蹲ったところへトドメの一撃を叩き込む。

 

「よくやったわハルカ!! カヨコ、私たちも行くわよ!」

 

 アルの指示に、カヨコが頷く。

 完全制圧されたロビーには、警報の音が虚しく響き続けていた。

 

 

 

⬜︎

 

 

 

「お、お前ら! 何をしている!! 相手はたったの4人だぞ、さっさと通路から押し戻せ!!」

 

「だ、ダメです! 相手の練度が――ぐぎゃッ!?」

 

 便利屋68が事務所に侵入してから僅か10分。

 彼女達が誇る圧倒的な戦闘能力を前に、PMC兵士達はただ蹂躙される他なかった。

 

 そもそも子会社のPMCともなれば、当然カイザー・コーポレーション本社は叛乱防止として装備や人員の上限を制限している。

 カイザー本社の部隊をアビドス砂漠で撃破した経験のある彼女達に、苦戦する道理は無かった。

 

「くッ…第2通路を放棄する! 工兵、爆薬を爆破しろ!!」

 

「了解! 爆薬点か――」

 

「させないわ!!」

 

 PMCの指揮官が通路からの撤退を決め、便利屋の追撃ルートを塞ぐ為に爆薬の爆破を指示する。

 

 だが、便利屋がそれを許す筈もなく。

 

ダァン!!

 

「ぐはッ!?」

 

「ち、跳弾だと……!?」

 

 死角に居た工兵を、アルの愛銃『ワインレッド・アドマイアー』の放った銃弾が撃ち抜いた。

 通路の出口の半開きになった鋼鉄製のゲートに銃弾を跳弾させたのだ。

 

 銃弾を跳弾させ死角の兵士の頭を撃ち抜くという人離れした技術を目の当たりにした兵士達に、僅かだが攻撃の手が緩まる。

 

 ムツキはその隙を見逃さなかった。

 

「喰らえ〜♪」

 

チュバァァァァン!!

 

「ぐわぁぁぁぁぁッ!?」

 

 クラスター弾タイプの手榴弾を一気に投擲し、手榴弾から放たれた子弾が兵士達を貫く。

 

「……全滅を確認。先を急ぐよ、社長」

 

「そうね、行くわよ!」

 

 そう言い走り出す彼女らの足元には、数百人のPMC兵士が倒れ伏していた。

 その兵士達の中に、蠢く影が一つ。

 

「ぐゥ…クソ、何なんだ! アイツら…!」

 

 部下が丁度良く子弾の盾になり、辛うじて意識を保っていた指揮官だった。

 

 彼は便利屋68が社長室の方向へ走り去ったのを見て、静かにその体を起こす。

 

(連中の顔ぶれ…覚えているぞ。確か数週間前、依頼にバカみたいに食いついてきたのを使い潰してやった奴らだ)

 

 数週間前、条件なしで放出した依頼にホイホイと食らいついた子供(ガキ)

 碌に依頼前の契約もしないものだから、自業自得だと報酬未払いで使い潰したのだ。

 

 文句をぎゃあぎゃあと喚かれたが、わざわざその無礼を無視して追い返してやったと言うのに……

 

(カイザーが後ろ盾に居るから大丈夫かと思っていたが……畜生! まさか本当に武力で報復に来るなんて……ゲヘナのイカれ女郎共が!!)

 

 大人を舐めるなよ。

 こうなったら、カイザー本社にこの件を報告して、一生奴らが学園生活を送れないようにしてやる。

 

 自分のキャリアを一瞬にして潰され、怒り心頭のPMC指揮官は端末を懐から取り出し、カイザー本社へ繋いだ。

 

「聞こえているか、こちらハーミットPMC本社!! 緊急事態だ! 将軍と繋いでくれ!!」

 

『了解しました。しばらくお待ち下さい』

 

 彼は子会社の一介の指揮官に過ぎないが、それでもPMCの指揮官。

 非常事態にはカイザー本社の部隊の一部として行動する義務があるが故に、将軍(ジェネラル)とはきちんとパイプを持っている。

 

 しばらく待つと、端末の待機画面が消え、お馴染みの声が聞こえてきた。

 

『ハーミットPMCの指揮官がこんな時にどうした? 手短に話せ』

 

「便利屋だ、便利屋の連中が本社を襲撃してきた!! 既に部隊は壊滅で、社長も狙われている!! 至急応援を送ってくれ!!」

 

 彼は嗤う。

 これで便利屋の連中は終わりだ、と。

 

『そうかそうか、それは緊急事態だな。急いで応援を回さねば……だが、指揮官。君たちは便利屋の襲撃よりも先に、私達に報告すべきことがあるんじゃないか?』

 

「なに……? 報告すべきことだと…?」

 

『ああ。心当たりがあるだろう。応援部隊はそれからだ』

 

 ジェネラルの半分脅すような声色に、指揮官は思わず息を呑む。

 

 まさか、()()()()がバレたのか…?

 莫迦な、有り得ない。

 

 徹底した秘匿性の上で進められてきた計画が漏れるなど、あってはならない。

 

「はて、分かりませんな……それより早く応援部隊を送って――」

 

『ハーミットPMCは他5社の子会社と共同してカイザー・コーポレーションへの襲撃計画を企てていた……何故そんな簡単なことを言えん?』

 

「なッ……!?」

 

『正直に吐けば良いものを……まぁ良い。私から言える事は一つ――“カイザーを舐めるな”だ。せいぜい頑張る事だな、ハーミットPMC』

 

 ジェネラルはそう吐き捨て、通話を切った。

 

 指揮官は顔面蒼白になりながら呆然と座り込む。

 

 今頃、便利屋の連中が警備を突破して社長室へ辿り着いた頃だろう。

 計画が本社に漏洩した以上、増援は見込めない。

 

 それどころか、本社の部隊が監査の名目で各会社を殲滅しに来るだろう。

 

 ならば、せめて、せめて。

 この会社を企業の犬にまで成り下がらせたカイザーに一矢報いてやる。

 

 彼は端末を握り締め、こうメッセージを送信した。

 

《カイザー本社に計画がバレた。直ぐに()()を解放するよう要請する》

 

 メッセージを送信後、彼はおぼつかない足取りで出口へと歩み始めた。

 この行動が後に便利屋を追い詰めることになることを、まだジェネラルは知らない。

 

 

 一方で便利屋68。

 

 

「で、コレどうするんだっけ〜?」

 

「確かカイザーの将軍が後で回収するって言ってたし、風紀委員会が来る前にさっさと次に行こう」

 

 頭を銃撃により撃ち抜かれ、意識を失っているPMC社長を側にそう言ったムツキの言葉に、カヨコがそう答えた。

 

 カヨコがジェネラルから提供された建物の見取り図を元に、裏口への道を示す。

 

 

 1社目、殲滅完了。

 残り5社。




リメイク版でも書きましたが、主人公が受肉(?)させる予定はありません。
要望が極めて強ければ検討しますが、個人的にこの小説の主人公の立ち位置は最終的には皆んなを見守るパパ的な立ち位置にしたいので。
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