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「今さらしんどい思いをして働く意味がわからない」父親の遺産と母親の年金で食いつなぐ51歳引きこもり男性の胸中

引きこもりを長期化させる親との歪な関係性

親の死後を生きる[引きこもり中年]の苦闘

木造2階建ての一軒家に一人残された今も、立木さんの生活範囲はこの部屋のみ。床に敷かれた布団を中心に、服や生活雑貨、コンビニで買った食べ物、飲み物が手の届く範囲にまとまっている

「引きこもり状態は、怠けでなく“みずからの命を守る行動”なんです」 心のケアの専門家として20年以上も引きこもり支援を続ける「NPO法人ふらっとコミュニティ」代表の山根俊恵氏が説く。 「生きづらさを抱えた人が傷つき、社会と一時的に距離をとるため家にこもるのは、自己防衛反応の一種。外の世界がとてもツラいからこそ、最も安全な“避難所”として自宅を選ぶのです」 だがその避難所も、当事者を追い詰める場になる恐れがある。山根氏はその背景に“共依存”を指摘する。 「かわいそうと、必要以上に親が先回りして世話を焼いてしまうと、子供の動ける力を奪ってしまいます。親が倒れたときに子供は何もできず、途方に暮れるしかなくなります」

事態を長期的に悪化させる要因は…

さらに、親の期待の押しつけの連打が、事態を長期的に悪化させるという。 「“わんこそば理論”と呼んでいますが、『あなたならできるでしょ』と、善意のつもりで期待を一方的に押しつけると、子供は拒否もできず逃げ場を失ってしまいます。避難所だった家が危険地帯に変わってしまえば、ますます部屋から出ようとは思えなくなります」 親の優しさと子供の自立。その断絶を埋める鍵は、任せる勇気にある。 「支援現場で感じるのは、困らないよう手出しするのではなく、できそうなことをお願いして感謝することのほうが大事だという点です。ありがとう、助かった。この言葉こそ、外の世界と再び繫がる第一歩なのです」 子を思う気持ちが逆に生きる力を奪ってしまう可能性もあるのだ。 【NPO法人ふらっとコミュニティ代表 山根俊恵氏】 山口大学大学院医学系研究科保健学専攻教授。著書に『ひきこもり“心の距離”を縮めるコミュニケーションの方法』など
親の死後を生きる[引きこもり中年]の苦闘

NPO法人ふらっとコミュニティ代表の山根俊恵氏

取材・文/週刊SPA!編集部
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