ニュース

「今さらしんどい思いをして働く意味がわからない」父親の遺産と母親の年金で食いつなぐ51歳引きこもり男性の胸中

高齢母まで病に倒れてしまい…

親の死後を生きる[引きこもり中年]の苦闘

実家を出た弟に生まれた息子を抱きかかえる立木さん。白髪の多い様子が、長年の引きこもり生活の苦悩を物語っている

そう悪びれる様子もなく語る背景には、一度も親元を離れたことがない影響も大きい。 「親がいれば何不自由ない生活ができて、 家賃や光熱費などの“ムダ金”もかからないじゃないですか。だから、高校も大学も職場も実家から通えることを第一に決めたんです。再就職も考えましたが、以前と同じ職種で、手取り25万円くらいの仕事なら簡単に見つかると思ったのに、100社以上に応募しても書類すら通らず、嫌気が差しました」 そんなとき、長きにわたる引きこもり生活を揺るがす事態が起こる。2年前から糖尿病治療を行っていた母親の容体が悪化して、今年1月に緊急入院。医者から「そう長くはない」と宣告された。 「弟は結婚して家を出ていて、見るのは自分しかいない。『こんな状態で働けるわけがない』と就活もやめました。母が入院するときに二つの通帳を預かっていて、一つは生活費や治療費に使う年金用の口座、もう一つが『絶対に手をつけないで』と釘を刺された貯蓄用。合わせて100万円もなく、初めて事の重大さに気づきました」

本当の苦闘は始まったばかり

一人残され、ようやく親亡き後の生活の恐怖が現実味を帯びてきた。弟には、「実家を売って生活保護の申請も考えてほしい」と言われたが、立木さんは納得していない。 「持ち家があると、生活保護の対象にならないのは知ってます。でもこの家を失えばもう住む場所がないし、両親が守ってきた家を自分のために売る決断はできなくて……」 自身の貯金額も20万円を切っているが、「両親の貯金があるうちは絶対に1円も使いたくないです」と開き直った。 「ずっと楽して生きてきたから、今さらしんどい思いをして働く意味がわからないし、先のことは考えないようにしています。養ってくれる人がいれば結婚も考えたいですが」 現実逃避が許される日々の終わりは近い。彼の本当の苦闘は始まったばかりだ。
次のページ
引きこもりを長期化させる親との歪な関係性
1
2
3
【関連キーワードから記事を探す】