「今さらしんどい思いをして働く意味がわからない」父親の遺産と母親の年金で食いつなぐ51歳引きこもり男性の胸中
80代の親が50代の子供の世話をするいわゆる「8050問題」が深刻化している。’25年には団塊世代の全員が後期高齢者となり、引きこもりの子供を残したまま、親が亡くなるケースが増加しているのだ。社会との繫がりを断った「大人の引きこもり」が親亡き後に辿る過酷な現実に密着した。
親の死後、残された人生をどう生きるか――。内閣府の’22年度の調査によれば、15~64歳のうち推計146万人、実に50人に1人が引きこもり状態(半年以上にわたって家庭にとどまり続けている状態)。年齢別は、40~64歳の引きこもりが約85万人と大きな割合を占める。
そんな働けずに社会から離れたまま年を重ねた引きこもりたちに今、「親の死」という現実が迫っている。引きこもり状態を金銭面で支えてきた親の死後、彼らはどんな現実に直面するのか? 立ち行かなくなれば多くは生活保護に頼らざるを得ないだろう。実際、生活保護受給者の全体数は減少する一方で、65歳以上の受給者は増加し続けている。
まさに日本全体で考えなくてはいけない社会的課題だが、そんななかで「生活をなんとか立て直そう」ともがく中年引きこもりたちがいる。親が亡き後に再起を期す引きこもり中年の姿に密着した。
「自立しないといけないことはわかってるよ。だけど……」
町工場が密集する東大阪市の一角、築40年になる木造2階建ての家にたった一人で住む立木和之さん(仮名・51歳)の声がむなしく響く。彼が引きこもるようになったのは10年前、大学卒業後から勤めていた自動車工場をリストラされたことだった。
「会社のために尽くしてきたのに、事業縮小を理由に突然解雇されました。当時は『なんで俺が』って怒りしかなかった。それで人と会うのが嫌になって、昼夜逆転の生活に。でも食事は親が用意してくれるし、家にお金を入れなくてもいいって言われてたから、カネを使うのなんかコンビニくらい。貯金が100万円あったので焦りもなかったです」
生活の一切を親に任せる気ままな生活は、8年前に父親が肺がんで他界しても変わることはなかった。
「なんとなく具合が悪い様子だったけど、看病は全部母親に任せっきり。さすがに死んだときはびっくりしました。でも遺産の200万円と母親の月8万円の年金でやりくりすれば、当面の寝食には困らないなと思ったんですよ」
40~64歳の引きこもりは約85万人
写真はイメージ
父の遺産で食い繫ぐも…
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