【労働・労災】「高等学校の教諭に対してなされた、授業・担任等の仕事外し、職員室内での隔離、別の部屋への隔離、自宅研修等の命令が、違法であるとして、600万円の損害賠償が認められた事例」(松陰学園事件)(東京地裁平成4年6月11日判決、東京高裁平成5年11月12日判決)
それでは、「人間関係の切り離し」が問題となった松蔭学園事件についてみていきたいと思います。!
事案は、女性教諭Xが、高等学校によりなされた授業・担任等の仕事外し、職員室内での隔離、何らの仕事が与えられないままの4年6ヶ月にわたる別室への隔離、5年以上にわたる自宅研修等の命令や、一時金の不支給・賃金の据置は、Xが組合員であることを理由とする不当労働行為であると共に、業務命令権を濫用した違法は命令であり、これらは人格権等を侵害する不法行為に該当するとして、1000万円の慰謝料を請求したものです。
(ゆめしま海道)
裁判所は以下のとおり判断しました。
まず、教師として労働契約を締結したXに対し、長期間にわたって授業及び校務分掌を含む一切の仕事を与えず、しかも、一定の時間に出勤して勤務時間中一定の場所にいることを命ずることは、生徒の指導・教育という労働契約に基づいて、Xが供給すべき中心的な労務とは相容れないものであり、それ自体がXに対して通常甘受すべき程度を超える著しい精神的苦痛を与えるものとして、業務命令権の範囲を逸脱し、違法であると判断しました。
その上で、、教師として労働契約を締結したXに対し、長期間にわたって授業及び校務分掌を含む一切の仕事を与えず、しかも、一定の時間に出勤して勤務時間中一定の場所にいることを命ずることは、生徒の指導・教育という労働契約に基づいて、Xが供給すべき中心的な労務とは相容れないものであり、それ自体がXに対して通常甘受すべき程度を超える著しい精神的苦痛を与えるものとして、業務命令権の範囲を逸脱し、違法であると判示しております。
人間関係からの切り離しは、業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、業務の適正な範囲を超えるものが多いのではないかと思われます!
慰謝料は600万円が認められています。
あかるい職場応援団のHPでは、この事案について、以下のとおり解説されています。
「業務をさせない、あるいは、自宅待機を命じるにあたっては、事前に十分な検討が必要 本判決では、上記1で示したポイントにのっとり、学校側が挙げる、Xに仕事をさせない、あるいは、隔離することとした理由が、「一般的にも無理からぬと認められるような特別の事情」かどうか検討されたものの、結論としては、特別の事情にはあたらず、むしろ、Xの労働組合活動を嫌悪した嫌がらせや、Xを退職させようとしたものであると判断され、違法性が認定されています。例えば、「他の教員の発言について、メモを取るのを止めさせるため職員室の入口近くに席を移した」などという点は、職員室内にいる限り、この行為を止めさせることはできないわけですので、席の移動ありきの後付けの理由と捉えられてもやむを得ないところがあります。
使用者としては、労働者の行動が職場に混乱をもたらすことなどから、仕事をさせない、あるいは自宅待機を命じることを検討せざるを得ないこともあるでしょう。しかし、その場合には、それら行為が違法とされる可能性があることを認識し、当該労働者の行動が本当にそれら対応を必要とするほど問題のある行動か否か、また問題のある行動であったとしても、とろうとしている対応がその解決に資するものとして説明可能か、立ち止まって十分に検討する必要があります。」
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