人は自分の考えと同じ意見を持つ人を好む。客観的事実よりも、自分の立場を擁護してくれる情報に強く引き寄せられる。SNSはそれが顕著に表れる。その結果、トランプ氏のような米国第一主義や過度の保守主義、自国さえよければ構わないという反グローバリズムに陥り、危険なポスト・トゥルースを生む。
ここで整理しておく。SNS上では意見や考えが近い人同士がつながりやすく、そこで共有される情報は偏ったものとなる。事実や真実よりも共感できるかどうかが重視される。意見が極端になり、社会を分断させる。
異なった意見を聞いて認め合い、議論を深めていく民主主義のルールが無視される。SNSがもたらす社会のゆがみが、私たちの民主主義を蝕む。そうならないためにも自分と異なる意見に進んで耳を傾け、冷静に判断できる能力(リテラシー、literacy)を養う必要がある。
SNSによって増幅されたゆがみ
トランプ大統領は自分に有利な情報をSNSに投稿してそれを拡散させ、アメリカ社会の世論を作り上げ、自らを大統領に選出させた。まさにポスト・トゥルースを生み出す怪物である。トランプ氏が怪物なら、立花孝志容疑者はさしずめ、「デマゴーグ(demagogue)」といったところか。
デマゴーグは古代ギリシャに起源を持つ言葉で、大衆の感情に訴えて支持を集める扇動的な政治家を意味する。ただし、立花容疑者は政治家とは言えまい。反社会的行為を繰り返し、社会に貢献しようとしないからである。
ところで、亡くなったのは、兵庫県の竹内英明元県議だけではない。政治団体「みんなでつくる党」(元NHK党)のボランティアスタッフの会社員男性(当時、64歳)も、今年4月9日に自ら命を絶っている。ちなみに立花容疑者の政治団体は名称を何度も変えているが、NHK党はその1つだ。この問題はTBSの報道特集(4月19日放送)やネットニュース、週刊誌で大きく取り上げられた。
これまでの報道を総合すると、この男性は候補者と関係のないポスターを貼る行為をやめさせる署名活動をしていたところ、自宅の住所をSNSに公開されるなどの嫌がらせを受け、NHK党の党首の立花容疑者にプライバシーを侵害されたとして裁判に訴えていた。
男性は遺書を残し、その遺書で〈私が死を選んだ、選ばざるを得なかった最大の理由は立花孝志です。彼の存在と言動、行状がなければ、決して死を考えることはなかったと断言します〉と抗議の自殺であることを明かしていた。
また生前の記者会見では「一番被害を受けたのは妻です。私はもう覚悟を決めて、矢面に立って、顔もさらして名前も公開していますから。妻には説明をしたのですけれども、やはり非常に恐怖を感じるのです。おそらく立花さんは、そういうことまで想定しているとしか考えられない」と訴えた。こうした内容をTBSの報道特集は詳細に報じている。
「立花さんは、そういうことまで想定している」……。兵庫県警が逮捕の理由の1つとして挙げたように立花容疑者は極めて「悪質性が高い」のである。