“クソな労働”に向き合って、乗り越えて、死に様が「静か」であったら、理想だと思う
――作中の「渋谷事変」では次から次へと危機が襲ってきますが、もしそういう状況になったら、津田さんご自身はどういうふうに行動されますか?
あんな危機的状況の中で、最善を尽くすってのは……うーん、でも、頑張れるだけ頑張ろうかなと思います。どこまで余裕があるかにもよりますが、できれば全体のことも考えて。例えば旅先とか人間関係とかで、日常的に陥るようなピンチでも、自分なりに考えて、できることはやる。これもその場にならないと分かんないですけど、できるだけ冷静にはいたいなと思います。まぁ、咄嗟の行動は得意じゃないというか、そういう反射神経は鈍いんですけどね(笑)
――原作からのアレンジも素晴らしかった、七海さんの死に様について。
七海は基本的に、人としての夢である「後悔のない死に方」みたいなものを、実は全うできたのではないかなと思います。もちろん心残りは山ほどあるとは思うんですけど……、もう非常に潔く、うん、きれいに亡くなったのではないかと思うんですよね。死ぬとき、ただ、静かだった。
――「死に様は生き様である」とも言われますが、津田さんご自身はどう死にたいですか?
それこそ七海みたいな死に様は、非常に理想的だと思います。すごく静かに、ある種の納得を以て、受け入れていけるなら、幸福かなと。もちろん僕もそうやってきれいに、思い残すところもなく死ぬために、今、生きているうちに逆算して、ちゃんと動いていくわけですけれど。
――ありがとうございます。七海さんといえば「労働はクソということです!」という名言があり、津田さんは「お芝居はむしろ好きではない、ツラい修業のようなもの。だからこそ続けられる」みたいなことをおっしゃっていましたが、クソな状況を乗り越え向き合い続ける秘訣は?
……ツラくなければ続けられない、というほど極端ではないですけど、ハイ(笑)。僕の場合は、やっぱりお芝居がうまく絡んだり、スムーズに動いたり、思ってもない面白さがあったりとか、さまざまな要素でどうしようもなく興奮する瞬間があるんですよね。結局、まずは苦しまないとそれを味わう段階にすら辿り着けないから、日々向き合い続けてしまうんだと思います。
――続いての名言、「ここからは時間外労働です」ということで、津田さんの最近のルーティンや、インプットの時間の確保の仕方とかがございましたら教えてください。
インプットはね、どうしても時間のなさや忙しさにかまけて、ちょっとサボり気味になってしまっていて、そこは大きな反省点の1つです。以前、虎杖役の榎木くんと「共同で稽古場を借りよう」みたいな話もしていましたけど、結局実現できてないですし。あると楽なんですけどね~。睡眠時間の確保とか、規則正しい生活も、最近はほんと、お仕事の状況によるって感じです。
――近年、本当にいろいろな番組からお声が聴こえてくるので、驚異的なお忙しさかと拝察します。そんな中、「死滅回游」以降の原作も読まれましたか?
とりあえず1回は読みましたよ。あとは今からテレビで見るのを楽しみにしている感じですね。
――よかったです。劇場版に続き、来年1月からTVアニメ第3期「死滅回游 前編」も始まるということで、今後の展開も含めてPRをいただければと。
まずは劇場版ですね。「渋谷事変」がお好きな方も、今後の「死滅回游」を楽しみにしてらっしゃる方も、まだ「呪術廻戦」を知らない方も、いろいろな方にあらためてスクリーンで見ていただくってこと自体がすごく素敵なことなので。まぁ、つらいお話でもありますが、そこも含めて楽しんでいただければ、それが供養といいますか、正解なんだと思います。
――津田さんは映画を「作る」側でもありたい人とお伺いしておりますが、人生を経て、お仕事の経験も重ねて、エンターテインメントの好みに変化はありますか?
僕はずっと昔からアート映画が好きで、それは今も変わらず好きなんですけど、いわゆる“エンタメ!”っていう作品の面白さというか、“エンタメであること自体のすごさ”みたいものを感じるようになったかなと。この「呪術廻戦」も、1人の未完成な主人公の成長譚という少年誌の王道パターンを踏みつつ、呪術師をメインに据えることで描ける世界の新しさや時代性を感じますね。
――さて、「渋谷事変」の冒頭で虎杖たちが観に行っていた、「ミミズ人間4」みたいな映画についてはどうですか。
「えっと、それはつまり、B級みたいな。いや……うん、それはそれでやっぱりね、すごくファンの方もたくさんいらっしゃると思うので、ひとつのジャンルとして……見て、うん(切り替え)。僕がそういうのを選んで見ること? ないです。ハイ、ないですね(キッパリ)」
――期待通りの、七海さん口調のお答えをありがとうございます!
◆取材・文=坂戸希和美



