某テレビ局からリサーチを依頼されたので、
あんまりメディアで(まだ)触れられていない、
「中国人観光客が日本に来なくなる構図」をまとめてみました。
■ 本文は次の3つの主張で構成されています。
以下、それぞれについて解説いたします。
➀減少の主因は「個人の気分」ではなく、団体旅行(公費・国企・旅行会社)の供給崩壊である
➁団体ツアーは採算上、7〜8割キャンセルが出ると物理的に催行不能になる
➂個人旅行は二極化して一定数残るが、市場の半分が団体なので全体は大幅減になる
■ わずか数日で“50万件キャンセル”という異常事態
渡航自粛後、中国の旅行アプリQunarや香港メディアは日本行き航空券のキャンセルが49〜50万件と報道。
これは年間600万人規模のうち“1割弱”だが、実際には直近の既存予約の約32%=3割が一気に消えたという意味。
年末〜春節シーズンに3割が飛べば、地方観光地には深刻な衝撃。
■ 本質は「個人が来なくなった」のではなく「団体が上から止められた」こと
訪日中国人の約50%=300万人は団体旅行。
この“団体セクター”が今回まるごと蒸発した。
理由は明確で:
・国有企業(SOE)が総務部指示で日本旅行を一括キャンセル
・役所・大学の視察や研修が全面停止
・大手旅行会社が日本向けツアー販売を中止
・一部はビザ代行まで停止し、実質市場撤退
つまり、個人の気持ち以前に「組織が止めたから消えた」という構造。
■ 団体ツアーは“採算構造”の都合で簡単に死ぬ
団体旅行は一定人数を前提に原価が組まれるため、
キャンセル率70〜80% → 採算割れ → 催行不能になる。
中国側の旅行会社は「11月分はほぼ全滅」「キャンセル率80%前後」と証言しており、これは政治イベント+採算崩壊のダブルパンチ。
旅行会社が日本向け商品を止めるのは当然の帰結。
■ 個人旅行は“二極化して残る”が、全体を支えきれない
SNS反応では、個人はざっくり4タイプ:
1. 怖い・愛国 → キャンセル
2. 怖い・どうでもよい → 他国へ変更
3. どうでもよい・愛国 → 空気を読んで自粛
4. どうでもよい・プラン優先 → 予定通り訪日
実際には②と④が多く、日本には今も一定数の個人旅行客が来ている。
ただ、市場の50%=団体が抜けたら、個人では埋まらない。
■ まとめ:
「需要減ではなく供給崩壊による市場蒸発」
今回の訪日中国人減少は、
・渡航自粛
・国企・公費旅行の一括停止
・旅行会社の販売停止
・団体ツアーの採算割れ
・個人の一部キャンセル
が連鎖した結果、市場がごそっと消えた事例。
決してメディアが取り扱っているように「観光客たち個人の考え」から決まったものではない事が分かります。
この構造は、中国語圏では「観光の武器化」とも呼ばれています。
政治の動きひとつで、観光需要がここまで短期間に消し飛ぶことを示す典型例だと思います。