憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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第3話:傭兵支援会社『カイザー・マーセナリー』

 

 強制監査が終了した次の日。

 

 どうやら俺が監査を行い資産を接収した子会社は他の汚職を働く子会社との架け橋的な役割を果たしていたようで、回収した資料から別の汚職事件が次々と発覚した。

 

 俺からしたらまさに棚から牡丹餅状態なのだが、カイザー本社の視点からすると『今までは全く子会社の汚職に目を向けなかったのに、他の汚職と深い関係を持っている会社の監査を狙って行なった』ということ――つまり、メチャクチャ観察眼のある優秀な人間として認識された。

 

 そのせいか、今日はプレジデント直々のお呼び出しを喰らっている。

 

「将軍、お時間です」

 

 呼び出しに応じてD.U.地区にあるカイザーの施設の待機室で待機していると、カイザーセキリュティの警備員が俺にそう言った。

 

 俺は警備員に一言礼を述べた後、待機室を出てプレジデントの居る部屋の扉の前へと移動する。

 

「失礼します、お呼び出しを受けて参りました」

 

「将軍か、入れ」

 

 部屋の高級感溢れる扉をノックすると、プレジデントがそう答えた。

 俺は指示通りに入室し、一礼してから言う。

 

「今日は何の御用でしょうか。強制監査のことなら――」

 

「そう畏るな将軍。今日は君の活躍と優秀な能力を鑑みて褒賞を与える為に呼んだのだ」

 

「褒章…ですか?」

 

 少し予想外の言葉を聞いた俺は、その言葉を思わず復唱する。

 

 てっきり昨日の監査結果の資料か何かと共に新たな任務でも告げられると思っていたので、もしかしてカイザーって社員に対しては成果を出したらきちんとその分の褒章や昇格をさせてくれる真っ当な企業(当社比)なのでは? と思い始めてしまう。

 

「これを見たまえ」

 

「……これは?」

 

「君が昨日、監査で接収した子会社の資金と関連する会社の資産だ。昨日汚職が発覚した子会社の監査を全て終わらせた暁には、接収した資産と会社の利権を君に譲渡しようと思ってね」

 

「よ、宜しいのですか?」

 

 おいおい、マジか。

 

 危ない、驚き過ぎて素が出るところだった。

 

 汚職が発覚した子会社は昨日監査した会社含めて5社。

 プレジデントの話がそのまま実現するなら、その会社の人員・資産・会社の運営権が全て俺の手中に収まると云うことになる。

 

「非常に有難いお話ではありますが……私はPMCの一介の指揮官で…」

 

「気にすることはない。将軍にはよく私の極秘任務や特殊工作を幾度となく遂行して貰っているからな。寧ろこれでは少ないくらいだ」

 

 流石に話が美味すぎると思い問い質すと、プレジデントはそう答えた。

 

 まあ確かに幾つもの子会社が提携している企業で汚職が蔓延るのは大問題であるし、それを解決した俺が褒章を貰うのはおかしくない話だが…

 

(ここまでぶっ飛んだ非合法なやり方をいとも簡単に行えるとは……流石カイザーだな)

 

「分かりました。明日中には全ての監査を終わらせます」

 

「そうか! 頼りにしているぞ、将軍」

 

 プレジデントはそう喜色を含んだ声色で言った。

 

 このやり取りだけでプレジデントがジェネラルをどれだけ信頼しているかが分かる。

 実際、対策委員会編三章でもプレジデントがジェネラルを頼っている描写が見られたし、彼自身は非常に優秀だったのかも……いや、優秀なのだ。

 相手がいつも悪かっただけで(アビドス最高の神秘や連邦生徒会長の私兵)

 

 俺は褒章をどう使うかを構想しながら、部屋を退出し明日の監査に備えるのであった。

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 俺はプレジデントの話の翌日には、直ぐに監査に取り掛かった。

 素早く、そして正確に汚職の証拠を抑える。

 

 まず、監査対象の子会社の本社の住所を部隊員全員に共有。

 

 それぞれの監査を担当する指揮官を選抜し、情報の共有を一切させないよう同時に強制監査を執行する。

 下手に資料を持ち逃げされないよう、予め収集した情報を総動員した監査だ。

 

 何故ここまでするのか、と問われれば答えは簡単。

 

 一つは、当然褒章の為だ。

 クーデター計画達成の為には戦力は幾らあっても困らない。

 

 もう一つはカイザーを弱体化させない、と云うことだ。

 原作のように噛ませのような役割のままでは各地への手引き(生徒の笑顔を見る為の)すらままならない。

 強くなり過ぎでも困るが、ある程度は安定した行動を行えるようになって貰わないと困るのだ。

 

 それで、肝心の褒章の使い道だが……

 

 まず子会社の人員と運営権については、俺の直轄で運営される会社を設営する予定だ。

 今のところでは傭兵支援事業・私営輸送事業・特殊清掃事業の3つ。

 

 資金に関してはこの3つを経営しても尚余るくらいには有るので、それは自分の口座で保管、と云うことにする。

 

 それから勿論、監査を行なったPMC兵士への特別手当てにも使わなければならない。

 後は当然……

 

(生徒に…生徒に会いたい……!!)

 

 遠目でいいから生でネームドの生徒を見る。

 それを短期的な目標に、俺は夜遅くまでデスクに向かった。

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

『アルファチーム、任務完了』

 

『ブラボーチーム、任務完了しました』

 

『チャーリーチーム、監査執行完了』

 

 作戦司令室(HQ)の椅子に座り、監査の推移を見守っていた俺に、続々と通信が入る。

 事前の情報収集や経路の確保が効果的だったのか、監査はトラブル一つなく進めることができた。

 それに加えて、前回の事例もあるのでIED(即席爆発装置)や地雷に備えて対IEDアンテナや工兵部隊を投入したのも大きいだろう。

 

たかが監査に、と思うかもしれないが治安がアフガンやソマリア並のこの世界に於いては対策をするに越したことは無いのだ。

 

「将軍、全ての監査が終了しました。後始末は回収班に任せ、我々は撤退しましょう」

 

「そうか、ご苦労だった。全隊、速やかに帰投だ! 爆発があった会社は爆破事故として処理する。足が付く前に離れるぞ!」

 

 他の自治区内で無断で軍事活動をしているというのもあり、なるべく早く撤収する必要がある。

 爆発事故という名目であれば、その学園の治安維持組織に対しても『自社の管轄下の建物で発生した事故』という形で後処理を全てカイザーが行う(自己責任という名目で対応)こともできるのだ。

 

 後は成果をプレジデントの元へ持っていけば、約束された褒賞が貰える筈だ。

 そうすれば、前世の俺からすれば膨大とも言える資金と、俺が私有できる3つの企業が手に入る。

 

 既に企業の方はキヴォトス各地に宣伝紙やCMを流してあり、評価も良好なのでビジネスとしては上手くいくだろう。

 

 こうして、あらゆるトラブル要素を取り除いた俺の監査は何一つ失敗なく成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ社長、この会社って……」

 

「カイザー・マーセナリー? 如何にも胡散臭そうな名前〜」

 

「傭兵・依頼型ビジネスへの資金支援ですって? だ、ダメよそんなの!! よりにもよってカイザーなんて…」

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

『将軍、今日の売り上げです。カイザー・マーセナリー、カイザー運輸、カイザー・クリーン、3社共に順調な売り上げです。この勢いであれば、数ヶ月で新たな企業を一から設立できるほどの資金が蓄えられます』

 

「そうか、報告ご苦労。私はこれからカイザー・マーセナリーに視察に行く。終了業務はそちらでやっておいてくれ」

 

『了解です、将軍。良い夜を』

 

 会社経営の専属補佐のメッセージにそう返答し、カイザー仕様の黒塗りの高級車に乗り込む。

 運転手に行き先を伝え、シートベルトを締める。

 

 監査任務が終了してから4日。

 宣伝通り、3つの企業の営業に成功し、順調な利益を挙げていた。

 

 特に傭兵支援事業と特殊清掃に関してはキヴォトスにそのような事業が少ない為、依頼が初日から殺到。

 予想外の利益と人気を得た。

 

 俺はその3つの企業の中で、傭兵支援事業――カイザー・マーセナリーに視察へ行くこととなっている。

 カイザー・マーセナリーは傭兵や何でも屋、つまり顧客から依頼を受け、それを行なって利益を得る所謂『依頼型ビジネス』への支援を目的とした会社だ。

 具体的には資金援助や事務所の建築援助、依頼人の募集に宣伝補助など。

 驚くべきことに、キヴォトスではそう言った依頼型ビジネスの多くは反社会的なイメージが強く、進んで援助しようとする組織が少なかった。

 

 それで、何故この事業を選んだかと言えば理由は一つ。

 クーデターの際に万が一戦力が不足し、傭兵を雇わざるを得ない場合に備えてだ。

 

 元よりブラックマーケット――というより、裏社会全体に入り込んでいるカイザーだ。

 今更距離を取るより、恩を売って味方に引き入れる方が断然メリットが多い。

 

 そんな事を考えているうちに、カイザー・マーセナリーの事務所の前まで着いたようだ。

 

 俺は運転手に一言礼を告げ、車を降りた。

 

 

⬜︎

 

 

 事務所に入ると、既に多くの支援を必要とする者達が多くロビーに集まっていた。

 明らかに『裏社会の人間』といった風格の者や、原作で便利屋と共にアビドスを襲撃した傭兵モブらしき少女達など。

 窓口で職員と支援内容を話し合っているようだ。

 

「どうだ、営業は順調かね?」

 

「はい。ご覧の通り、既に今日だけで数十件の支援依頼を受け付けました」

 

 それは良いことだ、と告げ、再び窓口に目を向ける。

 時刻的にはもう直ぐ閉店時間。

 受付は一応オンラインでも可能にしてある為、職員の負担を減らす目的で営業時間を定めている。

 

 閉店時間が迫って来たからか、続々と客が帰宅していく。

 

 視察には来たが、営業面でも利益面でも問題が無いことは確認したし、と社宅に戻る準備を始めようと、部下に車の手配を頼もうとした刹那。

 

バァン!!

 

「ま、間に合った……!!」

 

 乱暴に扉が開け放たれ、4人の少女がロビーに駆け込んでくる。

 閉店間際になんともまぁ、困窮している者がいた者だ、と入り口に目を向けると――

 

「便利屋…68……!?」

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