憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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第2話:強制監査

 

 さて、俺のキヴォトスでの初任務である子会社への強制監査。

 その子会社はカイザーローンが提供する支援金を不正に利用し、他の企業へ流して不当な取引を行なっていた。

 そこで、俺率いるカイザーPMCの部隊がD.U.地区に在る子会社の本社に押し入り、不正利用の証拠などを目の前で提示して会社の資本ごと押収する、と言うのが監査の内容だ。

 

(予想はしていたが、カイザーは容赦ないな…)

 

 今回の監査に参加するのはPMC兵士、凡そ100名。

 建前上は『警備中隊』とされているが、その装備は完全に戦闘部隊仕様。

 全員が自動小銃と戦闘装備で武装し、一部には重装兵も含まれている。

 

 ほぼ監査の名を冠した『武力制圧』と言ってもいいだろう。

 

 確かに、ジェネラルが面倒臭がる理由も少し分かる気がしてきた。

 少しだけだが。

 

「将軍、もう直ぐ現場に到着します。ご準備を」

 

「ああ、分かった」

 

 俺たちは今、軍用トラックで移動中だ。

 車両はカイザーインダストリー製の特殊装甲トラックだが、街中で悪目立ちしないように外観は業務用トラック風に偽装されている。

 この偽装の手配は、どうやらプレジデントが直接行ったらしい。

 

 もしかして、権限があればカイザーインダストリーに兵器生産を手配して大規模な私兵を雇えるのではないか?

 となればクーデター計画の手助け程度にはなりそうだが……

 

(まあ、今考えることではないか)

 

 そんなことをぼんやり思っているうちに、目的地に到着した。

 

 複数のトラックが分散しながら接近し、建物の出入口を囲むように静かに停車する。

 トラックのドアが一斉に開く音に気づいたのか、会社の警備員たちが玄関から姿を見せるが、状況が飲み込めておらず戸惑っている様子だ。

 

 俺はその様子を確認し、無線で短く指示を出す。

 

『今だ、警備員をやれ』

 

『了解』

 

 返答と同時に、一人の兵士がトラックの影から姿を現す。

 迷いもなく小銃を構え、サプレッサー付きの一発を警備員の頭部へ――音もなく、その意識を刈り取った。

 

 倒れた警備員を確認してから、他の兵士たちが続いてトラックから降車。

 重装歩兵(盾持ち)も展開し、即座に出入口を制圧するフォーメーションを敷く。

 

「突入まで、3…2…1……突入ッ!!」

 

 士官の掛け声と同時に、鋼鉄のドアが蹴破られ、PMCの兵士たちが一斉に社内へとなだれ込んでいく。

 突然の侵入に、ロビーの職員たちは驚愕し、動けずに硬直していた。

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せろ、これはカイザー本社より容認された監査活動だ!!」

 

 あ、監査のこと言っちゃうんだ。

 まあいいけど。

 

 と、そうこうしている内にロビーの奥から怒号が響く。

 

「な、何事だ!? 人の会社に無断で押し入るなど――」

 

 現れたのは、金属製の肢体に仕立てのいいスーツを纏ったロボット。

 確か……この会社の社長だ。

 ジェネラルの記憶を辿れば、以前からカイザー本社に対して舐めきった態度を取っていた事が分かってきた。

 

 実際、目の前に立ったこの男を見ただけで、胸の奥から不快感がこみ上げてくる。

 俺自身は何もされていないが、“ジェネラル”としての自分が強い嫌悪感を示している。

 

 ――まあ、腹いせも兼ねて、粛々と監査を執行させてもらおう。

 

 俺の姿を見た社長は一瞬言葉に詰まり、表情を引きつらせた。

 

「おやおやこれは、社長殿ではないか。そんなに慌ててどうしたのかね?」

 

「あ、慌ててなどいない! ただ自分の会社の事を案じているだけだ!!」

 

 あくまでシラを切るつもりのようだ。

 余程証拠隠滅に自信があったようだが、大企業の諜報力を舐めてはいけない。

 

「そうかそうか。それで、これに見覚えは?」

 

「なッ!? なぜそれを…!?」

 

「子会社の資金の動きを、親会社が把握していない筈がないだろう。抵抗は無駄だ、大人しく拘束されてもらおう」

 

 俺は不正取引の流れを詳細に記した資料を突きつけた。

 

 既にコイツがロビーに出てきた時点で武装したPMC兵に包囲され、詰んだも同然の状態。

 何かしようものなら直ぐに顔面に鉛玉が叩き込まれるのだ。

 いやー、銃撃のハードルが低いキヴォトスは怖いねぇ。

 

 だが、社長は俺の全く予想外の行動に出る。

 

「ぐゥ……こ、こうなったら…!! 諸共吹き飛べ、ブラック企業め!!」

 

 余程拘束されるのを自分のプライドが許さなかったのか、はたまた他のやましい事があるのか。

 スーツの内ポケットから、古めかしい起爆装置のようなものを取り出し、高々と掲げた。

 そして、親指をスイッチへ――その瞬間。

 

 ダァン!!

 

「ぐあッ!?」

 

「拘束しろ!!」

 

「「「了解!」」」

 

 銃声が響き、社長の腕が跳ね上がった。

 取り落とした装置を踏みつけるように、PMC兵士たちが一斉に社長へ飛びかかり、拘束する。

 その場にいた他の職員、秘書と思しき人物も速やかに制圧された。

 

 俺は無線機を取り、本社へ向けて報告を入れる。

 

「こちら監査部隊。社長以下、関係者全員の拘束を完了。建物は全て制圧済みだ」

 

 どうやら後々の調査で、俺たちカイザー本社の監査を見越して会社の地下に大量の爆薬を埋めていたことが判明した。

 いやはや、流石キヴォトスと言ったところか。

 やり方がえげつない。

 

 まあ何はともあれ、俺のこの世界での初仕事は無事成功したのだった。

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