高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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お前誰のおかげでいつまでも夢を覚えてると思ってんだあん? 4

 照から輝磁の匣を借り受けたリン、真斗、リュシア、盤岳の一行。

 そんな彼らは、マネモブが支配しているらしき町へと向かっていた。

 

 「マネキン・モブと言えば、ホロウに名だたる武術家と聞く。その化生(けしょう)の如き技の数々は我輩達のような武術家の間では評判なのだ。叶うならば、一度拳を交え語らいたいものよ」

 「わ、わざわざマネモブと闘いたいなんて奇特だね盤岳先生……」

 「む? おぬしは闘ったことがあるのか?」

 「いやぁ、大分前にちょっと不意打ちで仮死状態にされて……」

 

 不意打ちで仮死状態にされたことは、リンにとって特にトラウマなわけではない。

 しかし、あの仮死状態にある時の、何とも言えない感覚はできれば経験したくないものだった。

 

 「なんと、マネモブが人を仮死状態にしてエーテルの侵蝕を止めるというのは誠であったか。活殺自在とは、灘・真・神影流……聞きしに勝る恐るべき武術よ」

 「リンちゃんってマネモブに酷い目に合わされ過ぎじゃないスか? 忌憚のない意見ってやつっス」

 「でもデッドエンドブッチャー級のエーテリアスに追いかけ回されるなんて滅多にない経験だよ!」

 

 普通、デッドエンドブッチャーレベルに追われることは死を意味するのだが。

 ともかく、マネモブは盤岳のような武人には名が知れ渡っているとのこと。普段のふざけた行動を知っているリンからすれば、そういえばマネモブって凄い技巧派だったなと思い出すきっかけになった。

 

 「頼りになるのは事実なんだけど、そうでない時との差が……ん?」

 

 町へはもう少しといった距離。

 リンは、あまり整備されていない道に何かを見つけた。

 

 「あそこ、誰かいるよ」

 「夢縋り……ってワケじゃなさそうだな」

 「うむ。赤外線放射は正常を示しておる」

 

 道に転がっている岩に、誰かが座っている。

 体格からして男性らしい。一行が近づくとその人物も気づいたようで、顔を上げた。

 

 「驚いたな、こんなところに人が来るとは。面子もずいぶんと剣呑じゃないか」

 「それはこっちのセリフだよ。おじさんこそ、こんなとこで何してるの?」

 

 キャップを被った、ラフな格好の男。

 一見するとどこにでもいるおじさんのようにしか見えず、ホロウレイダーらしくもない。しかし、生身のままでホロウに入っていることから只者ではないだろう。

 

 「ちと、人探しでな。最後に見たって目撃情報がラマニアンホロウのここだったっのさ」

 「人探し? で、この辺りって……」

 「うん。もしかしたら町にいるかも」

 「町だって? ちょいと詳しく教えてもらえないか?」

 

 リンは男に事情を話した。

 超危険エーテリアス、マネモブが支配するその町では、人々が夢縋りとしておかしくなっていること、自分達は知り合いを救助すべく、その町の異変を解決しに行こうとしているということを。

 そんな複雑怪奇な状況を聞いた男は、キャップを脱いで頭をボリボリと掻いた。

 

 「はーっ、何やら込み入ってんな」

 「もしかしたらおじさんの探してる人もいるかもしれないよ」

 「そうだな……良ければ、俺も連れてってくれないか。邪魔にはならないと約束する」

 「私はいいけど……皆は?」

 「我輩は賛成だ。おぬしのその指……相当な鍛錬の跡が見える。研鑽を積んだ武人の手だ。同じ武術家として、信用しないわけにはいかん」

 「ジブンも賛成っス。マネモブとやり合うなら取りあえず頭数は多いに越したことはないっスね」

 「あたしも! なんなら皆で多勢に無勢だいっけぇして四人霞を誘発させて同士討ちさせちゃおう!」

 

 こうして謎の男を加えた一行は、再び町の中へと侵入を果たした。

 

 

 

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 無駄にデカい講堂の上に見えるマネモブの旗。

 しかし、今日はもう一つ増えている。星見雅の証明写真みたいな写真をそのままプリントしたかのような旗が増えていたのだ。

 

 「クソみてェな旗立てやがって……」

 「どうして雅さんの旗をこんなところに立てたの? 何故……?」

 

 相変わらず旗以外は綺麗な街並みだが、ここはミアズマの巣窟。

 しかし、以前と違うのはFairyやアキラと通信ができることだった。

 

 モスやパウルをなんとか誤魔化してやり過ごす。その隙に、リンが講堂に近づくのだ。

 ついでに、町を見回ってきた男も合流した。その様子から、探し人は見つからなかったのだろうとリンは思った。

 

 「見つからなかったの?」

 「ああ。残念だが、ここにはいならしい」

 「でもまだ講堂は見てないんだ。もしかしたらそこにいるかも」

 

 問題は、どうやって内部に侵入するかだ。

 入口は屈強そうな見張りとマネモブによって守られている。

 

 「夢縋りって聞いてたが……実力は中々みたいだな。あの番兵共も」

 「マネモブが直々に鍛えてるからね」

 

 さりげなくリンが感覚の術を使い、マネモブの周りにいる見張りを見る。

 やはりミアズマの産物だ。マネモブは普通に本物だったが……逆に言うと、マネモブは本当にこの町に力を貸しているということになる。

 

 「雲嶽山の術法ってやつでパパッとどうにかならないか?」

 「師匠じゃあるまいしそんな万能じゃないよ。それにまだ見習いだしね」

 「けど嬢ちゃんは才能あるんだろう? ……手荒に行くしかないか?」

 「それこそもっと無理だよ!」

 

 マネモブの存在が意外に大きく、講堂に入れないという時。

 彼女達を呼ぶ声がした。その声の主は、リュシアだった。

 

 「中々に厳重だね講堂の警備。しかも見張りにあのエーテリアス・マネモブを使うって贅沢っぷり! 奥に見られたらいけないものがありますよって言ってるものじゃん!」

 「やっぱり時間を改めるか、別の入り口を探さないとダメかなぁ」

 「大丈夫(マイペンライ)! もっといい方法があるよ。エーテリアスを何体か向かわせてたらいいんだよ」

 「そりゃあ名案だが……どうやって?」

 

 男はリュシアの戦闘を見たことが無かった。

 

 「あ、おじさんは知らなかったね。まあ簡単に言うと……エーテリアスそっくりのエーテル固結物を作って動かすだけ。数秒しか持たないけど、それで十分でしょ」

 「なるほど。最近の若い子は凄いなぁ。俺なんて身体の頑丈さだけが取り柄だってのに」

 「若いからってできる芸当ではないと思うけど……」

 

 リンは苦笑した。

 

 「で、どんなエーテリアスがいいと思う?」

 「デッドエンドブッチャー」

 

 男が食い気味にそう言った。

 その顔は先ほどまでのニヒルな笑顔ではなく、全くの真顔だった。

 唐突の変化にリンもリュシアも面食らった。

 

 「デッドエンドブッチャーかぁ、それを描くのは至難の技だよ。おじさん、何か因縁あったりする?」

 「……ああ、ちょいと昔にね。探し人もその関係でな……っと、今のは忘れてくれ」

 「う、うん。でも何がいいだろう……混乱させる……死が――」

 「しーっ、彼らに聞こえるっ。どこで聞き立ててるかなんてわからないんだから」

 「ご、ごめん……それで、インパクトあった方がいいよね……インパクト?」

 「おっ、よさそうなのいた?」

 「うん。ちょっと、いやかなり大きいけど」

 「遠くでハリボテとして出せばよさそうだね」

 

 こうして彼女達が呼び出したエーテリアスとは……?

 

 

 

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 「暇ですねぇマネモブさん」

 『まあええやろ』

 「そうですね。見張りなんて暇に越したことないですしね」

 

 見張りとマネモブが談笑している。

 しかし、油断はない。誰も内部に入れないと警戒している。

 だが、そんな緊張すらも吹き飛ばす事態が発生した。

 

 町に存在する青葉高校。

 そのグラウンドらしき場所から、巨人が現れたのだ。

 

 「えっ」

 「なにっ」

 『な…なんだあっ』

 

 巨人は手袋をはめ直すと言い放った。

 

 『言い訳は聞きたくない。リュシア長官の命で“エー爆青年オーエン・スミス”が町ごとゴミ処理してやる』

 『ふざけんなよボケが』『焦んなよ今殺してやっから』

 

 エー爆青年オーエン・スミス再び現る。

 そしてオーエン・スミスは爆散した。

 

 

 

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 なんとか講堂への侵入を果たしたリンとイアスinアキラ、そしてオッサン。

 扉には鍵がかかっていたのだが、なんと男は素手でこれを破壊。

 内部に侵入したのだった。

 

 中は町とは違いミアズマだらけで、非常に不浄な有様となっている。

 そして一番目を引いたのが――

 

 「誰かが囚われてる!」

 『どうにかして降ろしてあげられないか』

 「――」

 

 ミアズマの触手によって囚われている、タコのシリオンと思わしき女性。

 呼吸はしているが意識は全くないようで、時折うめいている。

 

 「でも――」

 

 リンは彼女を見た瞬間、奇妙な体験をした。

 見知らぬ人との会話、見知らぬ場所での出来事。その全てに共通するのは、人々の顔が見えないということ。

 数分か? 数秒か? 少なくとも、リンにとっては一瞬のことだった。

 

 「――はっ!?」

 

 しかし、リンが我に返った時にはすでに女性の拘束は解け、地面へと落下していた。

 リンの距離からでは間に合わない。その窮地を救ったのは、他でもない男だった。

 

 「お、おじさんナイスキャッチ!」

 「ああ――」

 

 その気の抜けた返事が、誰に対するものだったのかは分からない。

 無意識に漏れたものなのかもしれないが……それはどうでも良いことだった。

 

 「う……ううん……」

 

 女性の目が開く。

 眠たげな瞳が徐々に見開かれていく。まるで、信じられないものを見たかのように。

 実際、信じられなかったのだろう。なぜなら、今自分を抱きかかえている男は――

 

 「会いたかったぜ、ドリィ」

 「ベンジー……兄さん……」

 

 ベンジャミン・マーフィー。

 イドリー・マーフィーの兄は、妹を探しにこの町までやってきたのだから。

 

 

 




ベンジーはベンジャミンの短縮形なんだァ
原作じゃこんな呼ばれ方してないから注意してもらおうかァ

それはそれとして何か男性キャラのセリフの方が筆が乗るのは何でか分からない……それが僕です
持ってる女性キャラでもセリフとか出番なくなったりするんだよね酷くない?
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