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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
恋住劇場の敵役として

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お嬢様のリハビリ 3/16 投稿

 夏休み。

 私は二週間ばかり、軽井沢の別荘でリハビリを行うことにした。


「お嬢様の急性ストレス障害は快復しつつありますが、だからと言って安心はできません。

 特に、政治経済はどうしても犠牲がでるもの。

 それに晒され続ける事で、心的外傷後ストレス障害に悪化するなんて事もありえます。

 何も考えず、ゆっくりする時間は絶対に必要なのです」


 秘書のアンジェラ指導の治癒プログラムの最終段階と夏休みが重なったのを良いことに、徹底的に外界を忘れてのんびりする時間を作ることにしたのだ。

 軽井沢の別荘には、佳子さん亜紀さん直美さんの三人に橘由香と一条絵梨花とアンジェラとエヴァの面子で、男手は渡部さんや曽根さんや茜沢さんという桂華院家の人間が中心の内々の避暑である。

 橘は留守中の差配をお願いしたので東京にお留守番である。

 護衛の方々?

 別に宿を取って警戒していますが。何か。


 リハビリという事で何かをするという訳でもなく、ゆっくりと自分の時間を消費してゆく。

 渡部さんのバイオリンを堪能したり、そのバイオリンに合わせて歌ったり。

 雲場池周辺を一条絵梨花や橘由香と一緒に散策したり、ショッピングモールで買い物を楽しんだり。

 すごく子供らしい時間を味わう事ができた。


「というより、お嬢様はまだ子供なんですよ。

 そういう時間をもっと大事にするべきです」


 まさかの一条絵梨花のツッコミに言葉を失う私。

 お菓子を作ろうという思いつきで、みんなでお菓子を作っていた時の話である。


「私はお嬢様を見ていますから、お嬢様の生き方はできないと思い知りました。

 そして、良い殿方を捕まえるために日々努力を続けているのです。

 お菓子作りや料理はそんな乙女の必殺スキルですわ」


「けど、あなた大量にお見合いが来ていなかった?」


 私のツッコミ返しにピクリと固まる一条絵梨花。

 乾いた笑いが痛々しい。


「お嬢様。

 分かりますか?

 ほんの数年前まで、友達とみんなでカラオケに行ったりプリクラではしゃいでいた私にやって来たお見合い写真の経歴の眩しさが。

 一流企業の社長、国会議員の子息、華族次期後継者に財務省の官僚……」


 うん。分かる。分かるというか。

 その波を起こしたの私だし。


「何が怖いって、教養スキルが付け焼き刃なのに、相手の皆様の流暢かつ端正な隙のなさが!

 世は恋愛結婚全盛と言いますが、この世界はこんなに魔境だなんて知りませんでしたよ……」


 乾いた笑いに視線を逸らす私。

 一方で、この世界にどっぷりと浸かっていた亜紀さんの頼もしさというか貫禄が目立つ。


「あら、良いことではないですか。

 おそらく、お嬢様を除いたこの中で一番良い家の殿方を捕まえられますわよ。

 私の所は、役員クラスですからね」


「時任さんの所にもお見合い来ているんですか!?」


 完全に話題から私のことを放置して一条絵梨花が食いつく。

 亜紀さんは生クリームをかき混ぜながらあっさりと言う。


「桂華銀行の北海道閥の子息や、四洋電機の元創業者一族とか、赤松商事の役員とかですね。

 官僚も経産省から」


 なお、東京に帰ってから橘に聞いたのだが、亜紀さんの所は養子を取る形にしており、桂華院家分流として時任家を立てることになるらしい。

 要するにお祖父様の血の後始末と同時に、私を守る家門となる訳だ。

 そのため、彼女へのお見合いは次男・三男になっているとか。

 話がそれた。


「なんだかなー。

 恋愛結婚って憧れるのは分かるけど、世知辛いわねー」


 出来上がったお菓子を食べながらのお茶会。

 私の適当な相槌に容赦なく突っ込んでくれたのは一条絵梨花だった。


「何言っているんですか?

 お嬢様、あの三人の誰が好きなんですか?」


「ぶっ!?」


 グレープジュースを吹き出す私をどうして責められようか?

 多分みんなが気を遣って言わなかった事を言うその普通ぶりこそ私が欲しかったものではあるが、もう少し時と場所を考えてほしかった。

 そんな私の声にならないツッコミに一条絵梨花は気付かない。


「あの三人相手なら、誰でも問題ないじゃないですか。

 で、お嬢様は誰がお好きなんですか?」


 うん。

 そういうガールズトークは大好きだけど、自分が集中砲火を受けるのは勘弁願いたいものである。

 しどろもどろで、ごまかそうとして一条絵梨花はあっさりと追撃の手を緩めてこんな事を言う。


「私は難しいことは分かりませんけど、分かる人に尋ねるぐらいの頭は持っています。

 それでいいのだと思いますよ。

 全てを自分で考えて決めて、壊れちゃったら本末転倒じゃないですか。

 あの三人ならば、お嬢様が甘えても文句は言いませんよ」


 一条絵梨花。

 彼女を雇って本当に良かった。

 心からそう思って、みんなで作ったショートケーキを口にした。


「いただきます……ん?」


 自分で作ったケーキなのだが、はじめてという事で、周りの人と比べて明らかに味が落ちていた。

 もっと練習しよう。 

 せめて、食べる相手が『美味しい』と言ってくれる程度には。

一条絵梨花のお見合い相手

 この時期の閨閥事情の最大の話題。

 彼女が桂華グループ内でくっつくか、外で相手を見つけるかというのは桂華グループの序列的にすごく大事。

 なお、他所から見ると、一条家は外様のように見えるが、中からだとお嬢様の直臣第一世代だから、桂華院家一族より影響力がある。


時任亜紀のお見合い相手

 こっちは明確に桂華院家の都合が最優先。

 同時に、背後事情を考慮して桂華院家分家扱いという事で、橘由香の前にお嬢様直臣譜代という立ち位置を確保している。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あー、最古参の部下で娘がお嬢様のお付きとなれば、見合い相手はそうなるよねぇ
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