ある日のワイドショーにて 11/30 移動
「結局今回の内閣改造ですが、幹事長が交代し首相も支持率は急落。
外務委員長も辞任し、外務省は事務次官を筆頭に大量処分が出る結果となり、誰もが貧乏くじを引く結果となりました。
ですが、そんな中で唯一この貧乏くじから逃れた人たちが居るんです」
(アナウンサーの説明にゲストが憤慨する)
「誰ですか?
そんなずるい人たちは?」
「華族出身の大使・公使です」
(別のゲストが適当な声で口を挟む)
「わたし、よくわからないんですよね。
なんか雲の上の人って感じで」
「欧州などでも貴族と呼ばれている階級ですね。
男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵と分類があり、江戸時代の大名の末裔や明治維新の元勲、公家や財閥当主などが叙爵されてその地位を得ています。
では、今日はそんな華族の知られざる日常をご紹介しましょう」
(モニターに赤坂マラソンを激走する少女が映る)
「あ。
ココ最近注目されている少女ですね」
「帝西百貨店のキャンペーンガールでしたっけ?
この間赤坂マラソンで激走していましたよね」
「はい。
彼女の名前は桂華院瑠奈。
財閥桂華グループを率いる、桂華院公爵家のご令嬢です」
(モニターに桂華院公爵家の家紋が映り、桂華グループの企業群がずらりと並ぶ)
「こんなにあるんですか!?」
「ええ。
桂華グループはバブル崩壊後に急成長した財閥で、今やその総資産は20兆に迫ろうとしています」
「20兆!
国家予算並じゃないですか!?」
「ええ。
時の政権と密接に関わり政商と陰口を叩かれていますが、不良債権処理等でずっとこの国の為に働いてきた企業でもあります」
(モニターに首相官邸で渕上元総理と談笑する桂華院瑠奈の姿が)
「特に泉川副総理とは密接な関係を築いており、泉川派の資金源と言われています。
泉川副総理の疑惑の時には、彼女が疑惑の矢面に立たされたんですよ」
(モニターには参議院選挙で泉川参議院議員事務所にてバンザイをしている桂華院瑠奈の姿が)
「え!?
なんでこんな少女が政治疑惑の舞台に立ったんですか?」
「それが今回お話する、華族の特権である不逮捕特権に繋がるんですよ」
(モニターに不逮捕特権の文字が出る)
「この不逮捕特権、華族の家の事は華族当主が決めるという特権なんです。
今回の外務省の不祥事で、疑惑が挙がった大使・公使を逮捕できなかったのはそこに理由があるんですよ」
「何かずるいですね。
彼らを処罰できないんでしょうか?」
「もちろん、そういう事を処分する機関みたいなものはあります。
それが枢密院です。
元々華族は貴族院、つまり今の参議院議員でした。
ですが、戦争が終わって民主化が進んでゆく過程で、議会を開放し自らは別の機関で存続を図ろうとしたのです。
似たような例として英国の上院、昔の仏国の高等法院なんかが挙げられます。
この枢密院は天皇陛下の諮問機関として憲法の番人なんて呼ばれています。
また、国会閉会中の議会の代理みたいなこともできるんですよ」
「なるほど。
けど、それと桂華院瑠奈公爵令嬢が疑惑に出てくる事が繋がらないのですが?」
(モニターにまた桂華院瑠奈の姿が映る。
今度はオペラで歌う姿で)
「戦後の枢密院でこの手の犯罪に対して処罰の審議するのは家の処分であり、その本人を処分するという例は無いんですよ。
つまり、家の中は家で片付けろという所は守っています。
で、彼女が悪さをしたと仮定すると、それを処分するのは警察でも検察でも裁判所でもなく、ただ一人、父親である桂華院清麻呂公爵だけなんですよ」
(モニターに桂華院公爵家当主の文字と共に桂華院清麻呂公爵の姿が映る)
「つまり、子供の処分を親がするという事ですか?
手心を加えられても、分からないですよね」
「ええ。
その為でしょう。
桂華グループは、全財産を桂華院瑠奈公爵令嬢に集めているんですよ」
「ええっ!?」
(モニターに桂華グループの資本関係図が映る)
「この図のように、桂華グループの企業を統括するのは、米国西海岸に本拠があるムーンライトファンドなんですが、その保有者が彼女なんです」
「これはおかしいよ!
まだ小学生が20兆近い企業グループの持ち主だなんて誰が信じるんですか!?」
「おまけに、仮に彼女が悪さをしてもそれを罰するのは父親だけなんて。
公平で公正な処分なんて期待できないじゃないですか!?」
「そうなんですよ。
実際、外務省の機密費事件では、この不逮捕特権を使われて、彼ら華族は逮捕を逃れています」
「なんとかならないんですかねぇ。
こんな不正義がまかり通るなんて」
(野党政治家の子息の正論を無視して通り過ぎる桂華院瑠奈公爵令嬢の姿がモニターに映る)
「恋住政権は抵抗勢力との対決を決意し、ここにも改革を求めてゆくでしょう。
ですが、現在進めている枢密院改革を行う枢密院議長が泉川副総理であり、体調が回復した渕上元総理も伯爵位をもらって、枢密院で働いています。
今や枢密院は恋住政権の言う抵抗勢力の牙城なんですよ……」
英国上院
実際の政権運営は下院が行い、上院は憲法裁判所、つまり最高裁の働きをしていたが、EU統合の際にその機能は英国最高裁判所に移管された。
現在も上院改革は進行中。
仏国高等法院
ブルボン朝の根幹を成し、法務貴族が活躍した場所。
この物語は、英国上院と仏国高等法院の色彩をマゼマゼしながら枢密院を作っているので、実に政治的な盲腸に。
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