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ウマ娘訴訟の和解金7億円、でも本当は32億円削減してた話 ー 知財部員の「年収3600万円~80億円」の妥当性を検証してみた

え、ウマ娘の訴訟って7億円で終わったの?(業界人の感覚)

2025年11月14日、サイバーエージェントが発表した決算短信に、ある数字が載っていました。

特別損失: 7億2700万円

『ウマ娘 プリティーダービー』をめぐる、コナミとの特許権侵害訴訟の和解金です。

「うわ、7億円も払ったのか…」

そう思いませんでした?

でも、ちょっと待ってください。

実は、この7億円という数字、めちゃくちゃ「お買い得」なんです。

コナミが最初に請求してたのは「40億円」だった

報道によると、コナミが当初請求していたのは:

  • 損害賠償: 約40億円

  • 『ウマ娘』の配信差し止め

つまり、「40億円払え、あとゲーム止めろ」という要求でした。

それが、最終的に和解金7億2700万円で決着。

差額は、約32億円

この32億円は、どこから生まれたのか?

答え: 知財部門が2年8ヶ月、粘り強く戦った結果

サイゲームス(サイバーエージェントの子会社)の知財部門は、コナミが主張する18件の特許すべてに対して、無効審判を請求しました。

「この特許、無効じゃないですか?」

そう主張して、2年8ヶ月にわたり法的戦略を練り、証拠を集め、交渉を重ねた。

その結果が、32億円の削減です。

もし知財部門がいなくて、初期段階で40億円を払っていたら?

**その差額32億円こそが、知財部員が生み出した「見えない価値」**なんです。

知財部員の「見えない価値」を金額で計算してみた

試算の前提

  • 削減できた金額: 約32億円

  • 対応期間: 約2年8ヶ月

  • 年間価値: 約12億円/年

  • 対応した知財部員: 仮に5名

1人あたりの価値

12億円 ÷ 5名 = 年間2.4億円/人

つまり、この訴訟対応に関わった知財部員は、1人あたり年間2.4億円の価値を生み出したことになります。

じゃあ、知財部員の年収っていくら?

一般的な企業の知財部員の年収は、700万円〜1,000万円程度。

仮に平均800万円だとすると…

投資対効果(ROI): 約30倍

800万円の人件費で、2.4億円の価値を生み出している。

これ、どう考えてもコスパ良すぎじゃないですか?

ウマ娘のサービス停止を防いだことまで考慮すると、、

ここまで「32億円削減した」という話をしてきましたが、実はもっと大きな価値があります。

コナミが請求していたのは、損害賠償40億円だけじゃなかった。

『ウマ娘』のサービス差し止め(特許権者はこの請求もできます)も要求していたんです。

もしサービスが止まっていたら…

ウマ娘の年間売上を推定してみましょう。

サイバーエージェントの決算資料によると、FY2025のゲーム事業全体の売上は2,167億円

ウマ娘は同社の主力タイトルの1つで、業界推計では年間売上300億円〜500億円規模と見られています(保守的に見て年間400億円と仮定)。

もしサービス差し止めが認められて、5年間サービスが停止していたら?

400億円 × 5年 = 2,000億円

つまり、知財部門が守ったのは:

  • 和解金の削減: 32億円

  • サービス差し止め回避による売上確保: 2,000億円

  • 合計: 約2,032億円

知財部員1人あたりの価値を再計算

この2,032億円を、5年間で対応した知財部員5名で割ると:

2,032億円 ÷ 5年 ÷ 5名 = 年間約81億円/人

もはや桁が違います。

これが、知財部門の本当の価値なんです。
こういうロジックが成り立つことも経営者は理解して欲しいです。

他の職種と比べてみた: 知財部員は「安く買い叩かれている」


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営業やエンジニアは、生み出した価値の20%〜50%を報酬として受け取っています。

一方、知財部員は7%〜10%

明らかに、他の職種より低いんです。

じゃあ、知財部員は「本当は」いくらもらうべきなのか?

一般的な企業の報酬設計では、「生み出した価値の10〜20%を報酬として支払う」という考え方があります。

今回のケースで計算すると

  • 1人あたりの年間価値創出: 約2.4億円

  • 価値の15%を報酬とした場合: 約3,600万円

つまり、この訴訟対応に関わった知財部員は、年収3,600万円程度が妥当ということになります。

もし実際の年収が800万円だとすれば、本来の価値の約22%しか報酬を得ていない計算です。

でも、訴訟対応だけが知財部員の仕事じゃない

知財部員の本当の価値は、「訴訟を起こされない」ための予防活動にあります。

予防活動の例

  • FTO調査(Freedom to Operate調査): 他社特許の地雷を事前に回避

  • クリアランス意見書の作成: 開発部門に安全なルートを示す

  • ライセンス交渉の早期実施: 訴訟リスクを未然に排除

  • 特許ポートフォリオの戦略的構築: クロスライセンスで紛争を予防

こうした活動は、数字として現れません

でも、その価値は計り知れない。

仮に年間10件の訴訟リスク(特許を持つ競合が業界内に10社くらいはいるとして)を予防し、1件あたり平均5億円の損失を回避していたとすれば、知財部門は年間50億円の価値を生んでいることになります。

予防業務まで含めた「適正年収」を算出してみた

仮に、訴訟対応だけでなく予防業務も考慮すると:

  • 年間予防した損失(1人あたり): 10億円

  • 価値の10%を報酬とした場合: 1億円

年収1億円でも良いのですが、優しさで年間10億円規模の損失を防ぐ専門職として年収2,000万円〜5,000万円は十分に正当化できる水準です。

なぜ知財部員の評価は低いのか?3つの理由

1. 成果が「ネガティブの回避」だから

営業部門が「売上10億円達成!」と成果を示せるのに対し、知財部門の成果は「訴訟を起こされなかった」「損失を防いだ」というネガティブの回避

これって、評価されにくいんです。

2. 短期的な利益に直結しない

特許出願や調査は、5年後、10年後の利益を守る行為。

短期業績重視の企業では、その価値が見落とされがち。

3. 専門性が理解されにくい

特許法、審判制度、侵害訴訟の実務…

これらは経営層や他部門には「ブラックボックス」であり、価値が正当に認識されません。

知財部員の仕事って、実は4つの法律を駆使してる

今回のウマ娘訴訟は「特許権侵害」がテーマでしたが、知財部員が扱うのは特許だけじゃありません。

知財の4つの法律

  1. 特許: 技術的アイデア・システムを守る

  2. 意匠: デザイン・見た目を守る

  3. 商標: 名前・ブランドを守る

  4. 著作権: 表現・創作物を守る

たとえば、『ウマ娘』のような1つのゲームを守るには:

ウマ娘の知財戦略
├─ 特許: ゲームシステム、育成システム、レースシステム
├─ 商標: 「ウマ娘」「トレーナー」などの名称・ロゴ
├─ 著作権: キャラクターデザイン、BGM、ストーリー
└─ 意匠: UIデザイン、画面レイアウト

1つの法律だけでは守りきれないから、4つの法律を組み合わせて多層防御するんです。

知財部員は、この4つすべてを理解して、戦略的に使い分ける専門職。

めちゃくちゃ高度な仕事なんです。

各法律で「守れないもの」を、別の法律で補う

それぞれの法律には「守れるもの」と「守れないもの」があります。

特許で守れないもの

  • デザイン・見た目 → 意匠でカバー

  • ブランド・名称 → 商標でカバー

  • 芸術的表現 → 著作権でカバー

商標で守れないもの

  • 技術的内容 → 特許でカバー

  • デザインの独占 → 意匠でカバー

  • 作品の表現 → 著作権でカバー

著作権で守れないもの

  • アイデア・機能 → 特許でカバー

  • デザインの独占 → 意匠でカバー

  • 名前・タイトル → 商標でカバー

意匠で守れないもの

  • 技術的機能 → 特許でカバー

  • 名前・ブランド → 商標でカバー

  • 動きのある表現 → 著作権でカバー

知財部員は、この補完関係を理解して、最適な組み合わせを設計します。

1つの法律だけ知っていても、ダメなんです。

経営層への提言: 知財部員にちゃんと払おう

提言1: KPIを変えよう

「特許出願件数」だけじゃなく、「回避した訴訟リスク」「削減できた賠償額」を指標に含めるべき。

提言2: 給与を「生み出した価値」に見合ったものにしよう

年間10億円以上の価値を生む知財部員が、年収800万円では割に合わない。

適正年収2,000万円〜5,000万円の範囲で、優秀な人材を確保・維持すべきです。

提言3: インセンティブ制度を導入しよう

訴訟和解額の削減幅の10%を部門ボーナスとして支給。

今回のケースなら、32億円削減 → 3.2億円を部門で分配

提言4: 知財投資を「攻めの投資」と位置づけよう

知財は単なるコストではなく、長期的な利益を守る保険であり、競争優位を築く武器です。

まとめ: 知財部員は「縁の下の力持ち」

サイバーエージェントが7億2700万円で和解できたのは、知財部員の尽力の賜物です。

そして、訴訟に至らない企業の裏には、さらに多くの「見えないヒーロー」がいます。

知財部員の価値は、決算書には現れない。

でも、その貢献がなければ、企業は数十億円、数百億円の損失を被るかもしれない。

今回の試算で明らかになったのは、知財部員は本来、年収2,000万円〜5,000万円を得るべき高度専門職だということ。

現状の年収800万円〜1,000万円では、その価値に対して著しく過小評価されています。

今こそ、経営層は知財部門の真の価値を認識し、適正な評価と投資を行うべきです。

そうすれば、知財部門はさらに大きな価値を企業にもたらすでしょう。

知財部員は、企業の「静かな守護者」。

その貢献を正当に評価し、適正な報酬を支払う企業こそが、長期的に成長し続けるのです。

参考文献・情報源

  1. 株式会社サイバーエージェント「2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
    2025年11月14日発表
    https://www.cyberagent.co.jp/ir/

  2. ファミ通.com「『ウマ娘』コナミとの特許権侵害訴訟の和解成立の件で、特別損失7億2700万を計上。内訳は未公表。2025年9月期のサイバーエージェント決算短信で明らかに」
    2025年11月14日 21:55配信
    Yahoo!ニュース掲載記事

  3. 株式会社サイバーエージェント「当社連結子会社における特許権侵害訴訟の和解成立に関するお知らせ」
    2025年11月7日発表
    https://www.cyberagent.co.jp/ir/

  4. 株式会社サイバーエージェント「FY2025 Presentation Material」
    2025年11月14日発表
    決算説明資料(全54ページ)


一言まとめ: 知財部員は年収800万円(不当な評価)だけど、生み出す価値は年間2.4億円。本来もらうべきは3,600万円。

執筆者:IP PRODUCER 得地賢吾


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