「令和のコメ騒動」以前に逆戻り…「農協の守護神」鈴木憲和・農水大臣が進める「米価高止まり政策」

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コメの値段が下がらない。備蓄米の放出で下がると言ったのは前任者だった。農政を一転させる農水省「はえぬき」大臣の打つ手も危うい。

前編記事『コメ高止まりの元凶…鈴木憲和・新農水大臣は「農協の守護神」だった』より続く。

持論を曲げない、言うことは聞かない

鈴木憲和農相は、農作物の輸入を拡大しかねないTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への反対を掲げて当選を果たす。当選後の'16年には自民党政権が進めるTPP承認案の採決で退席し、注目を集めた。なお、農協を中心に農家はTPPに断固反対していた。

「憲和は自民党の方針に反して、除名ギリギリのところまで頑張った。そうした姿勢は地元では大きく評価された。最初のほうは選挙も厳しかったが、今のように当選できるようになったのは(当選5回)、彼が主張を変えずに頑なに行動しているからだ。

大臣になってからも地元に来てくれたが、SPがついていても髪はボサボサのままで何も変わらない。憲和は常に農家目線。今はおコメが高すぎるから、対策としておこめ券を配ったらいいということは1年前から言っていた。大臣になったからマスコミは叩くだろうが、あんなに個性の強い政治家はいない。なにより頑固で持論を曲げない。人の言うことは聞かない。そこがいいところだ。ぜひ注目してやってくれ」(遠藤榮吉氏)

鈴木農相は旧茂木派に所属し、同派が総裁選の決選投票で高市支持に回ったことから、その論功行賞で今回、43歳ながら大臣に抜擢されたと見られる。農家目線から増産に反対し、米価を維持しようとするその姿は、米価高騰で苦しむ消費者のことは二の次、と言わんばかりだ。当選同期の自民党議員がこう話す。

「備蓄米を放出して米価を下げる小泉前農相の政策を彼は批判していましたね。今回、減産に転じたのは彼の持論でもありますし、それが米価の維持と見られても構わない、ということでしょう。

鈴木農相は東北選出の国会議員だから、よくわかっているんですよ。農家にとって適正な価格でなければ、農業をやっていく人がいなくなってしまうことを。無理やり米価を下げても、今はいいかもしれませんが、5年先、10年先の農業はどうするのかという問題意識を持っていました」

かつての補助金農政に逆戻り

しかし、生産調整による減産を行い、主食用米から転作した農家に補助金を出す仕組みは、「令和のコメ騒動」以前の農政に逆戻りすることを意味するのではないか。前出の山下氏がこう指摘する。

「日本の農家のうち、耕作面積が1ヘクタール未満の零細兼業農家は全体の5割を占めます。彼らは普段、サラリーマン収入を得ていて生活に困っていないし、年間30日しかコメ農業をしていません。しかし、政府は米価を維持することで、こうした零細兼業農家を保護してきた。

その理由は、彼らが兼業収入を農協のJAバンクに預けてくれるからです。それらで集めた100兆円を超える貯金を使ってJAバンクは儲け、毎年3000億円も農協にバックしています。農協の金融事業のためにコメを減産する構造の中で、コメ不足が起きた」

さらに、山下氏が本来あるべき農政についてこう語る。

「本当は、高米価で零細兼業農家を維持する政策をやめ、減反を廃止して、農業だけで生活している規模の大きい主業農家のみに直接交付金を出すべきです。米価が下がれば、零細兼業農家は農地を主業農家に貸すので、農地の大規模化が進みます。コストが下がるので、米価が下がって消費者にとっても負担が減る。現在年間3500億円ほどの減反補助金はなくなり、主業農家への直接交付金は1500億円程度で済みます」

このままでは、庶民の食卓から国産米が消える日が来るかもしれない。

「週刊現代」2025年11月24日号より

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