一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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途中から現れたとは思えないほど浸透しすぎているトリガーさん凄い。
あんぱんエピソードはとてもお気に入りです。


21.ストーカーって普通に怖いよね

 ビデオ屋の向かいにあるニューススタンドで、俺は最近恒例になってきたバイト前の運試しをしていた。

 

「さーて、今日のスクラッチ結果は……肉か」

 

 毎日無料コーヒーに次ぐ、どうやって収益出してんのシリーズその2である毎日スクラッチ。これも引いた側がただディニーか謎のフィルムみたいなやつを渡されるだけで、何も支払ったことが無い。新聞の宣伝が目的でやっているのかもしれないけど、赤字のほうが多いと思うんだよね。

 

 スクラッチでもらえるディニーもボンプ修理と同じく非課税。学生にとっては本当にいいのかってくらい貰えているからありがたすぎる。ニコもやればいいのに。

 

「わふ!」

「でたこのカラフルなフィルムっぽい奴……これ結局何に使うんですか?」

「くぅーん?」

「あ、なんでもないです」

 

 店番をしている犬のシリオン、ウーフさんは犬の鳴き声しか出せない。会話やセールストークができない代わりに癒しのひと時を与えてくれる。ずいぶん思い切った采配だと思うよ運営さん、俺は好き。

 

 

 

 ウーフをひと撫でさせてもらったところで、後ろから女性に話しかけられた。

 

「どうもサクさん、こんにちは」

「あ、どうも」

 

 振り向くとそこには、黒いバイザーで目を隠した長い金髪の女性が立っていた。

 

「バイトに向かう最中ですよね。今日は私も店番なのですが、アキラとリンも今日は長く出かける予定が無いので安心ですね」

「そうなんですか。人手が多いのは助かりますね……」

「そうですね。では、今日もよろしくお願いします」

「お願いしますー」

 

 軽く会釈をした彼女は背を向けてビデオ屋に向かって歩き出す。さて、俺もそろそろバイトの時間だから向かわないとね。今日は気さくに声をかけてくれたあの人と一緒に店番……。

 

 

 

 

 

 

 え、今の誰?????

 

 

 

 

 

 

 あまりにも自然に会話が始まりすぎて疑問に感じなかった。知り合いみたいな熱量で話してたけど、全然知らん人だったし俺の名前知ってたしでとても怖い。……まあ店長から聞いてたんでしょきっと。そうだと言ってくれ。

 

 

 

 恐る恐る店の扉を開くと、店内でさっきの女性とアキラが談笑していた。俺が入ってきたことに気づくと、女性が軽く頭を下げてきた。

 

「あ、サクさん。先程は初対面なのに慣れ慣れしくしてしまい、申し訳ありません。私の事はトリガーとお呼びください」

「は、はぁ……」

「サク、彼女は信頼できる人だから安心してくれ」

 

 それ後に裏切る人とかにつける言葉だから、あんまり言わないほうが良いと思うよアキラさん。どうせパエトーン絡みだろうから俺に言えないのはわかるんだけど、流石にトリガーさんの情報が足りなさすぎる。目を隠しているバイザーと背中の狙撃銃が存在感強くて足がすくんじゃう。

 

 

 俺の中で彼女に対する不信感が募っていくばかりなんだけどどうしよう。このままじゃ一緒に働くなんてとても――。

 

 

 

 

 

「ちなみにトリガーは最近、柳さんとあんぱん同盟を結んでいるよ」

 

 急に大丈夫そうな気がしてきた。そうだね、それを先に聞きたかったね。

 

 

 

 

 

 店番については、トリガーさんはほんとに優秀だった。目が見えないと言っていたけど、それで困るような出来事はほぼ無かったと言える。ビデオの種類がわからないと言っていたけど、それは俺が教えたら良いし。歩いていても全然ぶつかったりしないのは、一体どうなってるんだろう。詮索するつもりはないけど、不思議だな。

 

「それじゃあ、ちょっと出かけてくるよ」

「ええ、留守はお任せください」

 

 アキラが出かけるのを丁寧に見送るトリガーさん、なんか新妻みたいな雰囲気出てる。時々兄妹に対して露骨なアピールする人増えた気がする。

 

「さて、サクさん。10分後にリンが帰ってきますので、お茶を入れてきますね」

「え、なんか連絡とか来たんですか?」

「いえ、今頃は雑貨屋141に寄っている時間ですから。そろそろ飽きて帰ってくる頃かと」

 

 今の話を聞いてちょっと嫌な予感がした。連絡もないのに今の居場所言い当てるのはグレーじゃないか? まだ気のせいかもしれないからもうちょっと探ってみよう。

 

「……ちなみに、アキラはどこに行ったかはわかります?」

「ええ、ルミナスクエアにてカリンさんと会うそうです」

「そんなこと言ってましたっけ?」

「いえ、たまたまアキラのスマホ画面が見えてしまったので」

 

 

 

 うーん、アウト。

 

 

 

 たまたまスマホの画面が見えてしまったってのは、ほぼ確実に覗こうと思って覗いた人の言い分だね。予定が把握できるまでガッツリ読んじゃってるもの。これきっとストー何とかですよね。治安局呼んだ方がいいのかな?

 

 しかしさっきアキラは、トリガーさんは信頼できると言っていた。もしかしてそういうプレイなのかな? 双方が納得しているのなら、俺が口を挟む理由は無いのかもしれない。そっと通報しようとした手を止めた。

 

 

「あの兄妹の事、よく見てるんですね」

「勿論です。私は()()()()()のお二人には大変お世話になっていますから」

「……ん?」

 

 今普通にパエトーンって言ったような気がする。聞き間違いか、或いは俺も関係者だと思っているのだろうか。動揺した俺を見てか、トリガーさんはとんでもないことを告げる。

 

 

 

 

「ああ、心配はいりませんよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「えっ…………えっ?」

 

 

 

 

 たった今特大の心配事が誕生したんですけど?????

 

 

 

 

「な、なんでそれを……」

「サクさんがバイトを始めてから、ずっと観察させてもらいましたので。パエトーンに脅威をもたらす人間であれば即排除していましたが、今はサクさんにその様子は見られなかったので観察対象から外しています」

「え、えぇ……」

「勿論、貴方にも事情がおありかと思います。お二人には内緒にしておきますので、どうぞご安心ください」

 

 今の話で一体誰が安心できるってんですか。じゃあ俺はバイトに来たその時からずっとその銃向けられ続けてたってことですか。俺が知らない中でこの人に生殺与奪を握られ続けてたの? やっぱ通報したほうが良い?

 

 ……なるほど、トリガーさんはかなり強火のストーカーだったんだね! なるほどじゃないんだよ。パエトーンのついでに行動を把握されてる俺完全にとばっちりじゃん、見ないでよちょっと。

 

 

 

 

 

「ただいまー……ってあれ、トリガーさん来てたんだー!」

「リン、お久しぶりです。お茶を入れておきましたよ」

「わあ、ありがとー! いつも気が利くなー……」

 

 一見普通に仲良しな会話なんだけど、トリガーさんの事を知ってしまった以上、全然まともに受け取れない。弱みを握られるってこういう気持ちなんだね、嫌すぎて吐きそう。

 

「ってサク、なんか汗びっしょりだけどどうしたの?」

「い、いや……。何でもない……」

「絶対なんかあったじゃん……、私に隠し事なんて感心しないなー」

 

 

 誰が言うてんねん。

 

 

 と、言いたいのを堪えた自分偉いと思う。やっぱり人の関係に深入りするのは良くない、ビジネスライクで生きていこう。でないとリンの横で穏やかに笑っている彼女に狙撃で一撃必殺されちゃうからね。




まあ凄腕のストーカーなんだからサクの事も当然把握してるよねー、という話。
もう一方のストーカーについては、果たしてどうなる事やら……。

追記:ウーフ君、シリオンじゃなくて賢い犬でした。
自分への戒めのためこのまま残しておきます。
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