一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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柳さん復刻マダカナー……。
あでもポリクローム溜まってないからまだ来ないで……。
心が二つあるー……。


18.閉店間際の柳さん

 社畜、という単語は一体いつ誰が生み出してしまったのだろうか。会社と社員はあくまで雇用関係であり、生活を犠牲にして全てを捧げるのは良いとは言い難い。そもそも畜という字を人に向けて使っている時点で良くないでしょ。

 

 一人暮らしの俺も、ビデオ屋のバイトがブラックじゃないから生活を賄いつつ健全な暮らしができている。これ以上を求めるのなら、バイトのかけ持ちとかになるのだろう。でもそうすると自分の時間が無くなってしまうから、それはしたくない。

 

 世の中にはバイトを7つかけ持ちしている人がいるなんて都市伝説があるけど、そんなん無理。もし実在するのなら会ってみたいね。絶対顔色悪いと思う。

 

 

 

 さて、今日の営業も終わりかと思ったところで店の扉が控えめに開いた。

 

「あ、月城さんいらっしゃいませ」

「サクさん、すみません。毎回閉店ギリギリに来てしまって……」

「いえいえ」

 

 申し訳なさそうに入ってきたのは第六課の副課長、月城柳さんだ。仕事終わりに来るためビデオ屋が閉まるか否かぐらいに毎度訪れている。あ、ちなみに今日も店長は裏稼業で忙しいので居ません。

 

「今日も残業だったんですか?」

「はい、事後処理が多くて……。ちなみにまだ終わっていないのでこの後は職場に戻ります」

「うわあ……」

 

 もうブラック超えて漆黒だよそれは。タイムカードは切ってからが本番とか言ってる人間はホロウ送りで良いと思う。

 

「……そういう事情でしたら、返却は明日でもいいですよ?」

「いえ。心配はありがたいですが、身内贔屓は良くありませんよ。ビデオのレンタル購入も、立派な契約です」

 

 新エリー都の全住民に今の言葉を聞かせたい。特に邪兎屋のあの人とか。契約は順守、これ大事。

 

「こないだの受取ボックスがうまくいけば良かったんですけどね。あの時は月城さんが居なかったらどうなってた事やら」

「いえ、私はたまたま居合わせていただけですから。発想自体は悪くなかったと思いますけど……」

 

 

 受取ボックスとは、営業時間外にもビデオの返却が受け付けられるよう、俺の考えで店の外に返却用の箱を実験的に置いたものだ。良い案じゃないかなーと思ったのだが、なんと実施から数時間後に廃止となってしまった。

 

 

 

 その理由はひとえに、新エリー都の治安が終わっていることだ。

 

 

 

 治安局やら第六課の人たちが常に行き来する『Random Play』の環境に慣れすぎてすっかり忘れていた。そりゃあ商品が監視も無く店の外に置いてあったら盗まれますわな。初日から箱ごと盗もうとする輩が両手で数えきれないほど現れちゃった。

 

 箱を盗もうとした連中は、店にたまたま来ていた月城さんに全員シバかれたので事なきを得た。あの人めっちゃ強いのね。強いのはわかるんだけど、店の外に『WIPEOUT』ってクソデカ文字が出てきた時は何かと思った。エージェントって全員あれ出せるの?

 

 とにかくこれではまともに仕組みが機能しないと判断して、その日のうちに撤去となってしまったのだ。良いアイディアだと思ったのにほんと悲しい。

 

 

 

 ついでに言うと、俺の中で月城さんは文句無しで常識人枠に認定している。第六課の個性的な人たちを見た時点で苦労人の予感はしていた。今日も身を粉にして働いているのだから、何らかの形で報われてほしいと願っている。

 

 ただ月城さんって、いつ会ってもメイクが崩れたりとか、くたびれている状態になってるのを見たことが無いんだよな。キッチリしすぎていて疲れている様子が全然見えない。全然愚痴とかも聞かないけど、まさか仕事漬けを楽しんでたりするのだろうか。怖い。

 

「これで返却は完了ですね、ありがとうございました」

「はい……あの、ストレスとか大丈夫ですか?」

「……そうですね。ここでお借りしているビデオには助けられていますが、やはり全てとはいきません」

「ですよねー……。それだと溜まる一方なんじゃ?」

「お恥ずかしながら……エーテリアス討伐の際に、ぶつけて発散してますので……」

「あ、そういう……」

 

 つまりエーテリアスとの戦闘で発散していると。これはきっと月城さんが第六課適性高いとかそういう話だろう。メガネの光り方が急に怖くなったのはきっと気のせいだ、うん。

 

「そういえば最近、パソコンを投げて戦うボンプが現れたという噂がありましたね」

「そ、そんなボンプがいるんですか? ……ちょっとだけ、興味がありますね」

 

 サビザンボンプ、だったっけ。サビザンとやらがどういう意味の言葉なのかは知らないけど、きっとろくな言葉じゃないと思う。新品なのにめっちゃくたびれた目をしてたらしいし。小遣いとか下心とかじゃなくて、見かけたら修理してあげたくなっちゃいそう。

 

「……廃棄予定の物を使えば、ストレス発散と廃棄処分が同時に出来るのでは……?」

「え、月城さん。もしかして自分もやってみたいとか思ってません?」

「い、いえっ! 決してそのような事は……ただ、ちょっぴり参考にはしてみようかな……なんて思ってはいますけど……」

 

 俺の発言で月城さんが常識から外れちゃうのは困る。この人には第六課の中では揺るがぬ常識人であってほしい。只でさえ常識人少ないんだもの。

 

 けれど、今の月城さん心なしか目が輝きだしているように見える。まあ、被害者はエーテリアスだけだし別に止めなくてもいいか。個人的にパソコンぶん投げる月城さんはちょっと見てみたいし。相当ストレス溜まってるだろうから思いっきりやってくれそう。

 

 

 

 

 後日の第六課エーテリアス討伐にて、月城さんは廃棄予定のパソコンを本当にぶん投げてみたらしい。エーテリアスも倒せたし、本人はスッキリできて満足な結果だった。

 

 けれど帰還時に、『すまない、そこまで抱え込ませていたとは思わなかった……』と雅さん含む全員に本気で心配されてしまったので没になったそうな。その話を俺に聞かせてくれた時の月城さんは、そこそこシュンとしていた。




柳さんの特殊技にパソコン投げ追加されたら有料でも買っちゃう自信があります。
サクはホロウに入れないのでパソコン投げは見られません、残念。
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