一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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本作が多くの方に見ていただけているようで、本当にありがとうございます。
ゼンゼロの力であることはわかってはいるのですが、うれしいですね。


17.でたらめな尾行

「そこの君! イヴを見かけなかった?」

「え?」

 

 ルミナスクエアを適当に散歩していたら、後ろから声をかけられた。イヴって何だろうかと思いながら振り向いたら、俺の思考が完全に停止した。何故ならそこに居るグラサンをかけた女性が、世界的に超有名なあの人だったからだ。

 

 

 

 

 あ、アストラさんが話しかけてきたぁ!?

 

 

 

 

 い、一体何が起こってるんだ。近くにカメラがあったり……しない。という事は一般人に話しかけてみたドッキリとかではないみたい。じゃあ何で?

 

「あ、アストラさん?」

「いいえ、今の私は……でたらめチャーハンよ!」

「ちょっと何言ってるかわかんないです」

 

 何そのラジオネームみたいな名前。俺に混沌を重ね掛けするの止めてもらってもいいですか。……あと今の私って事は、普段がアストラであると言っているようなもんですよね。

 

 イヴって何だ? アストラさんに関係する名前……と、心当たりが1つ思い浮かんだ。

 

「えっと、イヴってもしかして……イヴリンさんの事ですか?」

「そう! 私の大親友を尾行していたのだけれど、見失っちゃったの!」

「大親友を尾行っておかし――」

「あ、あんなところにいた! ほら、隠れるわよ!」

「えっ、なんで!?」

 

 

 アストラさんに手を掴まれて一緒に路地裏へ隠れることになってしまった。完全に巻き込まれた……もし誰かに見られたら俺が誘拐してるように見えたりしないかなこれ、治安局さんちょっと今は来ないでください。

 

 

 アストラさんが尾行している理由は、とある噂を確かめるためらしい。噂の内容は、『イヴとアキラが2人でホテルに寝泊まりした』というものだ。情報源は偶然通りすがったリン、イヴリンさんが相当酔っていたらしく、それをアキラが連れ込んだとかなんとか。

 

「……いやいや、まさかあのイヴリンさんがそんな隙を晒すなんて。ましてアキラとホテルの同室で寝泊りしちゃったとかそんなわけ――」

 

 

 

 

 

 めっっっっっちゃありそう。(デジャヴ)

 

 

 

 

 

 だってアキラだもの。仕事に明け暮れて疲れ果てたイヴリンさんの心に、アキラの人誑しが噛み合ったらそりゃもうクリティカルよ。

 

 でも、内容としてはちょっと真実であって欲しくないと思った。……だってバイト先の店長が実は送り狼だった、とか嫌だもの。ただでさえハーレム誑し男の時点でアレなのに、手を出したら本当にアウトだよ。

 

 

 

 それにしてもアストラさん、何1つとっても尾行に向いていない。なんでステージ衣装でいけると思ってるの、抜群のプロポーションが今も注目を集めまくってるよ。尾行する対象より目立ってるんですけどやる気あります?

 

「あの、せめて服変えません?」

「大丈夫、このサングラスがあればこれ以上の心配はいらないわ!」

 

 心配しかないです。アストラさんってこんな天然キャラだったの? メディアで見てるときは全然そう見えなかったんだけど。これも裏方の努力なのかな。

 

 それとアストラさん、尾行中だからって初対面の俺と距離が近すぎるのは非常に良くないと思います。このままじゃ俺ファンになっちゃう。イヴリンさんの苦労がよくわかるわこりゃ……。

 

「む、あれは…………はぁ」

「あはは……」

 

 あ、今イヴリンさんと目が合った。そしてため息。横のアキラも苦笑い。さてはアストラさんが尾行してるのとっくに気づいてるな。それでお嬢様の気まぐれに仕方なーく付き合ってあげてる感じか。

 

 

 

 

 

 

 じゃあ全部茶番じゃん。なんだこの時間。

 

 

 

 

 

 

「あっ、イヴが何だか疲れてるみたい。アキラ、ここは男として気遣ってあげるチャンスよ!」

 

 そして全くもって見当違いな応援をしているアストラさん。確かにイヴリンさん疲れてるかもね、原因は貴女だけど。

 

「あの、アストラさん。もう尾行するのは止めといた方が……」

 

 そう口を挟もうとしたのだが、アストラさんは遠い目で俺に語りかけてきた。グラサン越しだけど、真っすぐな瞳を向けられるとドキッとしてしまう。

 

「……私ね、イヴの事は心から信じているの」

「心から、ですか?」

「そう、私と会う前に色々あったみたいだけれど……あの子はずっと私の正義の味方でいてくれてるわ。だからもし、イヴに何かあったら私が助けになりたい……いいえ、なると決めたの!」

「アストラさん……」

 

 言葉を聞いてようやく知った。彼女は本気でイヴリンさんの事を心配していたのだ。ちょっと、いやかなり不器用ながら彼女なりにイヴリンさんを支えようとしていたのである。……にしても不器用が過ぎるとは思うけど。

 

 

 

 

 

「――全く、なら直接私に聞けばいいだろう」

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 そんな事を考えていたら、後ろから尾行対象の声がした。アストラさんの驚いた声に俺もびっくりした。

 

「あれ、いつの間に?」

「はは、2人が話しに夢中になっていたから、その間にササっとね」

 

 イヴリンさんはともかく、アキラまで回り込んでいるのはどういう事なの。もしかしてパエトーンってファストトラベルとか出来たりするの? あ、俺たちが隙だらけなだけですか、そうですか。

 

「やっぱり、アストラさんがついてきてたの気づいてたんですね」

「当然だ。……サク、お嬢様の相手を任せてしまってすまないな」

「いえいえ、俺も流石にあの尾行はちょっと見ていられなかったので……」

「僕も止めようか迷ったんだけど、イヴリンさんが気のすむまで泳がせようって言うから……」

 

「……ちょっと3人とも。これはいったいどういうこと?」

 

 

 またしても何も知らないアストラさんは、『時間が無い。説明なら帰りの車でいくらでもする』とイヴリンさんに言い聞かされ、送迎用の車に押し込まれた。なんだ、いつものパターンか。直後にアキラも当たり前のように乗っていった。それはおかしくない?

 

 車が発進する直前にイヴリンさんから連絡先を渡された。『今後お嬢様を見かけるような事があったら、捕獲に協力してほしい』と言って車は次の仕事先へと向かって走り去っていった。

 

 

 

 後でアキラから聞いたところによると、アストラさんが吞むように勧められまくった酒を、イヴリンさんが全部代わりに引き受けたことが原因だったらしい。間接的にとはいえ、結局お嬢様が原因じゃないですかー。

 

 あとアキラの弁明によって、送り狼にはなっていない事が判明した。これからも健全な環境でバイトが出来そうだね! ……パエトーンという点に目を瞑ればだけど。




アストラさん持ってないから、どこまで天然にしていいのか迷いました。
……ほんと何、でたらめチャーハンって。
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