転生逆玉の輿を狙った男の末路 作:猪突猛進で書く
いつも通りの郊外、ブレイズウッドの某所にて
ベッドに腰掛けるクリスと、それを心配そうに見つめるルーシー
「──ぶぇっくし!」
「……あなたが風邪をひいてどうしますのよ」
「仕方ないだろ、毛布全部あげちゃったんだから」
前回の夜、もしも本当にルーシーが寒い思いをしていたどうしよう?と心配したクリスは思案の結果、全ての毛布をルーシーに渡し、結果として完全に風邪を引いていた。
「あんな嘘にそこまでする必要はありませんでしたのに…」
「たとえ嘘でも、もしもがあったらって思うだろ?」
「……はぁ」
またアホなことを……と言うような顔でルーシーはため息を吐く。
「……ほら、ため息なんて吐いてるとせっかくの美人が台無しだぞ」
「……へ?」
「ほら、笑ってくれよ。俺のために」
「…………もしや」
ルーシーは彼の額に手を当てる、ものすごい熱だ。
それこそ、普段隠している言葉が口から滑り落ちるほどの。
「……綺麗な指してるよなぁ」
「──っ!?そ、それで?」
普段の彼が中々口にしない正直で好意に満ちた褒め言葉。
それを聞いたルーシーは、顔を真っ赤にしながらも続きを促す。
「…ちっこくてかわいいし、声もいいし……無敵じゃないか?」
「……ふふ、それで?」
「……抱きしめていいか?」
「─────っ!?!?え、ええどうぞ」
彼の口から飛び出た発言にさらに狼狽えながらも、ルーシーは首を縦に振り、彼が広げた腕の中にすっぽりと収まった。
すると、彼の手が優しく彼女の頭を撫でる。
「いつも頑張ってるよな、お疲れ様。……迷惑かけてるけどさ、俺も俺なりに頑張ってるんだよ。完成まで何してるかは言えないけど、後ろで作ってるんだ。きっとお前も喜…………」
「……?何を?」
「……ぐぅ」
「…………わかりやすい寝息を立てて寝てやがりますわね」
熱に浮かされたまま、話しそうになっていた秘密が中断されたことを残念に感じながらも、ルーシーはこちらに体重をかけて寝ている彼をベッドに横たえようとする。
そして、彼の体を退かす手段が自分に無いことに気がついた。
強く蹴り飛ばすなり、放り出すなりするのならば簡単だろう。
しかし、仮にも自分が思いを寄せていて、さらに先ほどまで熱に浮かされてとはいえ自分に好意の籠った言葉を投げかけてきた相手にそんなことができるほど彼女も鬼ではない。
結局その日、特に予定もなかった彼女は彼が目を覚ますまでそのままの姿勢でいることにしたのだった。
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「……んで、お前らはそんなことになっちまったワケだな?」
「悔しいですが、その通りですわ」
「……横に同じく」
翌日、熱が少しだけ治って正気を取り戻したクリスと、逆に熱を出し始めたルーシーは、二人同じベッドで完治まで安静にしろ、とシーザーより厳命されるのであった。