転生逆玉の輿を狙った男の末路 作:猪突猛進で書く
「珍しいですわね、あなたが大人しくここにいるなんて」
ルーシーが珍しく野営地から離れずにいるクリストフにそう言うと彼は
「……あぁ、少し考え事をな」
「なら、ご一緒しますわ」
ルーシーはクリストフが座っている岩に、彼と身を寄せ合うようにして隣に腰掛ける。
「……ここに来るまでは、人生は楽で快適なのが一番だと思ってたが、ここで色々体を動かして、こういうのもいいなって思えるようになったんだ」
「それは何よりですわ」
「だからって訳じゃねぇけどさ、こうして一緒に生きていくならお前には一度しっかり謝っておかないとだよな」
その言葉に、ルーシーは怪訝そうに彼の表情を覗き込む。
「私は別に──」
「それでも、結果として俺は今までお前の好意を良いように利用してきたわけだからさ。そこだけはしっかりと謝らせてくれ。……ごめん」
「……えっと、その──別に謝らなくても……」
「自分も〝いい思い〟をしてるから別にいいんだよな〜?ルーシー?」
「ちょっ!?パイパー!?」
背後から登場したパイパーの一言に、ルーシーは頬を赤らめてこれまで類を見ないほどに慌てふためき始める。
興味を持った彼が問うと
「う、五月蝿いですわ!お黙りなさい!」
案の定彼の頭にバットが降ってくるが、今日の彼はなんとかそれを回避することに成功した。
「そんな怒ることないだろ!?」
「プライバシーですわ!」
「なら聞かねぇからバットを置け!」
少しして、落ち着いたルーシーがバットを置くと、クリストフは安堵の息を漏らす。
「まぁ、中身がどうであれ俺があることでお前に良いことがあったならよかった。一応、俺に何かできることがあるなら言ってくれ。できることなら力になるよ」
「──へぇ」
そんなクリストフをパイパーがニヤニヤとした顔で見つめていた。
どうかしたのか?と言うようにパイパーを見つめ返すクリストフにパイパーは
「そんなこと言っちゃったら、お前の個室って概念が消え去ると思うなあ」
「……?」
すると、黙っていたルーシーが口を開く
「本当に、可能なことならよろしいのですわね?」
「おう」
「なら、今日からあなたの部屋は私と同じにしてもらいますわ」
「……ああ勿論─────ちょっと待て、なんて?」
「私が連れてきたというのに……、他の女性とばかり親しげにしているあなたの責任ですから…………可能ですわよね?」
「……お、おう」
有無を言わせない圧力を纏い始めたルーシーの言葉に思わず首を縦に振ったクリストフ。
パイパーは横で、〝言わんこっちゃない〟という風に肩をすくめて首を横に振る。
この日、カリュドーンの子からクリストフの個室は消え去ったのであった。
「そういえば最近、ルーシーが怒りづらくなったよな」
とは、数日後のシーザーの談である。