転生逆玉の輿を狙った男の末路 作:猪突猛進で書く
突然だが俺の名はクリストフ、苗字はないただのクリストフだ。
自分が転生したと気がついた俺は、一応今世に両親はいるものの最後に会ったのは数年前。
旅が好きな両親は俺に家と家具を用意して家賃や光熱費を払うとだけ約束し、面倒ごとを避ける為我が家の苗字を名乗るなと言い残して旅に出た。
つまり、食費その他諸々の金は自分で用意する必要がある。
そんなある日、ルミナスクエアの街角で海を眺めていた金髪の少女があまりに悲しそうな顔をしていたので少し相談に乗ったところ、何故か懐かれ
「次はいつお会いできますの?」
と、聞かれたので、ほとんど毎日この辺りにいることを伝え、そのついでに彼女の名前を聞いた。
すると
「わたくしはルシアーナ・オクシスィース・テオドロ・デ・モンテフィーノ。ルーシーと呼んでくださいまし!」
そう、新エリー都では知らぬものは居ない名家、モンテフィーノのご令嬢だったのである。
「どうかいたしましたの?」
「……あぁ、いや、またなルーシー!」
「えぇ、またお会いしましょう!」
お嬢さまはこちらに手を振りつつ走って行った。
この時、俺の逆玉の輿計画は始まったのである。
なんて言ったって人生は、快適で楽しい以上に素晴らしいことはないのだから。
──────────
さて、そこから数年、俺は彼女と交流を続けてきた。
逆玉の輿といっても、俺はただ彼女を利用するだけでなく出来れば彼女も幸せになって欲しいと考え、本気で彼女の悩みに向き合って相談に乗って、本心からの言葉で彼女と接していた。
そうして相談に乗っていたある日
「……
「……そうか」
はっきり言って、雲行きが怪しくなってきた。
別に彼女が生きたいように生きるのは喜ばしいことだとは思うが……俺の逆玉の輿計画はご破算では?
「あ〜、その、別に止めはしないけどよ、そういう物事はじっくり考えた方がいいぜ?悩むのは一瞬、付いてくる結果は一生だ」
「そのくらいのことは重々承知しておりましてよ」
そう言いつつ、考え込む仕草を見せるルーシー。
彼女はこちらを見据えると
「あなた、今よりも良い生活がしたいから私に取り入ろうとしてらっしゃるのでしょう?」
……マズい、バレた。
焦る俺のことを置き去りにルーシーは言葉を続ける。
「私と郊外に出るつもりはございませんこと?」
「……はい?」
「首を縦に振ってくだされば、私が郊外で大成した場合も、そうならずに家に戻ることになった場合も、あなたに富を与えると約束しますわ」
雲行きが怪しいどころじゃなくなった。
この数年彼女の相談に乗り続けた身としては彼女には是非やりたいことをやって欲しい。
しかし、自分がそれを手伝えるかと言われると話が別──
「前金として、あなたが以前お好きだと仰っていたニトロフューエル。アレを二箱は用意できますわ。あなたがこれからも私を支えて、共に郊外で上手くやれたら……それ以上のニトロフューエルと現金をお約束いたしますわよ」
俺の首は、俺の意思を離れて縦に動いた。
そして俺は嬉しそうなルーシーに連れられ、あれよあれよという間に気がつけば、郊外でルーシーと二人で、バイクをかっ飛ばしているのであった。
(あぁ、これが楽をしようとした俺に下る天罰か……)
俺は空を眺めるのであった。