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日中対立の激化の背景は?中国で著しく誤解される日本の「存立危機事態」の定義 政府がやるべきこととは? #エキスパートトピ

高橋浩祐米外交・安全保障専門誌「ディプロマット」東京特派員
日本と中国の国旗のコラージュ提供:イメージマート

台湾有事をめぐる高市首相の国会答弁をきっかけに日中関係が急速に悪化している。2012年の沖縄県・尖閣諸島の国有化以来の対立激化だ。

数多くの中国メディアが、「満州事変から真珠湾攻撃に至るまで日本はいわゆる『存亡の危機』を捏造し、徐々に侵略を進めてきた」「『存亡の危機』は、90年以上前の日本による中国侵略の際に用いられた口実と驚くほど似ている」などと報じ、あたかも日本が台湾有事を契機に、中国侵略を始めると報じている。つまり、日本の「存立危機事態」の定義がよく理解されず、誤解が広まっている。日本は対策が急務だ。

ココがポイント

「誤解による関係悪化は避けるべし」
出典:産経新聞 2025/11/21(金)

首相発言は、日本が台湾情勢に武力介入する意思を示したと受け止められた。誤解を招く不用意な発言だったと言わざるを得ない。
出典:南日本新聞デジタル 2025/11/20(木)

存立危機事態は、日本が集団的自衛権の限定的な行使に踏み切る際の判断基準である。
出典:読売新聞オンライン 2025/11/18(火)

所谓“存亡危机事态”,和90余年前日本侵华时的借口如出一辙。
出典:北京日报 2025/11/15(土)

エキスパートの補足・見解

中国にいる日本専門家と意見交換しているが、日本の「存立危機事態」の定義について、日本が台湾有事を口実にして中国を侵略してくるとの誤解が中国側にかなり広がっている。

中国のシンクタンク研究員は「武力で台湾海峡に介入することは侵略であり、これは疑いようがない」と指摘した。そして、数多くの中国メディアが、日本が台湾有事に介入する事態を満州事変と結び付けている。

中国反発の背景には、中国が「核心的利益の中の核心」と位置づける台湾問題に日本の首相が踏み込んだことがある。

しかし、存立危機事態は、あくまで日本が集団的自衛権の限定的な行使に踏み切る際の判断基準だ。決して中国が台湾を攻撃しただけでは、存立危機事態を認定できない。また、仮に米軍への攻撃があって、それだけで認定できるものではない。米国を念頭に密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、日本の存立が脅かされる場合を「存立危機事態」と規定し、他に適当な手段がないなど「武力行使の3要件」を満たせば、集団的自衛権が行使できる。

存立危機事態の定義は海外ではよく理解されていない。政府や国会議員、メディアは日本語だけでなく、中国語を含めた複数言語で発信して誤解を解かないといけない。

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米外交・安全保障専門誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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