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『果てしなきスカーレット』 う〜ん…ヤバい…これはヤバい… 炎上覚悟で書くか💦💦 公開初日から阿鼻叫喚の酷評が飛び交う状況。しかし何かの気の迷いで予約してしまった以上、見ないのももったいない。半ばネタとして見に行ったのだが… 「おっ? 絵はすごく色が深くて重厚。音響もスケールがでかい。出だしは悪くないが、きっとストーリーがつまらないんだろうな」 「ああ、この地獄絵の暗い雰囲気はかなり好き。ストーリーも『ハムレット』の換骨奪胎ぶりが面白いし、ダンテの『神曲』も入ってるぞ。こちらのベアトリーチェはかなりひねりが入ってるな。アクションシーンも意外とリアルでエグい。さて、どの辺からつまらなくなるのだろう?」 「ああ、今の渋谷のシーンはさすがに引いたな。きっとこの辺からガタガタになっていくのだろう」 「あれ? まだそれほどつまらなくならないぞ。でもこれ、もうすぐ終わりじゃないの?」 「…あれ?? 結局最後までなかなか面白かったぞ? え?世評からすると、これを酷評できない俺のセンスって、どこかおかしいの??」 …とまあ、そんな経験をしたわけだ💦 確かに「トンデモ映画」だとは思う。しかしそのトンデモ設定にちゃんと統一感がある。私が死ぬほど嫌いなのは、作品内で途中から世界観やゲームの規則が変わるものだ。この作品にはそれがない。ちゃんと最初から最後まで一定の規律に則ったトンデモになっている。映画は、しょせん絵空事。ましてやこの物語は、ほぼ夢落ちと言っていい内容だ。リアリズムの観点からすればおかしくても、作中内ルールに破綻がなければ、特に問題はない。 語り口も決してスマートではない。テーマが非常にナマっぽい形で出てしまっている。しかしあれこれ錯綜しながらも、報復の連鎖を愚直に否定しようとする姿勢には嘘が見られない。「お前本当に馬鹿な奴だけど、そういう馬鹿は嫌いじゃないぞ」という感じ。 ラストのあれなど、明らかにジョン・レノンの「イマジン」の映画化と言っていい光景だ。 君は僕を夢想家だって言うかもね でも夢想家は僕だけじゃないはずさ そこにいつか君たちも加わって 世界がひとつになったらいいなと思うんだ そんな夢想とも祈りとも戯言とも言えるメッセージが、照れることなく正面から発せられる。そういう愚直な姿勢は、嫌いじゃない。 なお私の過去の細田守作品に対する評価は 『時をかける少女』 文句無しにすばらしい、青春映画の瑞々しい傑作。 『サマーウォーズ』 世評は高いがイマイチ。花札のルールを知らないと何をやっているのかよく分からない。 『おおかみこどもの雨と雪』 まあ悪くはない。 『バケモノの子』 一体何をやりたいのかよく分からん。ここで細田アニメから心が離れた。 『未来のミライ』『竜とそばかすの姫』未見 つまり私の中では『時をかける少女』がダントツで、何とその次に『はてしなきスカーレット』が来るという、驚きの結果に! お世辞にもバランスの取れた作品とは言いがたいので、声を大にして擁護する気もないが、少なくとも私はこの作品が結構好きである。 正直に言ってしまえば、今年ワーストだと高らかに騒いでいるような連中は、シェイクスピアをはじめとするヨーロッパの文芸やバロック絵画などに対する素養が低すぎて、前提となる世界観を飲み込めないだけなのでは?とすら思っている(いかん、ガソリンを撒いてしまった)。 #果てしなきスカーレット #細田守
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