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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
普通の女の子に戻れないお嬢様の空回り

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お嬢様の修学旅行 初等部編 その5

 修学旅行三日目は自由行動。

 とはいえ、一人でフラフラというのは基本的にせず、皆集まってのオプショナルツアーを申し込んでいる。

 やはり人気なのはここから南に下って、平等院鳳凰堂、薬師寺、東大寺と見物する奈良コースと、映画村や鉄道博物館見学、少し遠いが宝塚歌劇観劇なんてコースも有る。

 また、買い物は四条河原町や京都駅前等選ぶことも出来る。


「瑠奈。

 お前はどれにするんだ?」


 二日目の夜、栄一くんが私に声をかけたので、私は明日の予定を告げることにする。

 少なくとも、行き先を聞いて栄一くんが『?』を浮かべたのが分かる。


「万博記念公園から関西国際空港を経由して、神戸中華街で夕食」




 で、三日目当日。

 私の謎ツアー参加者は結構居た。

 いつものカルテットメンバーに、薫さん、志津香さんに、華月詩織さんと待宵早苗さんである。

 まずは京都駅で新幹線に乗り、新大阪駅へ。

 新大阪駅から用意された車で万博記念公園という行程である。

 車でそのまま万博記念公園というのも考えたが、京都は高速に乗るまでが大変なのだ。


「しかし、あの映画の影響かぁ……」


 光也くんが苦笑するが私は気にせず映画の感想を言う。


「あの組織と思想って私大好きなのよ」


 アニメ映画のくせに一緒に行った大人がポロポロ泣いたと評判の映画で、前日に上映会をしたら先生のほうが泣いたといういわく付きの映画の元になった場所である。

 だからこそ、見ておきたかったのだ。


「じゃあ、あの組織の元になった歌と歌手も?」


 裕次郎くんの質問に私はえへんと胸を張る。

 なお、乗っている新幹線は新坂出行きのやつでラクジュアリークラスである。


「もちろん大好きよ♪

 歌も覚えたぐらいなんだから」


「今度聞かせてくださいな」


 追随してくる栗森さんの横で冷ややかに私を見ているのが華月詩織さん。

 桂華院家分家筋で、家格で言うと元の私と同じぐらいというか、向こうの方が高かったりする。

 お祖父様と正妻の娘として生まれた母親と華月子爵家当主を父に持つ詩織さんは、ゲームにも名前が出る私の取り巻きで、最後には裏切る役回りだったりする。

 私自身それを知っているのであえて距離をおいたのだが、このタイミングで私に接触してきたというのは何か意味があるのだろうか?

 そんな詩織さんが口を開く。


「万博記念公園はわかりますけど、どうして関西国際空港に?」


 万博記念公園からまた車で新大阪駅に戻り、空港特急に乗って関西国際空港に向かうのだが、大阪には映画スタジオもあるし水族館もある。

 繁華街もあれば大阪城や通天閣というのもある中で、たしかに関西国際空港というのは分からないだろう。


「これはちょっと仕事も入っているのよ。

 うちが持っている航空会社のキャンペーンに出席するの」


 一応それらしいイベントを用意したが本当は違う。

 ゲームで破滅した時、私はこの関西国際空港からどこかに旅立つ一枚絵が表示されるのだ。

 多分外国なのだろうが、成田でなく羽田でもなく関西国際空港である。

 意味はないのだろうが、ふと見てみたくなったのだ。

 それだけである。

 新大阪駅到着時、ずらりと駅の偉い人たちが出迎えたのにはびっくりしたが、ふとホームを見て気付く。

 ここ、うちのホームだった。





「瑠奈さんって、不思議なぐらい過去にこだわることがありますわよね」


 万博記念公園から次の関西国際空港に向かう空港特急のグリーン席の中、薫さんが何気無しに私に話を振る。

 椅子の前のテーブルにはたこ焼きとお好み焼きが湯気を立てているがグリーン車貸切なので気にする必要はない。

 たこ焼きをおいしくいただきながら、私は何気無しに返事をする。


「そうかな?」


「ええ。

 万博記念公園で歌いだした時はどうしようかと思いましたわよ。

 あまりに歌がすご過ぎて、鳥が寄ってきたときはどうしようかと」


 歌が歌なのである意味正しいのだが、あの写真家の先生にまたおいしい写真を献上してしまったと思うとなんか腹が立つ。

 そんな怒りをあつあつのたこ焼きとともに飲み込む。

 ぱくり。


「桂華院さんの歌は知っていましたけど、本当に素敵ですのね。

 感動を歌で昇華なさっているのですよね。

 将来は歌姫として世界に出るのですか?」


 薫さんの友人である待宵早苗さんが羨ましそうに私たちの会話に加わる。

 待宵伯爵家の息女である彼女は声楽を嗜んでおり、私と音楽談義ができるというので友達である薫さんに頼んでついてきたという経緯がある。

 だから、私の不意の歌が理解できてしまう。


「さぁ?

 欧州からお誘いが来ているのは否定しませんが」


「素敵ですわ♪

 桂華院さんなら、きっと素敵な歌姫になられますわ♪」


 返事をしようとしたら、聞き捨てならない声が聞こえてきた。


「あ!光也!!

 全部にマヨネーズを掛けるんじゃねぇ!!」


「帝亜。

 この手の食べ物はこれが至高なのだ。

 食え」


 おーけー。

 その言葉私への宣戦布告と理解した。


「ちょっと待った!

 かつおぶしと青のりこそが究極ぅ!!」


 こんな馬鹿話で一時間ちょっとはあっさりとつぶれる。

 なお、『ちょっと』が増えたのは列車が遅れたからである。

 うん。

 阪和線だから仕方ないね。




 その一枚絵を今でも鮮烈に覚えている。

 関空国際線出発ロビーに一人佇む後姿の少女。

 鞄はひとつで、受付に並んでいたのが印象的だった。

 彼女は結局何処に行ったのだろうか?


「瑠奈?」


「ん?

 なぁに?

 栄一くん?」


 現実に引き戻された私は栄一君に振り向く。

 うまく笑顔が作れたと思う。

 そんな私に栄一君は不審そうな顔を見せた。


「なんか今日の瑠奈変だぞ」


「そうかな?

 旅行で少しセンチメンタルになっているのかもしれないわよ」


「瑠奈に限ってそれは無い」


「おーけーわかった。

 戦争だな。戦争がしたいんだな?」


 私がぐーを作って手を振り上げると栄一君がさっさと降参して笑う。

 少しだけ楽しそうに。


「やっといつもの瑠奈に戻った」 

  

「はいはい。

 ありがと。

 さてと、イベントにちょっと出てくるわ」


 なお、このイベントとはお遍路のキャンペーンの為、お遍路衣装を着る金髪少女という実に似合わない格好に写真家先生が大爆笑。

 腹が立ったので、全員お遍路を着ろと用意させて、四国でもないのにお遍路写真を空港で撮ることになった。

 そのうち四国に呼ばれるかもしれないな……




 関西国際空港から神戸までは高速船を使う。

 すでに日も落ちだしており、神戸に着いたら中華街で夕食後、新神戸から新幹線で京都に帰るという予定。

 埋め立てが続く大阪湾にひときわ珍しい異物が建造されつつある。


「箱舟都市。

 本格的に造り出しているわね」


「箱舟都市?」


 私のつぶやきに薫さんが尋ね返す。

 この世界は、少しずつ変わろうとしている。

 そんな変化がここ大阪湾にもはっきりと現れていた。


「旧北日本人の住む洋上プラットホーム。

 北日本の人たちって内地で住むのを断られたりトラブルが多かったから、彼らの街を作ろうって訳。

 埋立地でなく、タンカーを並べた洋上プラットホームなのは動かせるから。

 いざとなったら動かしてしまおうって訳」


 ここに住む二級市民たちは二級市民の中でも上位階級。

 彼らが更に内地に移れるためのステップとしての場所がこの方舟都市である。

 洋上のボートハウスやスラムから、方舟都市下層、方舟都市上層を経て内地新興住宅地へというのが北日本人同化のマスタープランである。

 そんな事を考えたくないから、私は何気なく歌を口すさんだ。


「~♪」


 それに聞き入るみんな。

 歌い終わった時に自然と拍手が起こった。


「やっぱり瑠奈って過去を凄く切なそうに歌うな。

 そこがいいけど。

 この曲、なんて曲だったっけ?」


 私は微笑みながら、昨日見たアニメ映画の秘密結社の名前を上げたのだった。

 なお、夕食は、マーボー豆腐(あまり辛くない)、シュウマイ、チャーハン、支那そばというメニューだった。

アニメ映画

 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』

 クレヨンしんちゃんの映画の最高傑作の一つと名高い作品。

 初見で見て涙が止まらなかった。

 なお、この作品からカーペンターズを知った口である。


この話の瑠奈の歌

 カーペンターズ70年のアルバム代表曲と73年のシングル。

 瑠奈的には、『遙かなる影』の方が好きらしい。


阪和線だから仕方ない

 『また阪和線か!』という言葉ができるぐらい遅延で有名。

 最近は改善しつつあるらしい。

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