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598 久しぶりに聞いた名前


 話を聞いてみると、グレゴリーはレイドス王国の貴族だった。なんと、子爵であるらしい。


 とはいえ、二十年以上も前に商人に偽装してベリオス王国に入り込んで以来、貴族らしい生活などしたことはないらしいが。


 それでもレイドス王国への忠誠心を失わないのは凄いと思ったが、単に忠誠心が高いというよりも、裏切ったら殺されるという恐怖心が強いようだ。


 実際、祖国を裏切ろうとして殺されたスパイ仲間もいるという。


 スパイを見張るスパイがいるのかもしれないな。


 それに、レイドス王国のスパイは、少々特殊だ。常に相手の国に対して工作を行うのではなく、有事の際に動きやすいように、普段は真面目に活動していることが多い。


 フィリアース王国に潜り込んでいたサルートという騎士も、信頼を得るために平時は普通に働いていたのだ。


 グレゴリーも同じで、数年に1回レイドス王国に情報を送る以外は、本当にまともな商人として活動をしていたらしい。


 そのおかげでこの地で信頼を得るまでとなり、今回の緋水薬に関わる陰謀もスムーズに進めることができていたそうだ。


 グレゴリーたちは東征公の配下であり、その配下の錬金術師の計画を手伝っている形であるという。


「その錬金術師は何者?」

「ゼライセという、まるで子供のような男です」

「ゼライセッ! この国にいる?」

「は、はい……」


 フランが目を見開く。なんと、ここで奴の名前を聞くことになるとは思わなかった。


 各地で暗躍する、クソサイコイケメン錬金術師だ。バルボラでは俺たちもしてやられたことがある。まあ、こっちも奴の計画を邪魔してやったから、痛み分けと言えば痛み分けだが。


 それにしても、レイドス王国にいたんだな。元々、レイドス王国の所属なのか? いや、クランゼル王国で育てられたような話をしていたが……。


「ゼライセは、レイドス王国の部下?」

「せ、正確には東征公の配下かと……」

「奴は他の国で追われてる」

「我が国と敵対している国での犯罪歴は関係ありません。それに、冒険者ギルドがないレイドス王国では、ギルドのかけた懸賞金も意味がないですから」


 つまり、他国の犯罪者であっても、有能であれば受け入れるということか。それどころか、敵の敵は味方という論法で、クランゼル王国で手配されている者を積極的に受け入れている可能性すらあった。


『もしかして、あのアンデッドはゼライセが使役しているのか?』


 フランがそのことに付いて尋ねると、ゼライセとは全く関係がないそうだ。あのアンデッドは、南征公の配下である黒骸兵団という組織から貸し出されたアンデッドであるという。


 驚いたことに、黒骸兵団は人間としての意識を残したまま、死霊術師をアンデッドに変貌させる術を確立させたらしい。


「そんなことが可能なの?」

「わ、分からない。でも、あのワイト・キングも、まともな会話は一応可能でした。その精神は大分変質してはいましたが……」


 素体となった者の相性によって、どのクラスのアンデッドに変わるかは分からないらしく、奴隷に死霊魔術を覚えさせた後に、無理やりアンデッドに変化させるという方法が現在はとられている。


 そうしてアンデッドにしたあと、高位の死霊術師が支配し、レイドス王国に忠誠を誓わせるのだ。


 わざわざ人間をアンデッドに変える利点としては、やはり強い理性と、会話能力があげられる。普通は精神が狂ってしまい、複雑な作戦行動を取らせることが難しいアンデッドが、人として思考を持つことで恐ろしくも強力な兵士に変貌するのだ。


 ただ、アンデッドとなった者は時間経過によって徐々に肉体と精神が変質していってしまうので、平時は棺で眠っていなければならないらしい。


 棺には強力な隠蔽効果もあるので、強力なアンデッドを荷物の中に隠して運搬もできる。場合によっては、敵国の中枢近くまでバレずに運び込むことも可能だった。


 先程俺たちが倒したワイト・キングは、黒骸兵団でも数体しか存在しない最高レベルの戦力であるらしい。ウィーナレーンが出てきた時に、少しでも対抗できる存在と目されていたのだろう。まあ、俺たちが瞬殺してしまったが。


 魔狼の平原にいたワイト・キングも、黒骸兵団の所属だったようだ。目的は分からないが、あの場所の調査でも行なっていたのかもしれない。


 まあ、今はアンデッドよりも、緋水薬が重要だ。


「お前たちの目的は何? 緋水薬をどうするつもり?」

「ゼ、ゼライセ殿の最終的な目的は知らされていません! ただ、緋水薬を大量生産せよと!」

「その緋水薬はどこに送ってる?」

「ど、どこにも……」

「ん?」

『はあ?』


 どういう意味だ? 緋水薬を作って、何かに使おうとしてるんじゃないのか?


 だが、グレゴリーが語るには、緋水薬はこの船の倉庫に大量に保管されたままになっているらしい。


 国内用に流通させている以外は、全てここに残されているそうだ。


 そのうち、どこかに運ぶのだろうと思われていたが、もう1年以上このままだという。


(なんで? 緋水薬を手に入れることが目的じゃない?)

『さてな……。それに、こいつらがレイドス王国の人間でゼライセの指示で動いていることと、湖の異変のつながりも分からない』


 メッサー商会が何かをしたせいで異変が起きているのかと思っていた。それこそ、緋水薬を何らかの方法で悪用して、今回の異変を引き起こしているくらいのことは考えていたのだ。


 だが、本当にそうなのか?


「湖に異変が起きていることは知っている?」

「は、はい」

「お前らの仕業?」

「め、滅相もない! そんな大それたこと、しているわけがないでしょう!」

『まじかよ。こいつ、本気でそう言ってるぞ』


 グレゴリーに知らされていないだけ? それとも本当に関係ない?


『フラン、ゼライセから無理やりにでも話を聞く必要がありそうだ』

(ん)


 フランがグレゴリーにゼライセの居場所を尋ねる。


「こ、工房だ! 緋水薬の工房にいる!」


諸事情により、今月は執筆ができないかもしれません。

次回は、書き溜め分を22日に更新させていただきます。申し訳ありません。

最低でも、来月上旬には更新を通常通りに戻したいと考えています。

今月末までには活動報告でお知らせいたします。


クロックワークス様から、転剣のデスクマットが販売されることになりました。

現在各所で予約受付中ですので、興味があるかたはチェックしてみてください。

イラストは2種類あるようです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] グレゴリーの尋問そこそこだけど、やっぱり、ちょっとヌルいかな、このままフランがいい人まっしぐらなら、WEB版を読ませていただくのをやめるにとどまらず、書籍版の購入もやめなければいけなく…
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