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射石飲羽

創作劇「射石飲羽 — 石に向かって必死な人々 —」

登場人物

熊渠子(ゆうきょし):楚の国の武将。弓の名手、自信満々。

石さん:擬人化した石。無口そうに見えるが、実はよくしゃべる。

部下たち:将軍に仕えるが、内心では冷静にツッコミ担当。

第一幕 ──夜の草むらに潜む影

(夜、草原。月明かりの下、熊渠子が馬上で警戒している)

熊渠子「む…あの影は虎に違いない! 今こそ俺の一射を見せてくれる!」
(ぎゅん! 矢が飛ぶ音)
石さん「いってぇぇっ! お前、何すんだよ!?」
熊渠子「……しゃ、しゃべった!? 虎じゃ…ない?」
石さん「どこからどう見ても石だろうが。あんた目悪いんじゃない?」
部下A(小声)「将軍、目だけじゃなく頭も…」
部下B「しっ!聞こえるぞ」

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マンガ「射石飲羽」

第二幕 ──努力の成果?

熊渠子「いや、俺は本気で虎と思ったんだ。矢は羽根まで深く刺さったろ?」
石さん「あぁ、刺さったねぇ。おかげで俺の“羽根コレクション”が増えたよ」
熊渠子「コレクション?」
石さん「今まで黙ってたが、俺の趣味は矢の羽根を集めることなんだ。お前みたいな必死なやつのおかげで、質のいい羽根が集まる」
部下A「……つまり将軍の必死さは、石の趣味を充実させただけ、と」
部下B「努力は報われる…けど、誰の努力が誰を得させるかは別問題だな」

第三幕 ──皮肉な結末

熊渠子「よし、これからも毎晩石を射って羽根を献上しよう」
石さん「いや、もう十分集まった。あとは羽根の冠作って、宇宙旅行に行く予定だから」
熊渠子「な…なんだと!?」
石さん「だって、努力すれば石でも夢を叶えられるって言うじゃん?」
部下A「将軍、皮肉な話ですね」
部下B「えぇ。全力で石を手助けした結果、将軍の功績は『羽根運び』だけ」

(石さん、羽根の冠をかぶり空に飛び立つ。将軍はぽつんと残される)

熊渠子「……故事の主役って、俺じゃなかったのか…?」

オチの一言

ナレーション「必死になれば奇跡は起こる。ただし、その奇跡が誰のためになるかは…保証されない。」

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射石飲羽

(補足資料)


<白文>
昔者楚之熊渠子夜行、見寝石、以為伏虎、関弓射之、滅矢飲羽。下視知石也。却復射之、矢摧無迹。熊渠子見其誠心、而金石為之開、況人心乎。

<書き下し文>
昔者(むかし)楚の熊渠子(ゆうきょし)夜行し、寝石を見、以て伏虎(ふっこ)と為し、弓を関(つが)えて之を射れば、矢を滅し羽を飲む。下視(かし)して石と知るなり。却って復た之を射るも、矢摧(くだ)け迹(あと)無し。熊渠子其の誠心を見(あら)わせば、金石も之が為に開く、況(いわん)や人心(じんしん)をや。

<解釈>
昔、楚の国の熊渠子(ゆうきょし)が夜道を歩いていたとき、伏せている石を見つけた。
それを虎だと思い込み、弓を引き絞って射たところ、矢は深く突き刺さり、羽根まで飲み込まれるように沈んだ。
下をよく見てみると、それは石であることがわかった。
そこで、もう一度同じように射てみたが、今度は矢は折れて跡も残らなかった。
熊渠子は、最初に射たときは自分の心が真剣であったために、金属や石すらも貫いたのだと悟った。ましてや、人の心を動かすことなどなおさらであろう。

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白文

<参考資料>

射石飲羽(しゃせきいんう)解説

1.語義と成句構成

字義

射石:石を射る。

飲羽:「飲む」は“のみこむ”意。矢が羽根(矢尾)までも沈み込むほど深く刺さること。矢学の語では「金=鏃(やじり)・羽=矢羽」を指すと言い換えられる。

成句の核心
必死の一念・真剣な集中が常ならぬ力を発揮させる、の譬え。転じて「至誠・専心ならば、困難をも貫徹できる」の意。

2.典拠


(1) 『韓詩外伝』巻六

昔者楚熊渠子夜行,寢石以為伏虎,彎弓而射之,沒金飲羽,下視,知其為石。
(昔、楚の熊渠子が夜行の際、伏せる虎と見誤り、力のかぎり射たところ、矢は鏃も羽も沈むほどに入った。近づいて見れば石であった、の意。)

(2) 『呂氏春秋』季秋紀「精通」

養由基射兕,中石,矢乃飲羽,誠乎兕也。
(楚の養由基が“兕(さい)”を射つつ石に中て、矢は羽まで沈んだ――対象を兕と信じる一念の“誠”ゆえ、の論証。)

(3) 『史記』巻一〇九「李將軍列傳」

廣出獵,見草中石,以為虎而射之,中石沒鏃(一作「沒羽」)。視之石也。因復更射之,終不能復入石矣。
(李廣が草中の石を虎と誤認して射ると、最初の一矢のみ深々と刺さり、二の矢以降は入らなかった、の意。)

※三書はいずれも「誤認→渾身の一矢→石に深刺」のモチーフを共有。『韓詩外伝』は「没金飲羽」の熟語形を明示し、後世の四字化(射石飲羽)を支える本文学的根拠となります。

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解説「射石飲羽」

3.表現の差異と語用

語の焦点
「射石」は外的対象の硬さ・客観的障害を示し、「飲羽」は主観的行為の極度の集中が物理的限界を超克する 一回性の奇効 を示す。『史記』では二矢目以降が入らない点が強調され、昂奮・専心の瞬発力を説く材料となっています。

関連表現
成句 「没金飲羽」 は『韓詩外伝』の本文語で、弓術語として「鏃も羽も没(い)るほど射入る」意。文献上の直接の語形です。

4.歴史的バリエーション

モチーフは楚の熊渠子・楚の養由基・漢の李廣と、時代や人物を替えて伝承される(いずれも誤認→石中深刺)。この複線的伝承は、諸子・史伝が“誠”の効験を論証する枠で再利用したためと考えられます。一次典拠は上掲三書。

5.意味の展開と用法

基本用法:「射石飲羽の気迫」「射石飲羽の一念」など、人の専心・至誠が障壁をも貫くことの譬えに用いる。

注意:
① 単なる怪力・武勇の形容ではなく、心の凝集(誠・一念)を強調する点が古典の主旨。
② 継続力よりも決定的一撃の相に軸足がある(『史記』の二矢目不入)。

6.近縁・対照成句

近縁:精神一到(精神一到何事不成)/一念通天――いずれも誠意・専心の効能を説く。

対照:画餅充飢(方法が伴わず成果を欠く)など、意志のみで現実が動かない場合を戒める語。

7.参考原文

『韓詩外伝』六:「昔者楚熊渠子夜行……沒金飲羽。」

『呂氏春秋・精通』:「養由基射兕,中石,矢乃飲羽。」

『史記・李將軍列傳』:「……中石沒鏃(一作沒羽)。因復更射之,終不能復入石矣。」

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射石飲羽

まとめ

「射石飲羽」は、“物理的硬さ”を“精神的集中”が打ち破るという古典的比喩で、誠の力(まことの一念)が一回の臨界突破をもたらす、という思想史的含意をもつ。用いる際は、努力の量より心の質(専心・至誠)を強調する文脈が原義に即します。


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