「ガンダムSEEDシリーズ」や「サイバーフォーミュラシリーズ」で知られるアニメーター・重田智氏の画集出版記念トークショー&サイン会が開催!「METAL BUILD」シリーズ監修についてのコメントも掲載!【イベントレポート】
「METAL BUILD」シリーズの監修作業についての重田氏のコメントを掲載!
そして今回は特別に、画集でもクローズアップされている「『METAL BUILD』シリーズの監修」について重田氏にお話をうかがったので、そちらもあわせて掲載します!
――今回の画集「重田智WORKS」では立体物の監修についても大きく取り上げられており、その中でも「METAL BUILD」シリーズを監修した際の、図面にびっしりと書き込まれた「覚え書き」は圧巻でした。同シリーズを監修される際は、どのように進めていくんでしょうか?
重田氏:監修という言葉のイメージから「ここはこうであるべき」的にトップダウン式にやっているのかと思われてしまうかもしれませんけれど、実際はそんなことはなくて、企画の先頭に立って旗を振るというか「このモビルスーツって、こういうイメージだと思います」というコンセプトのお話をして方向性を決めていく感じですね。最初はアニメーター気分で絵を描くと二次元と三次元の解釈の違いのギャップがあるかと思って、言葉で説明したりしていたんですが、「もうちょっとのその”ちょっと”の部分の解釈が伝わりずらいかな」と感じることがありました。それで、やはり立体物の方たちとのやりとりではあるので、図面をもらってそこに考え方の詳細や気分などを書き込んでいったほうが破綻しないのかなと思い、「覚え書き」というスタイルで図面に書き込んでいくことにしたんですね。みんなこの図面を見て「すごくたくさん書き込まれてますよね」と言ってくれるんですけれど、よく読んでみればわかるんですけれど大したことは書いてないと思うんですよね(笑)。ただ、のちのち作業する方々のためには、なにか目に見える素材として残っているほうがいいかなと思ってやっているところはあります。
――とはいいますが、たとえばフリーダムの「スネにある『折れ』の位置を上げるだけで、実際に長さを変えなくても脚がもっと長く見える」といったような書き込みは、やはり絵を描く方ならではの指摘だと感じました。
重田氏:これもいつも打ち合わせでお願いしているようなことを書いているだけなんですけどね(笑)。そのあたりは、俗にいう「リライト」の作業の範疇だと思うんです。たとえば大河原(邦男)さんの描いてくださるデザインはわかりやすくキャッチーではあるんですけれど、これを実際の作画作業時に、メカ設定のデザインをそのまま作画すればいいというわけではないんですね。モビルスーツはメカとはいえ、やはりパイロットも含めてキャラクターナイズという意味でも、デザインの捉え方が違ってくるとは思うんですよ。アニメーションの制作上キャラクターデザインをする方がキャラクターの作監(作画監督)をするのに対して、メカの場合はメカデザイナーがメカの作監をするわけではありませんよね。なので、その部分の「デザインの解釈」を自分たちメカアニメーターがすることになるんですが、そこの「解釈」の部分を「こういうところに気をつけて、こういうふうに考えて作画していましたよ」という感じで監修時に書き込んでいるんですね。とはいえ、ある種の”虎の巻”的なものではなく、「細部の捉え方で見え方や絵の作り方がそれなりに変わってきますよ」というような意味の書き込みです。
ただ、これは見方を変えるとフリーダムなら「フリーダムに見えなければいけない」わけで、一番最初にMETAL BUILDの図面なり試作品なりを見せてもらったときには、「ああ、こういうふうに解釈されちゃうんだ」とか、「やっぱり目につく部分は大きく捉えられちゃうんだ」「これは全体のプロポーションバランスの中でちょっとおかしく見えないか」と思うところはありました。そういう部分を拾っていって、自分なりに「覚え書き」を書き込んでいきました。あとはアニメーションでは表現できなかったところを、「こんなギミックや表現があったらおもしろくないですか?」という部分の話をしたりしますね。METAL BUILDは立体物の中でも、コスト面でも強度面でも「無理してナンボ」のものらしいので、言えることはなるべく言うだけいっておこうと思っていて(笑)。
――重田さんがそうした提案をした中で、印象に残っているアイテムはありますか?
重田氏:やはり「フリーダムガンダム CONCEPT2」はあえて「2」を作るというところで、「1」のときにできなかった部分を含めてかなり細かい部分まで拾ってくれていて、完成品を見て「これを作りあげるのは大変だったんだろうな」と感嘆しました。たとえばウイングなんですけれど、あれは左右それぞれのウイングの間に挟まるカタチでプラズマ収束ビーム砲があって、設定ではウイングを展開する前は2枚のウイングでキッチリと挟まれているんですね。画面上で設定通りに描くとちょっと見た目が重くて、絵的にも躍動感が出しずらいんですよ。なので「アニメ本編では微妙にハの字にウイングを広げて描いているんです」という話を開発担当の方にしたら、「やってみます!」といってちゃんと開くようにしてくれました。後日どうだったのかを聞いたら、強度の関係でかなり大変だったとかで。完成品を見てお客さんがその部分を「よくできている!」と感じてくれたかどうかはわかりませんけれど、METAL BUILDシリーズに関しては自分よりもコレクターズ事業部の方々の熱意のほうがはるかにすごいですね。
――なるほど。それでは「METAL BUILD」シリーズで監修をされた機体全体だと、どれが印象に残っていますか?
重田氏:そうですね……。デスティニーは企画の初期段階で「アニメ本編のシンのイメージ優先でやったほうがよいんじゃないか」ということが決まって、リアルな兵器としてのモビルスーツというよりは、キャラクターのイメージに寄った方向になりました。アニメ本編の作業中に「これがシンの次の機体です」と設定を見せられたときは、「これは絶対に主人公機にはならないだろうな」と思いましたし、案の定そうだったんですよね(笑)。放映後にシン・アスカというキャラクターのイメージが固まっているところに出すMETAL BUILDでは、シンの憎悪が増幅されていった部分を体現したものがいいんじゃないだろうかと。デスティニーのデザイン自体が悪魔のようなデザインなので変にメカとしてのリアル志向にせずに、「ウイングは飛行するためのリアルなウイングではなくて、あの不気味な感じのする曲面構成がいい雰囲気を出している」「マスクの切れ込みはカメラが引いてみたときに血の涙が流れているように見せたいので、なるべく切れ込みを深くしてもらえないか」というようなことを監修のときにお話したと思います。
方向性が決めやすかったデスティニーとは逆に、ストライクはキャラクターが意外と薄いので「兵器として捉えたメカニカルな感じの方がいいのではないか」とスタート段階でのコンセプトワークにずいぶんと悩みました。完成した商品としてはとてもよくできていると思うんですけどね。ストライクのデザインって上半身ブロックの胸の上面なんかは真っ平で抑揚がないし、デザイン上のフレームが装甲上に露出はしてるし、前腕なんかも4面のブロックが微妙にデザイン違いになっていて、描くのが大変なんですよ。自分としてはストライクって描きずらいのであまり印象がよくないんです。本編作業中に後半キラがフリーダムに乗り替えたときは「ああ、よかった」とか思いました(笑)。ただ、個人的な好き嫌いとは別に作画作業上でたくさん描いたので苦労も含めて愛着はありますよね。ちなみに同じような理由でアスラーダにもすごく愛着がありますね。
――あらためて「METAL BUILD」シリーズの監修作業を振り返ってみていかがでしょうか?
重田氏:監修物に自分の名前がつくことにいかほどの価値があるのかわからないんですけれど、自分としては「METAL BUILD」シリーズの監修をずいぶんとやらせてもらったおかげで、『SEED FREEDOM』や『コードギアス 奪還のロゼ』の作業で3Dモデルチェックのときに、たくさんの経験則になっていてずいぶんとやりやすかったですね。立体物と3Dモデルとの違いはありますけど、基本的な構造はほぼ同じですから。「METAL BUILD」の監修作業って、基本的にはモビルスーツとしての方向性とイメージを示していて、本業での「原画を作監として修正を入れて別の絵にする」ようなことまではしていないんですけれど、アニメ本編と寸分たがわずにそっくりのモビルスーツかというのとは別に、立体物としての独特の魅力というものがあればいいのかなと思っています。今回の画集の立体物監修のページをガンプラ好きな方々が見て、「そのとおりにやってみよう」と思うのか「いや、これは嘘だ」と思うのか、そのあたりのリアクションは聞いてみたいところではありますね。
――ありがとうございました! 「重田智WORKS メカニカル画集」は、11月20日(木)発売予定です!
DATA
重田智WORKS メカニカル画集
- 価格:4,290円(税込)
- 発売日:2025年11月20日(木)
- 仕様:A4/176P/フルカラー
- 発行元:KADOKAWA