「ガンダムSEEDシリーズ」や「サイバーフォーミュラシリーズ」で知られるアニメーター・重田智氏の画集出版記念トークショー&サイン会が開催!「METAL BUILD」シリーズ監修についてのコメントも掲載!【イベントレポート】
9月20日(土)、アニメイト秋葉原にて「ガンダムSEEDシリーズ」や「サイバーフォーミュラシリーズ」、『GEAR戦士電童』などで知られるアニメーター・重田智氏の初画集「重田智WORKS メカニカル画集」出版記念トークショー&サイン会がおこなわれました。本稿ではトークショーの様子をレポートするとともに、重田氏にうかがった「METAL BUILD」シリーズの監修についてのコメントも掲載します!
トークショー開始前にはまず、重田氏の経歴を紹介。今回の画集には、そのキャリアの中でも代表作である「ガンダムSEEDシリーズ」、「サイバーフォーミュラシリーズ」、『GEAR戦士電童』の3作品が収録されることが伝えられ、トークショーはスタートしました。
司会をつとめたアニメ評論家・藤津亮太氏から、まず最初に「自身の画集をつくらないかとオファーされたときの心境」を問われると、重田氏は「正気の沙汰じゃないなと思って。アニメーターが自分の画集を出したいといって出せるものじゃないだろうし、作品としての画集ならわかりますけど、自分の名前で括ったものが出版されるなんて全く想像していなかったですね。どこの大御所なんだよとか思って(笑)」とコメント。会場に集まったファンからは、笑い声があがっていました。
そして画集の内容が話題になると、重田氏は「そもそも自分が他のアニメーター諸氏の画集をあまり見ていないものだから、こういった画集がどのような誌面構成になっているのかがわからなくて。版権(イラスト)の収録には違いないんでしょうけれど、はたしてこの画集を観るお客さんとしてはなるべくたくさんの点数が掲載されていたほうが良いのか、または違う切り口の構成の方がおもしろいのか、どちらなのだろうと考えましたね。それで、版権がたくさん載っているものをパラパラ眺めるだけというのもつまらないんじゃないかなと思ったので、点数もたくさん掲載しつつできるだけそれぞれの版権に対するコメントや修正原画も掲載することにしました。本来の仕事である作画作業とは別に、バンダイ コレクターズ事業部や、メガハウスの立体物監修もしているので、その資料も掲載することにしました。大きく分けるとその3部構成ということですね」とコメント。
さらには「ガンダムSEEDシリーズ」の福田己津央監督、師匠であるアニメーターの内田順久氏、画集のカバーイラストに関わった色彩設計の安部なぎさ氏、特殊効果を担当した八木寛文氏などとの対談も掲載される旨が触れられ、話題は画集の表紙イラストへとうつっていきました。
「ガンダムSEEDシリーズ」、「サイバーフォーミュラシリーズ」、『GEAR戦士電童』の代表3作品を組み合わせた表紙イラストについて、どのような経緯で内容が決まったかを問われると、重田氏は「版権発注の場合『こういう感じで描いてください』というオーダーがあるんですけど、今回は編集サイドから『自由に描いてください』といわれてしまって。(3作品の主人公機である)フリーダムとアスラーダと電童を描くというのも、ありがちかなと思って」と苦笑い。藤津氏から「それだけだとちょっとつまらない感じがした?」と問われると、「それじゃいつもの通りではジャスティスや凰牙がかわいそうだなとか思って(笑)。なので完成した表紙を見てもらうとわかると思うんですけど、いつもレイアウトで良い位置に置かれない機体が両サイドの良い場所に大きく描いてあるんですよね」とコメント。さらに「ロボットメインでならなんとかそれらしい表紙にできると思うんですけど、サイバーマシンも入れないわけにはいかないじゃないですか。ところがこれが思った以上に食い合わせが悪いんですよ。自分で描いておいてなんですけれど『サイバーマシンのサーキットを巨大ロボットが覗き込んでいる』みたいになってしまっていて。一体どういう画になっているんだと(笑)」と続け、笑いを誘っていました。
さらに表紙イラストの話は続き、より実作業的な内容へ。版権イラストの場合、レイアウトや線画を重田氏が描き、のちに別の方が着彩や仕上げなどの処理を担当するという一連の行程が説明され、「レイアウトのラフを考えているときは、紙に鉛筆で描いているので良くも悪くもイメージはモノクロなんですよ。フリーダムやジャスティスが『こんな色だ』というのは頭の中にあるんですけど、実際に仕上げで塗られたものを見たときの感覚というのはやはり別で、着彩やCG加工処理の段階で想定していなかった仕上りになることも毎回だったりしていて、『自分としてはレイアウト段階でそう思っていなかったんですけど、こちらの処理の方がいいです』となることが多々ありますね。実はそれを元々、多分に期待しているところもあって、自分の版権イラストは着彩やCG加工処理の方たちのポテンシャルとチームワークがあってこそできあがっているものだと思っています」と重田氏は話していました。
色彩の話題になり、藤津氏に「(実際に絵に色をつける)色彩設計の方から、『ちゃんとアニメーターの方から色の指示を出してもらわないと困るけど、重田さんはものすごく丁寧に指示を書きこんでくださる』とお話を聞いています」と振られると、重田氏は「色彩設計の方からあまりありがとうといわれたことはないんですけど、そういった設定は書いておいて当然ですから」と照れ笑い。あるとき色彩設計の方から「他の方が描いたガンダムの版権でガンダムのヒジの関節ブロックと装甲の部分の塗り方の指示がまったくなくて、どう塗ったらいいのかわからない」と相談されたというエピソードを挙げ、「アニメーターって描いている自分がわかっているのだから仕上げ担当の方もわかっているだろうと思って、きちんと塗り分けの指示を書かなかったりするんですよ。それで、仕事中に他の版権の作画担当者が『あなたの指示はわかりにくいです』なんて苦情を受けているのを見たら、自分は丁寧に書こうと思いますよね」と説明。
さらに藤津氏から「だからこそ、本編で登場しないようなパーツを描いたときには、それがなんであるかわかるようにしなければいけないということですよね」と返されると、「そうですね。それに近いお話でいうと、自分の描いた「SEED」系の版権ではモビルスーツの関節パーツのところには金色に塗り分けられたブロックがあるんですよ。あれはアニメ本編にはないもので、『関節ブロックが画面でそれなりに大きく見えたときにグレーの単色だけだとせっかくの版権で情報量が少なくてもったいないかな』と、自分の版権イラストにだけに勝手に入れているものなんですね。ただ、ロボット魂のデスティニーインパルスのパッケージ版権作業では『商品ではここに金色のブロックが入っていないので、なおしてください』と逆にいわれてしまって。勝手にやっていたことなので、本当にすいませんという感じでしたね(笑)。ちなみに、あの金色のブロックは「サイバーフォーミュラ」のアスラーダのホイールと同じ色で指定をいれています」という興味深いエピソードを披露していました。
そしてトークテーマは「ガンダムSEEDシリーズ」に。いわゆる「SEEDポーズ」に話題がおよぶと、重田氏は「(SEEDポーズという言葉は)一体誰が言い出したのかと。自分はロボットアニメ的な“らしさ”として普通に描いているつもりなんですけれどね(笑)。「SEED」ではかっこいいポーズでという発注が多いんですよ。それはいわゆる『SEEDポーズ』的なものを指していると思うんですけれど、発注側は『SEED』や『DESTINY』にそうした印象的なイメージを持ってくれているのはわかるんですけど、そんなふうに頼まれてしまうとやっぱりいつもと違う絵を描きたくなってしまうんですよ。「SEED」の世界観の中でのモビルスーツの描写って、静と動の両方のかっこよさがあると思うんですね。なので、版権イラストではアニメ本編とは違った雰囲気の、いつもは描けないような表現ができないかなと思っています」とコメント。
また、『ガンダムSEED』HDリマスターのBOXパッケージを手掛けたときの話題になると、「このときは『自由にお任せします』という発注だったんです。BOX-2では『ラゴゥは本編で一回しか活躍できなくて可哀想なので、こいつをなんとかしてあげたいな』とか思ってしまって。なのでレイアウトとしては、ラゴゥを手前に奥にランチャーストライクとしているんですけど、普通は逆ですよね。本編では昼間の砂漠での戦闘シーンなんですけど、ピーカンの青空だとちょっと緊迫感に欠けてしまいそうだったので、ムード重視で背景は巨大な満月の夜景に変更しています。本編準拠というよりは、版権としての絵面のおもしろさで決め込んでいるところはあります」という制作エピソードを披露。続けて「ガンダムでおもしろいと思えるのは装備換装できるところなので、版権作業の際はあえて本編合わせにはしない武装として、世界観のバリエーションが広がって見えるようにはしています。発注側から『いくらなんでもやりすぎです』といわれない限りは、設定準拠の装備じゃないほうが世界観が広がっておもしろいんじゃないかと思っていますね」と話していました。
続いてトークは「サイバーフォーミュラシリーズ」へ。画集でアスラーダG.S.Xのマリンモードとラリーモード(ともにプラモデルのパッケージイラスト)という渋めのチョイスが大きく取り上げられている点が話題に上がると、重田氏は「(プラモデル化することを聞いたときは)ホントに出すの⁉ と驚きましたね。自分はテレビシリーズの方は参加していないので(OVA『新世紀GPXサイバーフォーミュラ11』から参加)、DVDを見返して『こんなシーンだったか』と思いました。このイラストは基本的に本編のシチュエーションにあわせて描いていますので、画面ではちょっと見づらいんですけど、助手席側にぐったりしたペイが乗っています」とコメント。
そして同シリーズの福田己津央監督が「重田さんの描くピットの雰囲気が良かった」と話していたことに藤津氏がふれると、重田氏は「自分ではね、かなりがんばって描き込んで画面の情報量を上げていたつもりなんですよ。でも、観ている方はレースシーンの方にしか興味がないようで(笑)。こういったピット内の絵ってある種の書割みたいなもので、ピット内の美術設定があって作画する側はみんなそれを見て描くものだから、結果いつも同じ絵になっちゃうんですね。これが予選が始まる前なのか、決勝が終わったあとなのかとか、お金持ちで余裕のあるチームなのかとかで、ピット内の備品の量、工具やBOXの散らばり具合とかがリアリティになるんじゃないのかなとか、そういうところに気を配って描いていたつもりです」と説明されていました。
また、90年代のOVAの勢いについての話になると、「90年代にOVAが一気にきたときって、今思ってみれば作っている側も正気の沙汰ではなかったというか、テレビではやれないことをなんでもやってやろうみたいなところがあったんじゃないかと思いますね。当時のテレビシリーズってかなり規制が厳しくて、1話での作画(動画)枚数は3,500枚でとか、予算の問題から仕上げでは影はつけられませんとかありましたから」と、その渦中にいた人ならではの述懐をしていました。
トークショーの終盤では『GEAR戦士電童』に触れ、重田氏は「電童って作品としても版権イラストが少なくて、自分が担当した版権もほとんどないんですよ。放送終了後に2002年版カレンダーが出たんですけど、知っている方います?」と、会場のファンに問いかけ。さらに「それがムック本とかにも収録されていないようだったので、自分で担当したところを今回の画集に収録してもらいました。カレンダー自体を全部見たいという方は、バンダイナムコフィルムワークス事業部へ御意見を出してあげてください(笑)」と語り、最後に画集出版への感想として「作品タイトルや、デザイナーの方でしたら画集を出せるというのもわからなくはないんですけど、いったい自分は何様なんだろうかと(笑)。変な言い方になるかもしれませんけど、アニメーターって作品作りの中での歯車みたいなところがある仕事だと思っているので、そこをクローズアップしてくれるのはとてもありがたいなとは思っています。画集には楽しんで描いた版権イラストをたくさん収録してもらっていて、それぞれの版権になるべく多くのコメントも収録させてもらっています。観て読んだ方が喜んでくれると良いなと思います」と話し、トークショーは閉幕。トークショー後にはサイン会が開催され、重田氏はファンひとりひとりにサインを手渡し、一緒に写真を撮っていました。