別の職員が「不適切」と感じ、上司に報告

主に議論を進行したのは幹部のひとり。進行者の発言は平山さんと代理人を驚かせる。

「性的虐待が行われていたことに気づけなかったとし、自分たちも被害者だという空気感を出していました」

だが、平山さんの友人は、加害者の平山さんへの距離の近さに不審を抱き、施設長に訴えていた(第1回参照)。また、加害職員と平山さんの距離感を不審に思う職員がいた。職員は加害者について上司に報告し、対応を求めたものの、対策は取られなかった。

面会の席上、事務局長の発言や態度に感情が乱れた平山さんと事務局長の間で言い合いが起きた。

加害者が逮捕されたとき、平山さんは、施設側から謝罪があると思っていた。しかし連絡はなく、刑が確定した後、井上弁護士が慈愛園に問い合わせをし、上述の面会の実施となった。そして面会は破談に終わる。

無関係の子たちを守るための顔出し

今年6月、提訴と同時に開いた記者会見で、マスクを着用するだけで顔を隠さなかったのは、平山さんの強い希望による。顔を出しての会見には誹謗中傷を受けるリスクが生じる。井上弁護士、そしてともに代理人を務める黒田裕美子弁護士の2人は、デメリットについて時間をかけて説明したが、平山さんの「顔出し」の意志は変わらなかった。

会見で理由を問われた平山さんは、「性被害を受けたことを隠さなくてはならないという世の風潮はおかしい」「被害が繰り返されないために強く訴えたいと思った」と語った。

平山さんには顔出しで会見を行った理由がもうひとつあった。

「児童養護施設で性被害に遭うということはあまり公にされません。私が顔を出して施設名を明らかにしないと、施設にいた無関係の子たちが、あの子じゃない? などと勘ぐられて、憶測でSNSに書き込みをされたり誹謗中傷されたりする可能性がある、それを食い止めたかった」

記者会見で並ぶマイク
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平山さんへの取材後、慈愛園事務局に質問状を送り、11月7日付で代理人弁護士から回答書を得た。