「封印破った」高市首相 海外メディアが日中関係悪化を次々報道、地政学リスク警戒
攻勢強める中国、実体経済に影響
この問題と並列して語られがちなのが、高市首相の保守的政治思想や第二次世界大戦時における日本の侵略行為に対する説明だ。中国政府はそれらの点を強調しながら、より過激な言葉を用いて高市首相に対し、発言の撤回と修正を求めている。 発言から10日を超えた現在も収束の兆しはなく、影響は金融市場だけでなく実体経済へとにじみ出てきた。 香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」などは18日、独立系アナリストの話として「問題の影響で、全体の約32%に相当する49万超の訪日航空券チケットのキャンセルが発生した」と伝えた。また、中国で大人気の『クレヨンしんちゃん』や注目を集めていた『はたらく細胞』の映画公開が延期された。中国政府系メディア・人民網によると、すでに公開され好評を博していた『鬼滅の刃』劇場版も、高市首相答弁を機に動員数が大きく減少しているという。 追い打ちをかけるように中国政府は19日、「福島第1原発の処理水のモニタリング」を理由に日本産水産物の輸入手続きを停止し、日本産牛肉の輸出再開に向けた政府間協議も中断させた。 中国はこれまでにも、尖閣情勢などをめぐり日本に対して通関規制の強化やレアアースの輸出規制などをおこなってきた。特に、2012年の日本政府の尖閣国有化時は中国全土に反日デモが拡大し、日本車の不買運動や日系店舗の破壊など、日本経済全体に大きな影響が出た。 中国側の要望で延期されることになった、日中関係悪化の際の貴重な対話の場「東京-北京フォーラム」の主催者は、「尖閣国有化があった2012年を上回る、はるかに強いメッセージがある」と懸念を述べた。
支持の米、静観の印韓、警戒の新
問題が長期化すれば2012年を上回る状況に発展しかねず、経済だけでなく周辺地域の地政学リスクを大きく引き上げる可能性がある。日本国内の関係者が事態の拡大を望んでいなくとも、こうした懸念は海外で急速に広がりつつある。反応は大きく、危険視、静観、中国批判に分かれている。 英ロイター通信は「高市首相は台湾についての政治的封印を破った。どんな外交努力をしようとも、それを覆すことはできない」とするコラムを掲載。日本企業の中国事業が影響を受ける可能性が高まるとともに、軍事力増強を目指すリーダー同士によって日中の姿勢が強硬化し、地政学リスクの上昇は避けられないとする見解を伝えた。 印紙「タイムズ・オブ・インディア」は「アジアの2大大国であり経済的にも依存関係にある日中は、長年続く不安定な関係性に捕らえられたままだ」とする記事を掲載。日中の関係悪化がインド太平洋地域全体に波紋を広げていることを伝えるとともに、両国の間でインドは慎重に行動しなければならないと指摘した。 韓国、シンガポール、アメリカ、台湾メディアの反応は?【続きはこちら】に続く
COURRiER Japon