時間は数分ほどさかのぼる。
「オラオラオラ―!今日こそこの学校を頂かせてもらうぜ!」
「今日はいつもより大勢来ているからなぁ!テメェらなんか一捻りだー!」
突如としてアビドス高等学校に襲来した武装組織『カタカタヘルメット団』。
キヴォトスでは珍しくない不良や退学者が徒党を組んだ存在である。
環境の良い拠点を得ようとしてかしょっちゅうアビドス高等学校の校舎の占拠を狙い銃撃戦を仕掛けている。
「うへー…本当に大勢でやってきてるよ~…。」
「シロコちゃんがまだ登校していないときに…!」
「むしろ、いつもよりかなり遅いです…!まさかもうヘルメット団に…!」
「バカ言ってんじゃないわよ!シロコ先輩があんな奴らに負けるわけないじゃない!」
そんなヘルメット団の銃撃を遮蔽物で防ぎながら応戦するアビドス高等学校の制服を着た四人の少女たち。
個々人の実力なら軽くヘルメット団構成員を上回るがこうも数の差があるとなかなか反撃に移れない。
「まぁ、いつも通りおじさんの盾に隠れながらじっくり切り崩してこうよ~。」
「そうね、時間はかかるだろうけどそれなら負けはしないわ!」
「でも、ホシノ委員長…。それだとこちらの弾の消費が…!」
「『連邦生徒会』からの補給もあと何回受けられるか分からないですし…。」
なにより、今のこの学校には物資の余裕が少ない。
キヴォトスにおける学校間の簡単な勢力のパロメーター、それが在校生の数だ。
在校生が多ければそれだけこのキヴォトスを管理する『連邦生徒会』から補給物資が受け取れる。
つまり、ここにいないシロコを含め五人しか在校していないこのアビドス高等学校はその補給物資の量が絶対的に足りない。
いや…むしろ連邦生徒会からしてみればもうこの学校に物資を送ることすら煩わしいのかもしれない。
それでも現状を打開するには戦うしかない。
「んじゃ~ノノミちゃん、援護よろしく~。」
「はい、お任せください!」
この中で一番小柄な桃色の髪をした少女が傍らに置いたバリスティックシールドを展開して仕掛けようとする。
その時だった。
『Go!』
「「「「え?」」」」
どこからともなく聞きなじみのない大人の男特有の声が聞こえてきた。
―――――――――――
――――――
―――
「Go!」
合図を飛ばすや否や、ネイトは校門の物陰から飛び出す。
数人のヘルメット団がその声に気が付き背後を確認しようとする。
その瞬間、左腕のPip-Boyが起動。
ネイトが感じる時間がまるでスローモーションのように引き延ばされる。
(手始めに五人、それくらい倒せば行けるだろう。)
そう思考しながら素早く五人のヘルメット団に向けロックオン。
ネイトが構える銃から赤い閃光と光線が迸る。
『AER-9レーザーライフル』、核融合小型電池『フュージョンセル』を電源としレーザーを放つ戦前から戦後の連邦まで幅広く使われたエナジーウェポンだ。
ネイトのそれはエネルギー出力を上げ連射できるようカスタマイズされてある。
「「「「「ぎゃん!!?」」」」」
ロックオンされたヘルメット団の頭部やバイタルパートにレーザー直撃。
光線とはいえ連邦では数発で人を灰の山に変えてしまうエネルギーだ。
その五人は耐えきれず意識を刈り取られ地面に伏せる。
そばで見ていたシロコからもまさに一瞬の出来事であった。
『V.A.T.S.』、正式名『Vault-tec Assisted Targetig System』。
戦前の大企業『Vault-tec』社が開発した戦闘補助システムだ。
Pip-Boyに内蔵されており装着者の神経に作用し猛烈な集中力を与え標的の各部位へのピンポイント攻撃を可能とする。
武器重量や装着者のAPによって一度の使用回数は異なるがその回数はほぼ一方的な攻撃が可能となる。
「ッ!」
そんなことはシロコにはまだ理解できないがともあれ敵の先鋒を崩せた。
ネイトの指示通り、言われた遮蔽物に向かい一気に駆け出す。
「…ヤロー、まだ外にいやがったのか!?」
意識外の背後からの奇襲に若干判断が鈍るもヘルメット団は素早くネイトたちに応戦しようと銃を向ける。
が、一瞬遅かった。
V.A.T.S.による射撃後、ネイトはすぐさま次の行動をとる。
再び手にあるものを出現させ、応戦しようとした近場のヘルメット団のグループに投擲。
彼女らには飛来するものが何かすぐにわかった。
(か、火炎ビン・・・!?)
今自分たちが所持している手榴弾よりも原始的なものだ。
だが、それが自分たちの足元に落ちた瞬間…
「「「ぎゃあああああ!!?」」」
一気に増大した炎に飲み込まれそのグループはもんどりうって地面に倒れた。
《ん…ネイトさん、遮蔽物に到着した。》
「よし、俺もエントリーする!援護頼む!」
《了解。》
被弾面積を減らすよう少し屈みつつレーザーを連射しながら校庭内に突入。
「な、なんだあのジュッギャンッ!?」
「くそ、横を取られっがはっ!?」
敵側方に展開できたシロコの援護も刺さり、反撃も少なくネイトも横倒しされたロッカーの陰に入り込めた。
「シロコ、次の合図でそのまま行進射撃しながら生徒たちと合流を図れ!俺も掃討しながらそっちに向かう!」
《分かった。…気を付けてね、ネイトさん。貴方は普通の人、私達みたいに気絶じゃすまない。》
「心配するな、一二発食らったくらいじゃ俺は止まらない!」
無線で言葉を交わしつつレーザーライフルのセルを満タンのものに交換しながら、
「悪いな、借りるぞ。」
足元に転がるヘルメット団のアサルトライフルを手に取る。
(おいおい…。SIG556なんてもん持ってんのかよ、ここの不良は…。)
連邦だと粗雑なハンドメイド銃『パイプガン』が彼女らに当たるポジションの敵性勢力『レイダー』の主武装だった。
対するヘルメット団は安価(ネイトの感覚で)とはいえしっかりとしたアサルトライフルが主武装。
(とんでもないところだな、キヴォトス。)
改めて超銃社会だということが分かり若干げんなりしつつも手は動かしマガジンも確保、
「よし、Move!」
無線で合図を飛ばし同時に身をさらし前進を始めるネイトとシロコ。
「あギャ!?」
「がっ!?」
「な、なんだあいつ!?普段より動きや狙いがいいぞ!?」
「あの黒服の野郎もなんて強さだ!?」
言葉を交わさずに目の前の敵に弾丸を叩き込みつつ互いに援護しあいつつどんどん前へ進む二人にヘルメット団にも動揺が走る。
たしかに彼女たちの知るシロコは紛れもない強者だ。
だが、今日の彼女は普段と比べてもなおその強さに磨きがかかっている。
ゆっくりではあるが歩みを止めることなく、それでいてどんどんヘルメット団を撃ち抜いていく。
ネイトもライフルを高速タップで連射しながら立ち塞がるヘルメット団を次々にノックアウトしていく。
「チクショウ、撃ちまくれ!あの野郎をこれ以上好きにさせるな!」
「「「オウ!」」」
それでも一部のヘルメット団は果敢に反撃を開始、ネイトに向け制圧射撃を行う。
「おっと!」
その動向に素早く気付いたネイトは手近な遮蔽物に飛び込み弾幕を回避。
「いまだ、お前ら突っ込め!」
「「「うおおお!」」」
その遮蔽物に3人のヘルメット団が援護を受けつつ突撃。
(なるほど、ド素人というわけじゃないな。)
銃声に紛れながらヘルメット団の声を聴き分けるネイト。
接近する仲間への誤射を防ぐために制圧射撃が途切れた瞬間、
「ッ!」
「こ、こいっ?!」
返す刀で接近するヘルメット団に肉薄。
突き出された銃に向け蹴りを放ち銃口をそらし、
「むん!」
「ギャンッ!?」
自らのSIG556のストックでバイザーを粉砕する勢いで殴打。
「次っ!」
「あばばばばッ!!?」
先鋒が潰され浮足立つヘルメット団に対し続けてフルオートの腰だめで発砲。
全身まんべんなく弾丸が叩き込まれて二人目がダウン。
ちょうどそのタイミングでSIG556が弾切れに。
「馬鹿め!弾が…!」
「返すぞ!」
「ぐへっ?!」
三人目が射撃を加えるよりも早く弾切れのSIG556を投げつけ体勢が崩れたところを間合いを詰め、
「そらよ!」
「あぐっ!?」
頭をつかみ勢いよく近くにあった跳び箱の角に叩きつける。
三人ダウンしたのを確認しネイトは再び別の遮蔽に飛び移った。
「さ、三人とも叩きのめしやがった!」
「くそっとにかく撃ちまくれば・・・!」
格闘戦で三人が負けたことに動揺しつつも再び制圧射撃を射かけようとするヘルメット団だが、
《ん…グレネードいくよ。》
「「「あぎゃあああああ!!?」」」
その隙にシロコがネイトに貰ったフラググレネードを投擲。
不意の一撃に回避も間に合わず吹き飛ばされた。
「ナイスだ、シロコ!」
《ん…ネイトさんも強い。今度教えて。》
「くそが、奴らバケモンか!?こっちも手榴弾を使え!」
「オウ!」
お返しと言わんばかりにシロコに対して手榴弾を投げようとピンを抜くヘルメット団。
ネイトの物とは違い対キヴォトス人用に威力が増加している代物だ。
ネイトはもちろんシロコでも気絶で済むとはいえまともに食らえばただでは済まない。
「行くぞ!」
勢いよく腕を振るい手榴弾を投擲・・・しようとした瞬間、
「そういうのはな、もうちょい静かにやるもんだ。」
ネイトが懐から長いサプレッサーが装着された手に収まるほどのハンドガンを取り出しつつ『V.A.T.S.』を起動。
『デリバラー』、隠密作戦向けに設計された高い消音効果とV.A.T.S.との高い親和性を誇るハンドキャノンだ。
狙いはヘルメット団ではなくその手に握られた手榴弾に照準を定め、
(クリティカルも持って行け!)
V.A.T.S.に内蔵された必中機能『クリティカル』を一つ発動。
放たれた弾丸はまるで吸い込まれるように手に握られた手榴弾に向かい、
「「「「ぎゃあああ!!?」」」」
撃ち抜かれた手榴弾は暴発、周囲にいたヘルメット団もろとも吹き飛んだ。
「Foo!ジャックポットだ!」
《ナイスショット、前進するよ。》
「よし、このまま押し切るぞ!」
邪魔を互いに排除し再び前進を再開するネイトとシロコ。
「シ、シロコ先輩ってあんなに早く動きながら銃あてれたっけ!?」
「す、すごいです!どんどんヘルメット団を倒してますよ!」
「一緒に来ていた見たことのない銃を使うあの方もなんて強さなんですか…!」
「うへ~投げられる寸前の手榴弾撃ち抜くなんて曲芸撃ちはおじさんにはできないなぁ…。」
アビドス高等学校の生徒たちは一連の流れるような連携に見入っていた。
先述の通り、このメンバーの中でもシロコは強者、ここにいるメンバーの中でNo2に入る実力者だ。
それを加味しても初めて見るあの男との連携が堂に入りすぎている。
明らかな即興コンビだというのにまるで長年背中を預けあってきた熟練の相棒のようだ。
「こりゃあ、おじさんも後輩やあの人には負けちゃいられないねぇ。」
「あ、ちょっと委員長!?」
そんな二人の戦闘光景を見て少女の対抗心に火がついた。
後続を任せていた猫耳の少女を置き去りにして戦場に躍り出る。
「くそ、出てきたぞ!」
「遅い遅い~。」
「あべしっ!?」
手近にいたヘルメット団に向け未展開のバリスティックシールドを叩きつけ気絶させ、
「そ~れまだまだ行くよ~。」
「うわばっ!?」
続けざまに両手で構えるセミオートショットガン『ベレッタ1301』をぶっ放し一人沈める。
「うりゃ!」
「たわばっ!」
「それ!」
「ひデブ!?」
バリスティックシールドによる打撃とショットガンのコンビネーションで少女は次々にヘルメット団を沈めていく。
「ん…皆けがはない?」
「あ、シロコ先輩!」
少ししてシロコが隠れていた三人と合流。
「遅れてごめん。」
「いいんですよぉ、そんなこと。」
「先輩こそ大丈夫ですか!?」
「むしろ普段より疲れてないくらい。」
あれだけの大立ち回りをしたというのにシロコの息はそれほど上がっていない。
それほどストレスなく戦えていたということだろう。
「で、あの一緒に来た男の人は一体何なの!?」
「ネイトさんはお客さん、砂漠を歩いててここに用があるって一緒に来た」
「ネイトさんっていうんですね…。…ってアビドス高校にですか!?」
「ん…誰かに頼まれてきたって言った。どうやら外の人、キヴォトスのことも知らなかった。」
「え?キヴォトスのことを知らないって…どういうことですか?」
シロコから聞かされるネイトのことに三人は唖然とする。
確かに外からやってくる人間は珍しい。
だがそれでもキヴォトスのことを『知らない』ということは引っかかる。
一方シロコが合流するほんの少し前、
「そ~れ!」
「てはっ!?」
飛び出した桃色の髪の少女はヘルメット団をダウンさせつつどんどん前進。
「させさて~だいぶ減らせてきたかな~。」
先ほどのシロコとネイトの戦闘も合わせると最早ヘルメット団は数え切れるほどしか残されていないだろう。
油断するわけではないがだいぶ余裕が生まれてきた。
すると、
「お~い。」
傍らの遮蔽物のロッカーの向こうから少女に呼び掛ける『大人』の声が聞こえてきた。
ほぼ反射と言っていいだろう。
「ッ!?」
少女は遮蔽物越しにショットガンを乱射。
チューブ内に残っていた残弾全てだ。
「あ…!」
弾切れとなりスライドがストップする音を聞いて我に返った。
この場で男性の声がするということはシロコが連れてきたあの人物に他ならない。
戦いの最中見ていて気が付いたが彼にはヘイローがなかった。
つまりキヴォトス人ではない。
そんな人に散弾をこれでもかと見舞ってしまった。
見るとロッカーには拳大の風穴があいてしまっている。
「そんなッ…どうしよう…!」
最悪の事態が少女の脳によぎった。
すると・・・
「…おい、そこにいるのはここの学校の生徒か?」
再び先ほどと同じ声音でロッカーの向こうから声が聞こえてきた。
「えっ…そ、そうだよ…。」
「よし、そっちに行くから今度は撃たないでくれよ。」
少女からの返答を聞きロッカーから姿を現すネイト。
「お、いたいた。いやぁ、驚かせてしまってすまない。」
「嘘…!?」
ようやくシロコ以外の生徒と対面でき穏やかな表情を浮かべるネイト。
一方少女は信じられない物を見る目でネイトを見ていた。
確かに自分は発砲したはず。
自分の攻撃はかなり貫通力があることは分かっていた。
だが…
(た、弾が上着で止められている…!?)
見ると先ほど放ったであろう夥しい散弾がネイトのコートの上で鈍い輝きを放っていた。
しかも、ネイト自身はいたって平然としている。
防弾できたとしても衝撃で悶絶するのが普通なのに。
(防弾スーツ…いや、こんな薄手でしかもノーダメージで済む防弾装備なんて『ミレニアム』でも…!?)
と、自分の持つ知識を総動員してこの状況を解析しようとする少女だが…
「…ちょっと?」
「ッ!?」
「大丈夫か?」
いつの間にか自分の目線まで屈み声をかけるネイトの呼びかけに意識を引き戻され、
「…うん、おじさんは何ともないよ~?」
普段通りの雰囲気となり答える。
「そうか、それはよかった。」
「さっきは撃っちゃってごめんねぇ。ちょっと驚いちゃった。」
「気にしないでいい。弾は止まって無傷だし驚かせた俺が悪いんだからな。」
「…それで貴方は…。」
一先ず互いに落ち着いたので少女がネイトに質問しようとした…その時だ。
「テメェら、よくも手下ども全員やりやがったな!!!」
「「!?」」
二人の横から怒鳴り声が響く。
そこには今までのヘルメット団とは違い赤いセーラー服とヘルメットにガスマスクを装着したヘルメット団の生き残りがいた。
「こうなりゃてめぇらだけでも!」
そういい、最後の生き残り『ヘルメット団幹部』は自らの得物、『M249MINIMI』を構える。
(ヤバッ…盾を…!)
少女は来るであろう弾幕を防ぐためバリスティックシールドを展開しようとする。
自分は気絶で済んでもこの大人はきっと無事では済まない。
だが、
「死ねぇぇぇぇぇ!!!」
(ダメ、間に合わな…!)
すでにヘルメット団の指はトリガーにかかっている。
展開は間に合わない、ならばとネイトを護るため遮蔽物に押し戻そうとした。
その時、
「来い!」
「え…!?」
何とネイトが少女の体を自らのコートの内側に引っ張り込んだ。
次の瞬間、ヘルメット団幹部の弾幕が襲い掛かる。
だが、
「うぐぅ…!」
「ば、馬鹿な!?徹甲弾なんだぞ!?」
ネイトは若干苦悶の表情を浮かべるも弾丸はコート表面で食い止められ二人には届かない。
そんな凄絶な光景のさ中少女の胸にある光景が郷愁する。
「…先輩?」
口をついて出た言葉だった。
「な…なぁ一つ聞くがそれのバリスティックシールドは防弾仕様か?」
さすがにこの状況ではその耳には届かなかったのか自らの背中で弾丸を受け止めながら少女に質問するネイト。
「う、うんッそうだよ!」
「じ、じゃあすまない。それを広げてスイッチしてくれないか?さすがに背中が痛い…!」
「わ、分かったよ!」
ネイトの頼みをすぐに聞き少女は盾を展開する。
(そうだ…ッ!何を呆けている、『小鳥遊ホシノ』…ッ!)
決めたではないか。
(もう何も…決して零しはしないと…!)
あの時、大切なあの人が喪われたとき心に誓ったではないか。
(この盾で…この盾に誓って…!)
あの人の代わりに…あの無鉄砲で校内随一の馬鹿で大好きだったあの人の代わりに…
「(皆を…この学校を護ると!!!)行けるよ!」
「よぉし!」
少女の合図でネイトはコートを翻し白日の下に少女のバリスティックシールドが晒された。
前面に刻まれる『IRON HORUS』の文字が日の光を反射しながらいまだ襲い掛かる弾丸を防ぐ。
「くそ、盾を出しやがったな!」
「March!」
「了解!」
ヘルメット団幹部はなおも弾丸を浴びせ続けるもネイトのサポートもあって徐々に前進。
距離にして20mはあったその距離も徐々に詰まっていき…
「で、どうするの!?このまま前進するの?!」
「いや、もうここは…『俺の間合い』だ。」
10mを切ったその時、ネイトはその手にインディゴブルーをしたロケットエンジンと鉄杭を括りつけたバットを取り出し、
「ッ!」
「え、消え…!」
少女の目の前から忽然と姿を消したかと思うと…
「え…?」
未だ銃を連射し続けるヘルメット団幹部の目の前に現れる。
手に持ったバットをまるでメジャーリーグスラッガー張りのフォームで振りかぶって。
Perk『Blitz』、近接武器装備時にV.A.T.S.の射程を伸ばし瞬間移動のごとき高速移動で敵に一撃を見舞う近接専用のPerkである。
その射程10ヤード、最大射程にして…最大威力を発せられる間合いである。
最早ネイトに躊躇はない。
重さ12ポンドを超えさらにロケットで超加速されたバットを…
「ぐばぁ!!?」
ヘルメット団幹部の頭部に向けフルスイングで叩きこんだ。
あまりの威力にガスマスクも砕け散り頭部を軸として宙で二回転半しヘルメット団幹部は地面に伏せた。
「…ゲームセットだ。」
銃声が止んだアビドス高等学校の校庭にネイトの声が響くのであった。