空を切り裂くジェットの轟音!翼を広げ獲物を狙う、猛禽類のようなヘリの爆音!地を焼き尽くすナパームのガソリン臭!
命を削るような海での恐怖感さえもが、懐かしい友のような印象を俺の体に刻み込んじまったようだ。
ど う だ い ! この人間としてぎりぎりの緊張感。体験してみてぇとは思わないか?
こいつぁ・・た ま ん ね ぇ ぜ
891年 カズデル
カズデルのとある一角、ボロボロの建物に複数のサルカズが丸テーブルを囲って集まっていた。集まっているのは各種族、集団内で変人奇人異端児扱いされている曲者ばかりであった。その集団の中心人物であるナハツェーラーのユージンもまた種族的に異端児であり、戦いよりも平和を愛する傾向にある人物であった。そして結構純粋な人物でもあった。
「諸君、よくぞ参られた。楽にしてくれ。」
「この集まりも久しぶりだな。それでユージン、なぜ集会を開く事にしたんだ?また何か作ったのか?」
リッチのブローニングがユージンに尋ねた。彼に関しては何かを発明する事に喜びを見出している人物で、この前は連続発射可能なクロスボウを発明していた。3日前にユージンから皆に集会を知らせるように頼まれていた。
「そうね。あなたが集会を開く時はたいてい何かを発明した時や考えついた時だものね。」
そういうのはバンシーのスプリングフィールドで、彼女は故郷を飛び出して様々な加工品を大量に作り上げている人物であった。前々回の集会ではユージンの頼みでブローニングが設計した楽器を作成し、ユージン作の曲をカズデル中を演奏しながら練り歩いたりした。
「今回は何を思いついたんだ?何を作ればいい?」
そう言うのはブラッドブルートのニッサだった。彼女は機械いじりが大好きで、この前はユージンと一緒に近くの川で水力発電装置の作成を行っていた。発電した電気はこの建物に引っ張ってきており、室内を白熱電球が煌々と照らしている。
「…。」
先程から成り行きを見守っているのはサイクロプスのチーフで、彼の特徴は2mある身長とクールで無口なところだが、最も目を引くのは全身を覆うアーマーと黄色のバイザー付きヘルメットだ。傭兵として戦場に飛び込んでは人命救助等を積極的に行っており、その他あらゆる武器装備の扱いに長けている。
「そう、前回披露した農薬で作った作物の料理を食べてみて欲しいのね。」
ユージンの言いたかった事を的確に捉えたのはジャールのリリーゼだった。彼女は相手の思考を読み、思っている事を言い当ててくるためコミュニケーションが壊滅的にダメな人物であった。ユージンは察しが良すぎる人なんだな、としか考えていなかった。
「そうである。これによってついに水と電気と空気からパンを作るという目標が達成されたのだ。」
そう言うとユージンはブリキの箱から山型食パンを取り出し、今回集まることができたメンバーにそれぞれ切り分けていった。ちょうど夕飯時を迎えていたので各々がパンと一緒に出てきたスープとベーコンを食べていると、ふとブローニングが思い出したかのように言い出した。
「ユージン、明日スプリングフィールドの工房まで来てくれ。ぜひ見せたいものがある。」
「へぇ~新しい武器を作ったのね。しかもサンクタが使っているようなやつを。」
「え、そんな代物作れちゃうの!?」
「ユージン、驚きすぎて口調が崩れてるわよ。」
「コホン、明日必ず工房に伺おう。」
尚、この集団の目的は各々がやりたい事をやりつつ皆で良い生活をしよう、というものである。
翌日、スプリングフィールドの工房を訪れたユージンが目にしたのは、大量に並べられた様々な銃であった。
「待っていたよユージン。」
「あぁ、これらがリリーゼが言い当てていたやつ?」
「その通り。私が設計し、スプリングフィールドが作り上げた。」
ブローニングの後ろでドヤ顔しながら胸を張るスプリングフィールドが見えた。
「ブローニングはいつもの事ながら、スプリングフィールドも凄いな!」
それからはブローニングによる説明が始まった。かなり前にユージンが発見した新しい肥料の作り方をもとに、スプリングフィールドとニッサがいろいろ試していたら肥料だった物が爆発を起こした。色々試していると強い衝撃に反応して爆発するという性質が判明した。これを耳にしたブローニングに突如閃きが起きた、爆発の威力で矢を飛ばせるのではないかと。それで完成したのが目の前に並べられている銃ということになる。
「近頃物騒であるからな、自衛の手段は必要であるしな。」
「この新開発した武器にはまだまだ可能性がある。期待しててくれ。」
893年 カズデルの端
ユージンが師匠の影響を受けて自作した農場の拡張工事をしていると、効率よく作業するにはどうしたら良いかという疑問が浮かんできた。そこで5年程前に見つけた石炭を持ってスプリングフィールドとニッサと一緒にあれこれしていると、農業用トラクターが完成した。
トラクターを使用し始めてから数ヶ月、頻繁に石炭を補充しなければいけないトラクターを見て今度はもっと燃料効率を良くしたいと考えた。そこでユージンは石炭をあれこれしたり、そこら辺を彷徨いていたオリジムシをあれこれしたりしていると、燃える水を発見した。またまたスプリングフィールドとニッサとあれこれしていると、液体燃料を使用するトラクターが完成した。
この頃になるとユージンが開発した農地から収穫される作物は一目置かれる状態になり、いつもの集会で作業人員を集めたり農場等関連施設防衛の為の武器を持った警備員を集めたりしていた。尚、警備主任はチーフに、人員の募集はリリーゼにそれぞれ一任している。
896年 カズデルの端 ユージンの大農場付近
ユージンはニッサに新しく開発した物をぜひ見て欲しいと言われて大農場近くの広場に呼ばれていた。この頃になると農作物の輸送のためにトラクターから発展したトラックや悪路の走行性能を向上させたハーフトラックが農場周辺を走り回っていた。そんな車両達を眺めつつ広場に移動すると、水平に煙突が伸びた小屋とデカい鳥みたいな物が鎮座しているのが見えた。
「御機嫌ようニッサ。ただいま参ったぞ。」
「やぁユージン。早速だけど、この子達を紹介しよう。」
まず、鳥のような物から紹介された。これは飛行装置と呼ばれる物で、機首に大出力のレシプロエンジンを搭載し高速で飛行する事が出来る低翼単座機だった。
続いて小屋の様なものは戦車という新しい陸上兵器で、エンジンは飛行装置の物を流用し、全周旋回砲塔を持ち、1門の大砲と車体と砲塔及び砲塔上部に備えられた機関銃を装備している。5人で操作する必要があるらしい。
「ニッサ、そっちの紹介は順調そう?」
突如スプリングフィールドの声が聞こえた為、辺りを見回しているとニッサの後ろにある四角い機械から声が聞こえる事に気がついた。ニッサ曰く、この機械は遠方同士で情報を伝え合う事ができる通信装置だそうで、飛行装置と戦車にも搭載されているとの事だった。
この時までにユージン率いるこの集団はカズデル内で異彩を放っており、特異な技術者集団として様々な組織から注目されていた。
ある時、ユージンがいつも服の仕立てをお願いしている仕立屋に赴いたところ、同じ師匠を持つ顔馴染みに集団の名前を尋ねられた。いろいろ開発して生活水準を上げることが目的だったため、そしてネーミングセンスが無かったため「開発公社」と名乗る事にした。
898年 カズデル 開発公社防衛陣地
ケルシー率いる三国連合によるカズデル侵攻が発生。開発公社も作業員と警備員総出で防衛戦に参加する事になった。
開発公社は保有する重機で塹壕を掘り、鉄条網を展張し、機関銃陣地と砲兵陣地を作成して敵を待ち構えた。
「砲兵隊向けの標的がある!」
「このセクターに砲撃。デルタ、ファイブ、破壊せよ。」
事前の飛行装置による航空偵察によって迫りくる三国連合の先鋒に榴弾砲の曳火射撃を浴びせ敵の機先を制し、機関銃陣地と戦車の火力で敵を制圧した。
「敵が来たぞー!」
「そこに奴がいるぞ。」
「奴さん射撃の的になりたいようです!」
「キツツキでなぎ倒せ!」
一列になって突撃してくる敵に対してキツツキ(M2重機関銃とM1919重機関銃)が火を吹きバッタバッタと敵をなぎ倒していった。盾兵と術師が慌てて陣形を組もうとするが銃弾は盾とアーツによる防御を余裕で突破し多数の死傷者を出すことになった。一部の盾兵と術師が銃弾を防ぎきっていると、戦車の76mm砲弾を撃ち込まれ木っ端微塵にされる場面もあった。
リターニア、ヴィクトリア、ガリアの三国軍将校たちは混乱していた。優先攻撃目標とされていた開発公社に攻め込んだはいいが、1万にも満たない相手に対して甚大な被害を被っていたからだった。開発公社の持つ技術と設備欲しさに我先にと突撃した部隊の先鋒は未知の爆発により壊滅、上空に現れた黒いタコがその足で兵士達の命を残らず絡め取っていってしまった。やっとの事で辿り着いた敵陣前では棘付きの鉄の網に行く手を阻まれた所に猛攻撃を浴びた。サンクタでないにも関わらず銃を使うとは聞いていたが、サンクタの持つそれよりも射程が長く威力が高いことに驚愕し、優秀な盾兵と術師を纏めて吹き飛ばされるという事態に絶望した。
「あ、悪魔め…。」
指揮官が震える声でそう呟いたところで上空から見慣れない物体が降下、飛行装置だと認識すると上空で何かを切り離した。刺激臭のする液体を撒き散らされたと思ったら激しい閃光と熱により意識がブラックアウトした。
続かないです