殺人隠蔽の元みちのく記念病院長 執行猶予判決
青森県八戸市のみちのく記念病院で入院中の男による同室患者の殺害を隠蔽(いんぺい)したとして、犯人隠避の罪に問われた、当時の院長だった被告の男(62)=八戸市類家3丁目=に青森地裁は20日、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。藏本匡成裁判長は「地域の精神科医療を支えていた病院の医師らが病院ぐるみで組織的に行った不正行為」と述べた上で「悪質であり、医療への信頼を大きく揺るがすもの」と批判した。 被告は起訴内容を認めており、争点は量刑だった。 量刑理由で藏本裁判長は患者が重傷を負い、処置が難航しているとの報告を受けたにもかかわらず、病院に駆け付けることも外科のある他の病院に転送することもしなかった-と指摘。「病院を守りたい」「悪い評判をつくりたくない」という動機で適切な対応を取らず、看護師らに丸投げした行為を「病院を管理していた者としてあるまじきこと。身勝手で浅はかというほかない」と非難した。 患者の死亡後、看護師を介して認知症で入院している「みとり医」に虚偽の死亡診断書を作成させ、遺族に交付しており、一連の犯行で「重要かつ不可欠な役割を果たした」とした。 一方、関係者の通報で事件が早期に発覚したことや、自身が理事長を務めていた医療法人やその傘下の病院の管理運営に今後関与しないと話していること、医師法上の行政処分が見込まれることなどを挙げ、「執行猶予が相当」とした。 被告はこの日、初公判と同じ黒いスーツ姿で開廷の5分前に入廷。着席後は傍聴席をじっくり、何度も見回した。判決が言い渡されると深くうなずき、藏本裁判長が「閉廷します」と言うと、2度にわたって深く頭を下げた。 判決によると、被告は2023年3月、弟(60)=東京都新宿区、同罪で起訴済み=と共謀し、入院していた受刑者の男(60)=殺人罪で懲役17年が確定=が同室の髙橋生悦さん=当時(73)=を殺害した事件を知った上で隠蔽。適切な遺体の検案や警察への届け出をせず、死因を「肺炎」とする虚偽の死亡診断書を遺族に渡した。 共犯の弟の公判期日は未定。