今回は色々ときな臭くなって来ましたよ…
是非読んでください
ブラックマーケットにある銀行…
普通の街にある銀行と変わらず…多くの利用者がいる…
この日もいつも通りに過ごしていたが…
プツン
『な、何事ですか?停電!?』
『い、一体誰が!?パソコンの電源も落ちてるじゃないか!』
突然…電気が消え銀行内に動揺が走るが…それもつかの間…
ダダダダダダダダ!
ドドドドドドドドドドドド!
『グアアアア!?』
『銃声!?』
「………銀行内の警備員の排除を確認…そのまま続けろ…」
『全員その場に伏せなさい! 持っている武器は捨てて!』
『言うこと聞かないと、痛い目にあいますよ☆』
『あ、あはは……みなさん、ケガしちゃいけないので……伏せてくださいね……』
『ぎ、銀行強盗!?』
………俺は無線で指揮をしている…はぁ…何やってんだろ…
無線越しにシロコ達の声が聴きながら…銀行のシステムをダウンさせる…
『非常事態発生! 非常事態発生!』
『うへ〜無駄無駄一…外部に通報される警備システムの電源は落としちゃったからねー』
『ひ、ひいっ!』
『ほら、そこ!伏せてってば!下手に動くとあの世行きだよ!?』
『みなさん、お願いだからジッとしててください……あうう……』
「銀行内の制圧を確認…フェイズ2へ移行しろ…」
『りょーかい、それじゃリーダーのファウストさん!指示を願う!』
『えっ!? えっ!? ファウストはともかく、ホントにリーダーなんですか!? 私が!?』
『リーダーです! ちなみに私は、覆面水着団のクリスティーナだお♧』
『うわ、何それ! いつから覆面水着団なんて名前になったの!? それにダサすぎだし!』
『うへ、ファウストさんは怒ると怖いんだよー? 言うこと聞かないと怒られるぞー?』
………銀行強盗やってる雰囲気なのか…これが?
もはやお遊びだろ…これ…
『監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、すべて頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと』
『さあ、そこのあなた、このバッグに入れて…少し前に到着した現金輸送車の……』
『わっ、わかりました! 何でも差し上げます! 現金でも、債券でも、金塊でも、いくらでも持ってってくださいっ!!』
『そ、そうじゃなくて……集金記録を……』
『どっ、どうぞ! これでもかと詰めました! どうか命だけは!!』
『あ……う、うーん……』
『まぁ…いいや…』
『目的は達成した…戻ろう…』
『それじゃ逃げるよー! 全員撤収!』
『アディオ〜ス☆』
『け、ケガ人はいないようですし……すみませんでした、さよならっ!』
そうしてヒフm…ファウスト率いる覆面水着団の銀行強盗劇は早くも終わった…
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『はひー、息苦しい。もう覆面脱いでいいよね?』
『のんびりしてらんないよー、急げ急げ。追手がすぐ来るだろうから』
『できるだけ早く離れないと……間もなく道路が封鎖されるはずです……』
『いたぞ!奴らを捕らえろ!』
『ふぇ!?マ…マーケットガード!?』
『嘘…銀行内の警備システムは停止したはず!?』
騒ぎを聞きつけただろうな…
「全員全速力で離れろ…絶対に捕まるなよ…」
『わかってるわ!こんなところで捕まってたまるかってんよの!』
「…………」
「アロナ…ネクストを座標の位置まで…」
『えっ…!?ここはブラックマーケットですよ!』
『こんなところで動かしたら…連邦生徒会にバレますよ!?』
「そこは大丈夫だ…少し工夫してある…」
『………わかりました…すぐにその座標まで持ってきます』
ダダダダダダダダダダダダ!
「ヒィィィィ!!」
「うへぇ…これはちょっとまずいんじゃない?」
あまりにもマーケットガードの数が多い…
このままじゃ…やばいね…
『前方に敵反応が!?』
「ん…あれは…」
シロコ達の前に立ちはだかったのは…無数のゴリアテ…
「うわあああ!!もう終わりですぅぅ!!」
「うへぇ…万事休す…だね…」
『今だ!奴らは袋の鼠だ!』
そうして標準が覆面水着団に向いた瞬間
ドゴオオオオオオ!!
『グアアアア!?』
『な…なんだ!?なんの爆発だ!?』
『後ろからだと!?』
マーケットガードの背後から…布を被った強大な何かが飛んできた
そう…ネクスト…ホワイト・グリントである
ゴミ捨て場から拝借してきたボロボロの布を被ってはいるが…連邦生徒会にバレるよりかはマシだと思う…
「ん!?あれは…」
「な…なんですか!?」
『シロk…いや覆面水着団…』
「この声って…まさか!?」
『援護する…ゴリアテ及びマーケットガードは任せろ…お前たちはそのまま直進しろ…』
そう言うと…布を被ったネクストは超高速でマーケットガードに攻撃をしかけた…
ブォォォォン!!
「は…早い!?」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!
布を被ったネクストは無尽蔵に飛び回り…マーケットガードを一掃している…
「す…すごい…」
「うへぇ…やっぱ見ても…おかしいよね…」
「うん…あんなに超高速で飛び回るなんて…普通の人は耐えれないわよ…」
「本当に…先生は何者…」
ネクストが戦っている(一方的にボコしている)のを背後に…覆面水着団は撤退して行った
「………」
(先生は強いね…)
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ブラックマーケット内、とある広場…
「ここでしょうか…」
「うん…マーカー情報ではここを示していた…」
「うぅ…もう歩けない…」
マーケットガードから逃げた覆面水着団は少し広い広場へと来ていた
ここで先生と落ち合うつもりらしい
少しすると空かブースト音が聞こえてきた
「あっ来た来た!」
「お〜い先生〜」
マーケットガードを”一方的”に蹂躙したネクストが彼女達の元へ降りてきた…
「いや〜助かったよ先生〜危うく捕まるところだったよ」
「うん…本当に助かった…ありがとう先生」
「あぁ…うん…まぁ色々言いたいことがあるが…まぁ目的は達成したし…良しとするか…」
「とりあえず…全員無事で良かったよ…」
『ほんとにですよ…先生がいなかったらどうなってたかもしれませんよ…』
あいつらがドジをした訳でもないが…まぁ念の為来てよかったよ…
「あんなに多かったマーケットガードを一方的にやっつけちゃうなんて…しかも…あんな大きな物を動かすんなんて…」
「先生は…一体何者なんですか?」
ヒフミにそう聞かれる…俺が何者なのかは一部の人しか知らない…
まぁネクストに乗ってる時点で普通ではないからな…
「ただの人間だよ…」
「…………」
「さて無駄話をしている暇もないし…さっさと確認しよう…」
「……あっ、そいえばそうでしたね…。」
「……」
何とか話題を切り替え、気まずい場を退けた…
ホシノの視線が痛いが…
「そういえばシロコ先輩は取らないの?その覆面、邪魔じゃない?」
シロコはブンブンと首を振る…余程気に入ったらしい。
「うへ、天職感じちゃったといか、もはや魂の一部みたいになっちゃって脱ぎたくないのかな」
「先輩はアビドスに来て正解だわ…もし他校だったら何をしでかしてたか……」
「そ、そうかな……」
……それに関しては同感だ…アビドスじゃなかったらどうなってたんだが…
「さて…シロコ…書類はこの中だよな?」
「うん、このバッグの中に……」
「なんかそのバッグ…パンパンになってない?」
ジジジジジ……
バッグのジッパーをおろすと……
「ゑ?」
中にあったのは大量の紙幣だった。
「これは…」
「うっそでしょシロコ先輩現金盗んじゃったの!?」
「いや書類はちゃんとある、お金は銀行員が勘違いして勝手に……」
「書類抜きでこの重さ……」
「ざっと数えても一億以上だな」
「うへーほんとに5分で一億稼いじゃった」
……あの状況では職員はパニックになってたからな…無理もないが…
「やったー!何ぼーっとしてるの!早く運ぶわよ!」
セリカがそう言い出した…
「………」
『ちょ、ちょっと待ってください…そのお金何に使うつもりですか!?』
「アヤネちゃん、なんで?借金を返さなくちゃ!」
『そんな事したら本当に犯罪だよ、セリカちゃん!』
「は、犯罪だから何よ!元々は私達が汗水たらして稼いだお金なんだよ!それが闇銀行に流れてったんだよ!」
「それに、放っておいたら犯罪者の武器や兵器に変わってたかもしれない!悪人のお金を盗んで何が悪いの!?」
「私もセリカちゃんに賛成です!犯罪者の資金ですし、私達が正しく使った方がいいと思います」
そうしてセリカが金が入ったバックを運ぼうとするが…
「「ダメだ(よ)」」
リンクスとホシノが同時セリカの行動を止めた
「えっ先生!?」
「ホシノ先輩!?」
「この金で借金を返すのか?君達の借金はもとから犯罪者の資金にされていた」
「これも借金に使えば、またそこに帰っていくだけだぞ…」
「俺たちが今欲しいものは金ではないだろう…」
「先生の言う通りだよ…今私に必要なのは書類だけ…お金じゃない…」
「今回は悪人の資金だからいいとして、次はどうする?その次は?」
「……。」
セリカは返す言葉が見つからなかった…
「こんな方法に慣れちゃうと……ゆくゆくは、きっと同じことを平気でするようになるよ」
「そしたら、この先またピンチになった時……「仕方ないよね」とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う」
「うへ~、おじさんとしてはかわいい後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー」
「そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ」
「こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってる燦然と輝くゴールドカードに頼ってたはず…」
「いくら…楽に金を手に入れたとはいえ…また同じ事を繰り返せば今まで頑張って来た先輩達にも失礼だし…アビドスがアビドスではなくなってしまう…そういう事だろ…?」
「うへ、そういう事」
「だから、このお金は置いてくよ…頂くのは必要な書類だけ…これ委員長の命令だよー」
「…あーもう!勿体ない!もどかしい!意味わかんない!こんな大金を捨てる!?皆変な所で真面目なんだから!」
とかなんとか言いつつもセリカも委員長の命令には従ってくれたようだ…
「ん…委員長としての命令なら…」
シロコは強盗ができただけで満足したようだ…それはそれでどうかと…
「皆さんの事情はよく知りませんが…このお金を持ってたら他のトラブルに巻き込まれるかもしれませんし、その方がいいかもしれませんね…」
「災いの種…みたいなものでしょうから…」
『お話中にすみません!何者かがそちらに接近しています!』
暗い雰囲気をぶち壊すように…アヤネから警告が…
「追手のマーケットガード!?」
『……い、いえ…敵意はない様子です…調べますね……』
マーケットガードの残党か?
まぁネクストからだと…歩兵連隊をやったのかどうか判別は難しいが…
敵意がないのが気になる…だとすると…マーケットガードじゃないな…
『あれは……べ、便利屋のアルさん!?』
アヤネの言葉を認識すると共に全員が覆面を被る…
………ここがよくわかったな…
「はあ、ふう……ま、待って!!」
「……!」
「あ、私は敵じゃないから……って、え──」
アルは俺の姿を見て驚いたように固まる…
「せ…先生!?」
「やっぱり…あの布を被った物は先生だったのね!」
「それにあなたたち、銀行の襲撃、見せてもらったわ……ブラックマーケットの銀行をものの五分で攻略して見事に撤収……稀に見るアウトローっぷりだったわ」
「……!?」
まさか…褒めに来たのか…
いやその前に…彼女の言動からすると…まさか…アルは覆面を被った目の前の集団が対策委員会だと気付いていないのか…
「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことができるなんて……感動的というか」
「わ、私も頑張るわ! 法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」
「そ…そして先生のように…何者にも負けない…そんな強い人に!」
「一体……何の話?」
アルの目指しているのは……俺のような姿だろうな…
俺はアウトローではないが…まぁ何かしらに刺さったんだらうな…
俺がホワイト・グリントに憧れた様に…
「そ、そういうことだから……な、名前を教えて!」
「名前……!?」
「その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょ? 正式な名称じゃなくてもいいから……私が今日の雄姿を心に深く刻んでおけるように!」
「うへ……なんか盛大に勘違いしてるみたいだね……先生、どうする?」
「好きに名乗っとけ…」
「……はいっ! おっしゃることは、よーくわかりましたっ!」
「のっ、ノノミ先輩!?」
俺の発言を言質として、ノノミは大きな声でアルの言葉に答える。
どうやらノノミが名乗るつもりらしいが…まぁあれを言うんだろうな…
「私たちは、人呼んで……覆面水着団!」
「……覆面水着団!? や、ヤバい……!! 超クール!! カッコ良すぎるわ!」
アルには刺さったらしい…いや…どこが?
「うへ〜本来スクール水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだー」
「そうなんです! 普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!」
………っとノノミは色々自分が考えたであろう設定を言っていく…
「そして私はクリスティーナだお♧」
「『だ、だお♧』……!? きゃ、キャラも立ってる……!?」
「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!」
「な、なんですってー!!」
「…………」
ともはや幼児のような純粋だな…
「……何してるの、あの子たち……」
「わー、アルちゃんドはまりしちゃってるじゃん。特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」
アルの後ろを見ると、どうやらアルを追いかけてきたらしい便利屋の残る三人が、この状況を外から眺めていた
彼女達はこちらの正体を知っているようだし…このままだとアルにもバレるな…
「そろそろ戻るぞ…俺達にはまだやるべき事があるからな…」
「それじゃあこの辺で!アディオ~ス☆」
「行こう、夕日に向かって!」
「夕日、まだですけど……。」
そう言うと覆面水着団はブラックマーケットから去っていって…
リンクスはネクストに乗り込みOBを起動し飛び去っていった…
その背中を、アルがじっと見つめて一言…
「我が道の如く魔境を……覆面水着団…先生…必ずなって見せるわあなた達のような、最高のアウトローに!」
ホワイト・グリント…コックピット内
『先生…リンさんから通信が…』
「リンから?」
リンからとは珍しいな…と言いたい所だが…いかんせん心当たりが…
少々怖いが…リンと通信を繋げる…
「あ〜…リン?」
『あっ…先生…急に申し訳ありません…』
「いや…大丈夫だが…何か?」
『………実はブラックマーケットでマーケットガードがことごとくやられていると情報が入ってきまして…それにマーケット内の銀行が襲われたと…』
『まさかとは思いますが…』
「…………」
『情報によると…ボロボロの布を被っていて…大きさは10m以上と…』
………まさかもう情報がいったのか…まぁだがこちらは対策してるから心配は無い…
「俺は今アビドスの問題で忙しいんだ…そんな危険な所に行っている暇があるのか?」
「それに…記録も残っていないはず…布を被っていてなんなのかわかるはずがないし…ジャミングがかかって映像には映らないはずだが…」
「おそらく…マーケットガードは正体不明の強盗集団にやられたというとこだろう…気の毒だ…」
『………わかりました…そのようにしておきます…』
『それはある意味…大きな爆弾です…扱いには気おつけてください…それでは…』
そうして通信が切れる…
「バレてるやんけ…」
『はぁ…』
アロナにため息をつかれながらも…アビドスへ戻って行った…
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アビドスへ戻り回収した書類をアビドスの皆で確認していると…
セリカの書類を叩き付ける音が教室中に響き渡る…
……書類の中身は、やはり良い内容ではなかったようだ。
「なっ、何これ!? 一体どういうことなのっ!?」
「現金輸送車の集金記録にはアビドスで七百八十八万円集金したと記されてる私たちの学校に来たあのトラックで間違いない」
「……でも、その後すぐにカタカタヘルメット団に対して『任務補助金五百万円提供』って記録がある」
「ということは……それって……」
「私たちのお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行して任務補助金を渡したってことだよね!?」
「…………」
なるほどね…道理でヘルメット団の装備がいい訳だ…
「任務だなんて……カタカタヘルメット団に……? ヘルメット団の背後にいるのは、まさか本当に……カイザーローン?」
やはりと言っていいのか…やっぱり背後には企業がいやがる…
あっちでも…キヴォトスでも…企業といったら…
「ど、どういうことでしょう!? 理解できません! 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……どうしてそのようなことを……?」
確かに…理解が出来ない…アビドスを利用して…資金を得ているはずなのに…アビドスを潰そうとしている…これはなかなかきな臭くなってきたな…
「この件、銀行単独の仕業じゃなさそうだね…カイザーコーポレーション本社の息がかかってるとしか思えない……」
「……はい…そう見るのが妥当ですね」
結構…謎は解けても…また謎が呼んでしまった…
「みなさん、色々とありがとうございました」
「こちらこそ……変な事に巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん」
「あ、あはは……いえ、私が自分で選んだことですので……」
あの後…色々考えたが…日が傾き始めたためヒフミを見送る事にした…
「私も助けてもらいましたし……もしまた何かあれば、先生を頼りますから!」
「……いずれトリニティに仕事で向かうことがあるかもしれない…その時は頼む」
「おじさんも今度遊びに行くからよろしくー」
「戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します! それと、アビドスさんの現在の状況についても……」
ティーパーティー…トリニティーの生徒会みたいなものだったような…
もしもトリニティーが協力してくれるなら…心強いが…
「……まー…ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー」
「は、はいっ!?」
「……そうだろうな…そもそも普通に調べられる情報を、三大学園と呼ばれるトリニティが知らないとは考えにくい」
先生の言う通り、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよー。みんな、遊んでばかりじゃないだろうしさ」
「そ、そんな……知っているのに、みなさんのことを……」
「うん、ヒフミちゃんは純真で良い子だねー。でも世の中、そんなに甘くないからさ」
「…………」
悲観的で、そして現実的なことを言うが…
事実ではあるだろう…が…
少し違和感を感じる…
ホシノは…知った上で…放置している…
「ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、そっちに知らせたところで、これといった打開策が出るわけじゃないし、かえって私たちがパニくることになりそうな気がするんだよねー」
「そ、そうですか……?」
「ほら、今のアビドスって廃校寸前じゃん? トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよー言ってる意味、わかるよね?」
「……サポートするという名目で悪さをされても、それを阻止できないってことですよね……そうですね、その可能性もなくはありません。あうう……政治って難しいです」
「でも……ホシノ先輩、悲観的に考え過ぎなのではないでしょうか? 本当に助けてくれるかもしれませんし……」
「うへ、私は他人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってねー『万が一』ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー」
「…………」
………ホシノは何か重いものを背負ってる…使命…でもなく…もっと…重い…何かが…
そう話しているうちに…アビドスの駅前まで来ていた
「えっと……。本当に、一日で色んな出来事がありましたね」
「そうだね、すごく楽しかった」
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
「あ、あははは……私も楽しかったです」
「いやぁー、ファウストちゃん、お世話になったね」
「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」
「そ、その呼び方はやめてください!」
「と、とにかく……これからも大変だとは思いますが、頑張ってくださいね。応援してますから!」
少しだけ顔を赤くしたヒフミは咳払いをしてから、にこやかに、元気に、晴れやかな笑顔を持って、アビドスを激励した…
ほんと…明るいな…
「それでは……みなさん、またお会いしましょう」
最後にトリニティーの生徒らしい挨拶をし…ヒフミは駅の内部に歩いていった…そのまま寄り道せず…まっすぐ帰ってくれよ…
翌日…ヒフミから連絡が来て無事に帰れたことに安堵する…
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朝早く学校へ来たが…もう人がいるみたいだ…
「おはよー、先生」
「先生、おはようございます…今日は早いですね?」
「まぁ…少し落ち着いたからな…」
「うへ、ノノミちゃんの膝枕は柔らかくてサイコーなんだよー。私だけの特等席だもんねー」
……ホシノはノノミに膝枕をされながら寝転がっている…
朝早くから来ている理由はそのためかホシノ…
「先生もいかがです?」
「………遠慮しとくよ…」
「ダメだよーノノミちゃん、ここは私の場所なんだから…先生はあっちの座り心地悪そうな椅子に座ってねー」
「私の膝は先輩専用じゃないですよう……」
人に甘えるように寝転がっているが…
ホシノは眠たがりではない…
睡眠不足のようだ…
アビドスに来てそれなりに経つが、ホシノは眠らないのではなく、恐らく眠れない、睡眠障害のようなものを抱えているのかもしれない…
あるいは…
「よいしょっと。ふあぁ~、みんな朝早くから元気だなあ」
大きく伸びをして、ホシノはノノミから離れつつ言う。
「のんびりできるのは久しぶりですから……今はみんな、やりたいことをやってるんでしょうね。んー、シロコちゃんはきっとトレーニングでしょうし、アヤネちゃんは多分勉強しに図書館でしょうか……」
「ノノミちゃんは学校の掃除と教室の整頓をしてくれたよねーうへ、みんな真面目だなー」
「うへ~とにかく先生も来たし、他のみんなもそろそろじゃない? そんじゃ、私ゃこの辺でドロン」
「あら先輩、どちらへ?」
「うへ、今日おじさんはオフなんでね。てきとうにサボってるから、何かあったら連絡ちょーだい、ノノミちゃん」
そう言ってホシノはそそくさと教室を出ていった…
ほんとにオフならいいのだが…
「ホシノ先輩……またお昼寝しに行くみたいですね。うーん、まあいいんじゃないでしょうか…会議はアヤネちゃんがしっかり進めてくれますから…」
「それにしてもホシノ先輩は、以前に比べてだいぶ変わりました」
「……変わった?」
「はい…」
「今はいつも寝ぼけているような感じですが……初めて出会った頃のホシノ先輩は、常に何かに追われているようでした」
追われる…何に?
「何に追われていたかというと……んと、ありとあらゆることに、と言いましょうか」
「聞いた話ですが、以前とある先輩がいたそうで……アビドス最後の生徒会長だったらしいんですがとても頼りない人で、その人がここを去ってからはすべてをホシノ先輩が引き受けることになった、と……」
ここを…去った…
普通に去ったのなら…あんな感じにはならないはず…
だとすると…
「ホシノ先輩は当時一年生だったとか……詳しくは、私も知らないのですが」
「…………」
「でも今は、先生もいますし、他の学園の生徒たちとも交流できますし……以前だったら、他の学園と関わること自体嫌がっていたはずが……かなり丸くなりました…うん、きっと先生のおかげですね☆」
「……だといいがな…」
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アビドス内…とあるビル…
「これはこれは 」
最上階へ来るなり男の声が広間に響く
「お待ちしておりましたよ暁のホル·……いや、ホシノさんでしたね。これは失礼」
彼女の名を呼ぶスーツを着こなす其れは形にそ人間だが…肌は新月の陰でうっすら輝く黒曜石のようで顔には亀裂が入っている…
人間と呼ぶには程遠い姿だった…
「いやいや、キヴォトスにはまだ馴染めていなくて」
「こちらへどうぞ、ホシノさん」
そう言って男はホシノを奥へと案内す
「…黒服の人、今度は何の様なのさ」
怪しい男もとい黒服は彼女の問いかけに薄ら笑いを浮かベる
「ふふ、状況が変わりましてね…今回は再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案をしょうと思いまして…」
「提案?ふざけるな!!!それはもう……… !」
「まあまあ、落ち着いてください」
黒服はその様に気圧されることもなく余裕のある振る舞いをみせる
「…お気に入りの映画の台詞がありましてね…今回はそれを 引用してみましょう」
そういうと彼は書類をホシノに見せる…そして…
「あなたに…決して拒めないであろう提案を…」