酒と煙草とハンドガン   作:にわかセソセイ

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文字が稼げない。


漂着

 ───気がついたら全く知らん場所にいた。

 

 周囲は薄汚い建物が乱立していて、二足歩行の動物やアンドロイドっぽい機械が服を着て蔓延っている。

 

 特に目を引いたのが、天使の輪のようなものを浮かべた銃を携帯する制服を着た女たち。

 ツッコミどころが多いな、おい。

 

 パッと見、人間の顔をした野郎はいない。

 

 天使のJK、銃の携帯、建物の建築様式、これらの観点から純人間の野郎が滅び、治安が終わった日本みたいな場所と推定。

 

 なんだここ、こわ。

 

「なーんか変なとこ来ちゃったなぁ……」

 

 当然、ここに来た心当たりはない。

 

 とりあえず持ち物チェック。

 

 左ポケットに愛銃のベレッタ92FS、右ポケットにMK3手榴弾2つ。

 懐に煙草のセブンスターとヘビメタバンド『Metallica』のロゴの入ったジッポライター。

 ベルトのホルダーにはベルヴェデールのウォッカの入った水筒。

 

 スマホなし、財布なし、土地勘なし、ここの知識もなし……バカか?

 

「どうしたもんかなぁ…」

 

 とりあえず煙草を吸い、ブラブラと歩き回る。

 

 活気は上々、飲食店もあればガンショップもある。

 俺の必須アイテムとも言える酒屋とタバコ屋を探す。

 

 適当に散策していると、後ろから声が掛かる。

 

「おい兄ちゃん、ちょっと待ちな!」

 

「あん?」

 

 後ろを振り返ると今はなきスケバンの三人組がいた。案の定、天使の輪が付いていて制服を着てる。

 

「うおっ!マブいねぇ兄ちゃん!」

「ぐへへ、こりゃいいもん見つけたな」

「ウチらといいことしないかい?」

 

「……」

 

 うぉおおお!歴史の遺物に声掛けられちったよ!こんなんアニメかコンカフェでしか見たことねぇぞ!テンション上がるぅ!

 

「ちっ、無視かよ」

「多少顔がいいからって調子乗んなよ!」

「痛い目見たくなければ大人しく──」

 

 三人目がチンピラお決まりのセリフを言い切る前に、とりあえず眉間を撃ってみた。

 

 1レス返答なかっただけで無視扱いすんなよ。掲示板のレスバかよ。

 

「なっ!?C子ぉ!」

「てめぇ!いきなり何しやがる!」

 

 いくらモブとは言え、C子は適当過ぎるだろ。

 

 件のC子は気絶こそしたものの、出血すらしてない。

 ……脳天ぶち抜くつもりで撃ったんだがなぁ。流石天使ってところか?

 

 周囲の非人間どももこちらに注目はしていても、鉄砲ぶっぱなしたことにはなんの恐怖も抱いていない。

 

 ……なるほどなぁ。

 

「オジサン感心しないなぁ。こんな真っ昼間からナンパとか、親御さん泣くぞ?良い子に学校行っとけ」

 

「うるせぇ!学校に行きたくても行けねぇんだよこっちは!」

「テメェだけは許さねぇ!」

 

 C子のネーミングが察するに、残ったA子とB子がこちらに銃を構える。

 

 学校行けてねぇならなんで制服着てんすかねぇ。ま、いいや。

 

「ふーん、君らにも事情があるんだろうね。ところでお嬢ちゃん達さぁ、Bring Me the Horizonの『Throne』って曲知ってる?」

 

「あ?なんだ急に」

「さっさとやっちまおうぜ」

 

「知らないか……そりゃ残念だ」

 

 この世界には、少なくとも俺の知ってるヘビメタは無さそうだ。

 

 


 

 

 水筒を取り出し、酒を呷る。水筒は空になった。

 

「あー生き返るぅ……そんでお嬢ちゃんたちさぁ、近くに酒か煙草売ってる店知らない?」

 

 しゃがみこんで倒れているスケバン三人衆に声を掛ける。

 

「う、うぅ……」

「つ、強すぎでしょ」

 

 C子は未だ気絶中。A子とB子はボコられたことに意気消沈していて会話にならん。

 

「ま、いいや。世の中には色んな奴がいるんだ。今日は勉強になったな、嬢ちゃんたち」

 

 そう言い残し、また散策を再開する。

 

 あのスケバン三人衆には射撃も打撃も普通に効いた。ただ出血は多少あれどそこまでの酷い怪我はしなかった。

 

 ギャラリー共は迷惑そうにこちらを見ていた。街中で平気で銃撃戦が始まったのにも関わらず、大きな騒ぎにはならなかった。

 

 それがこの街だけの常識なのか、それとも世界全体の常識なのかはわからない。

 グラセフの世界に入り込んだ感覚でいりゃいいか。

 

 煙草を1本取り出す。煙草も残りが少なくなってきたなぁ。

 

「それにしても、まじで人間の野郎がいねぇな」

 

 この世界ではどうやってガキこさえてんだ?処女受胎かな?

 

 そんな下らないことを考えながら歩いていると、

 

『待てやゴラァッ!!』

 

 と、割と近くから怒声が聞こえてきた。よく聞きゃ銃声も聞こえる。

 

「この世界のこともよく分からんし、とりあえず野次馬しに行きますか!」

 

 野次馬根性丸出しで、建物の屋根を駆ける。

 

 しばらくすると、スーツを着た機械人間どもが白と黒のツートンカラーのJKを壁に追い詰めているところを発見した。

 

 JKは既にボロボロ、機械人間どもは彼女を甚振ろうとしているのが分かった。

 

 情報欲しいし、あの子なんか賢そうだから参戦しますか。

 

 機械人間が拳を振りかぶる。

 

「悪いな嬢ちゃん、こっちも仕事なんでなっ!」

 

 危機的状況に、JKはもう諦めたのか目を閉じる。

 

 そんな両者の間に入り、機械人間の拳を受け止める。

 

「え……」

 

 後ろから驚く声が聞こえる。随分いい声してんなぁ。

 

 それはともかく、

 

「オイオイおいおい!なんか面白そうなことしてんじゃねぇかァ!」

 

 ヒーロー参上ってなァ!




『ベレッタ92FS』
ジャン・レノ主演のハリウッド映画『LEON』において、殺し屋である主人公のレオンが使用するカスタムされたベレッタを模したもの。サイレンサーはオリ主が無くした。

『MK3手榴弾』
アメリカで開発された手榴弾。本来は危害半径が小さく、集団相手には向かないが、自前で改造して威力を倍増させた。

『セブンスター』
日本の企業であるJTが作った煙草。他の煙草と比べ若干の甘みがある。セッターやセスタと呼ばれている。

『Metallica』
アメリカ発のヘビメタバンド。スラッシュ・メタル四天王の一角で世界的人気を誇っている。オススメの曲はもちろん『Battery』

『ベルヴェデールのウォッカ』
アルコール40度の酒。ほのかにバニラが香り、癖がなく飲みやすい。結構高級。

『Bring Me the Horizon』
イギリス発のメタルコアバンド。メタルコアバンドとは言ったもののポップな曲もあり、既存の枠組みに囚われない。オススメの曲は作中にも出た『Throne』。


カヨコ全然出せんし、本文の文字数は増えんし、プロットデータ消えるしで難産でした。
次回からはもっと文字増やします。

ヘヴィメタルはまだガンには効かないがそのうち効くようになる。
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