酒と煙草とハンドガン 作:にわかセソセイ
鬼方カヨコをスコろう!
───私は、どこでしくじったのだろうか。
「はぁっ、はぁっ」
ゲヘナに入学してすぐに生徒会である"万魔殿"直属の情報部に入り、それなりの数の仕事をこなしてきた。
「待てやゴラァッ!!」
今まで諜報活動をしてきて、最初こそ失敗はしてきたけれど、ここまでの危機に陥ることはなかった。
「はぁっ、はぁっ……痛っつ!」
追手の放った弾丸が肩を掠める。
……このパーカー、気に入ってたのに。
多分、誘い出されたんだと思う。
相手はカイザーコーポレーションと肩を並べる大企業、キングスカンパニー。
キングスカンパニーは、ゲヘナの現トップである"雷帝"に対抗する術を得たとの噂があった。兵器か人材か、はたまた全く別の何かか。
その噂の真偽を確かめるために、私はキングスカンパニーの本社への潜入任務が与えられた。
最初は順調だった。
誰にも見つからず、見かけた社員に不審な様子もなかった。
その時点で罠を疑うべきだったんだ。
メインサーバールームへ侵入を成功させたその時だった。
突如、私を囲うように会社の私兵が現れ、銃口が一斉にこちらを向いた。
その時にやっと気がついた。
"あぁ、罠だったんだ"と。
なぜ私がターゲットだったかは分からない。意図したものだったかもしれないし、たまたま引っかかったのが私だっただけかもしれない。
なぜ罠を張ったのかも分からない。"雷帝"への牽制だったのかも知れないし、他の学校への見せしめだったのかもしれない。
私はそこから必死で逃げ出した。
キングスカンパニーの敷地から脱出し、ブラックマーケットの入り組んだ裏路地を駆ける。
正直、ここまで逃げ出せたのは奇跡だったと思う。
我武者羅に走り、時にはまわり込んできた兵士を撃ち、時には通りすがりの住民の背に隠れた。
私の愛銃"デモンズロア"はとっくに弾切れ。煙幕や手榴弾も使い切った。
もう少しでゲヘナの自治区までいける、というところで目の前に兵士たちが現れた。
それを躱すように横に曲がると、行く手を阻む壁があった。
……これは詰みかな。
「ようやく追いついたぞ、クソガキが。手こずらせやがって」
私は壁に背をつけ、銃口を先頭の兵士に向ける。弾切れでもブラフぐらいには……
「へっ、もう銃弾が残ってねぇことぐらい分かってんだよ」
もうどうしようもないか。
銃を捨て、両手を上げる。
「今更降参しても遅ぇよ。こちとらお前のおかげで残業だぞ?」
先頭の兵士がそう言うと、左右から別の兵士が前に出てくる。
「死なない程度に痛めつけろ。最悪、腕の一本くらいなら構わん」
「「了解」」
あーあ、本当に……どこでしくじったんだろう。
「悪いな嬢ちゃん、こっちも仕事なんでなっ!」
拳を振りかぶった兵士を見て、目を閉じる。
ブラック・デス・ポイズンの新曲、まだ聞けてなかったのに。
そんな後悔を胸に拳を受ける時を待つ。
……ん?いくら待っても殴ってこない。
そう思い目を開けると、
「え……」
目の前には、黒いパーカーを着た男?の背中があった。
よく見れば、兵士の拳を受け止めていることが分かる。
「オイオイおいおい!なんか面白そうなことしてんじゃねぇかァ!」
突如現れた謎の男に、兵士たちは混乱する。
「な、なんだお前は!」
「テメェに名乗る名なんざねぇよタコ!地元では"チェレン"と呼ばれてた」
「名乗ってるじゃねぇか!」
「うるせぇ!ピチピチのJKをリンチするようなカスにゴチャゴチャ言われる筋合いねぇんだよ!」
「ぶべらっ!!」
チェレンと名乗った男は兵士の顔を殴り、10メートルくらい吹き飛ばした。周囲の兵士たちが巻き込まれ、無事だった兵士も唖然としていた。
「二度とクセェ口開くんじゃねぇぞ雑魚」
そう言い放ったチェレンは私の方に向き直ってきた。
チェレンの顔はかなり整っていて、伸びた黒い髪は後ろで結っている。そして黒いパーカーから覗く白いTシャツには『むじのてぃーしゃつ』と書かれている。いやダサ。
「よぉ嬢ちゃん、怪我はねぇか?」
「……ないように見える?」
「見えるな。怪我があったとしても生きてりゃ平気だ」
「フフッ、なにそれ」
顔の良さとダサいTシャツと意味の分からない発言の温度差につい笑ってしまった。
「おい!こっちを無視してんじゃねぇよ!」
我に返った兵士たちが一斉に発砲する。
まずい、この人にはヘイローがない!もし当たったら怪我じゃ済まない!
……と思ったのも束の間、突然私の身体が謎の浮遊感に包まれる。
「きゃっ!」
「嬢ちゃん、口はしっかり閉じてな。舌噛んでも知らねぇぞ」
チェレンが私を抱えて、行く手を阻んだ壁を飛び越えていた。
「「「な、なにぃいいい!!!」」」
「あばよぉとっつぁん!」
「待ちやがれぇ!お前ら追え!」
兵士たちは私の身柄を諦める気がないのか、まだ追いかけてこようとしていた。
「待たないし、追わせんわボケェ」
チェレンがそう言った直後、耳をつんざくような爆音と身体を震わせるほどの大きな衝撃が通り抜けた。
チェレンの肩越しから兵士たちのいた方向を見ると、兵士たちは今の爆発に巻き込まれたのか、全員倒れていた。
この人が何をしたのか分からないが、助けてもらえたのは事実だ。
「あの……ありがとう、ございます」
「良いってことよ。災難だったな嬢ちゃん、今はリラックスしな」
知らない男に抱きかかえられた状態でリラックスなんて普段なら絶対出来ないが、色々あった今だけは、助けてくれたチェレンだけは、大丈夫な気がした。
だからほんの少しだけ、腕に力を込めチェレンにそっと身を寄せる。
彼からはお酒と煙草と、ほんの少しの硝煙の匂いがした。
カヨコを
ゲヘナへ入学して情報部へ
↓
普通に2年生になる
↓←今ココ
なにかあって留年してまた2年生
↓
原作同様の3年生
というふうにしました。
キングスカンパニーも捏造ですが、カイザーと対になるよう意識しました。
あとは雷帝とかももう少し設定開示してほしいですよね。
カヨコのエミュ、設定の作り込みが甘いのは許してほしいです。
オリ主と仲良くなる生徒は増えますが、ヒロインはカヨコのみと先に断言します。
感想、評価、誤字報告待ってます。