おばとみが25周年のお祝いをするとの知らせを受けて、かつてともに働いた戦友、あいかを誘って弘前に行くことにしたのが8月の終わり頃。気づいたら9月、いつのまにか予定は週末になっていて、新幹線で寝て起きたら新青森駅についていた。前日東京は土砂降りで、雲行きが怪しいなと思っていたけれど、青森は晴天だった。妙に現実味がないまま今月も北に来てしまった。おばとみの話はまた今度。
この日は夜におばとみに行く以外は思い切って1日フリーにしていた。フリーな気持ちを高めるべく、津軽フリーきっぷを購入し、奥羽本線に乗り換えた。フリーきっぷを購入したからには、電車やバスに乗りまくらないと行けないと思い、ひとり鬼コをめぐることに決めた。
9月といえば、オニーだろう!セルフ古津軽ウィークだ!
とりあえず荷物もあるし、いったん弘前駅を出ることに。駅の改札を抜けずに駅員さんにフリーきっぷを見せる。間違えてSuicaでピッしないように気をつけないと。
いつものホテルに荷物を預けて、再び弘前駅に戻る。念の為、おにぎりと糖分多めの飲み物を買っておく。青森の電車やバスを舐めてると長すぎる待ち時間が発生し、飲食店も全くない可能性があるからだ。すじこのおにぎりを片手に、弘前駅の改札を通り抜ける。Suicaでピッする。フリーきっぷあるのに、さっき気をつけないとと思ったのに、ピッする。私は大きめの声で「アッ!」と言う。駅員さんがもう一度通れば取り消しなるんで〜と教えてくれた。やさしい。改めてフリーきっぷをヒラヒラ掲げてホームへ向かった。ひとつとなりの撫牛子駅へ向かう。
撫牛子駅は一度だけ使ったことがある。弘大生時代、さくら野で映画を観たあと、歩いていたら撫牛子駅にいた。何故そうなったのかは思い出せない。道に迷ってつくような場所でもない。私のことだから撫牛子にあるラブホにでも行きたかったのだろう。その時は電車も来ないし誰もいないし、切符の買い方もわからないし終わったと思った。夜で真っ暗だったし。この日も降りたのは私だけだった。一応ネットでも話題に最近なったのに。待合には1人女性がいたが、次の電車がすぐにあるわけでもないので不思議だった。

なでなで
あまりの人のいなさにいったいどうなっているんだと思いながら少し歩く。お目当ての鬼コがいる八幡宮へ向かう。私はこのとき大きな勘違いをしていたのだが、神社のたぐいはそこそこ大きく、人もいて、御朱印ももらえるものだと思っていた。実際はそんなこともなく、駐車場の横で日常に溶け込んで、鳥居が立っていた。

緑の鬼コだ!はじめまして

津軽地方において、鳥居に鬼コを置いたはじまりがここだと言われているらしい。
よーく見ると目も歯も爪も手描き。ぬくもりが溢れていてあんまり怖くない。

後ろから、パンツも失礼。なんか赤いのはみ出てない?
本当に鬼コが鳥居にいる!お尻まで見える!とテンションが上がった私は、そのまま横の中華そば屋でざる中華を食べた。煮干しラーメンと迷ったが暑かったので冷たい方を選んだ。美味しかった。ちなみにラーメン屋にはめちゃくちゃ人がいた。多分この辺りの人が全員ここでラーメンを食べていた。それくらい賑わっていた。

その後、電車がまったく無いので、バスに乗った。バスは最初から最後まで私しか客がいなかった。北大通りを通ったらあっという間に弘前バスターミナルだった。思ったより近いんだな、学生の頃は途方もなく遠くに感じたのに不思議だ。
次はどうしようかと地図を見る。車がない状態で全て鬼コを見るのは無理だと判断し、久しぶりにそちら方面へ行きたいという理由で石川の八幡宮へ行くことにした。いったんバスで千年方面まで行き、そこから弘南鉄道に乗り換えて石川に向かうルート。絶望の時刻表でよく乗り継ぎできたなと我ながら思う。ちなみに千年駅に着くと思ってバスを降り、着いたのは小栗山駅だった。どおりで見覚えがないなと思った。
千年も石川も、学習ボランティアでよく行っていた。通り道に美味しいお菓子屋さんがあった気がして寄ろうと思っていたけれど、それが千年の記憶なのか、石川の記憶なのか分からなかった。どっちかの小学校の男の子がなぜか、私のことを駅まで送るといい、突然シュークリームを買って私にあーんしてくれたのだ。その時の驚きは忘れられない。場所は忘れたけど。なんだか思い出すだけで法に触れそう。結局お菓子屋は見つけられなかった。
突然大雨が降ってきて、帰れなくなったこともあったなあ。本数が少なすぎて、一つ逃すと途方に暮れるしかないあの感じ。

はじめて来た小栗山駅は、異質なくらいに開放的。広いところが苦手な私にはちょっと怖いくらいだ。トンボを避けたら線路に落ちそうになった。

石川駅、久しぶり
東奥義塾駅間との線路は相変わらず怖いね
学校までの道はもう、忘れたよ
誰もいない道、誰もいない坂、あたり一面の緑、本当に大丈夫なのかと進む。たしか大仏公園でシュークリームの男の子と妖怪ウォッチしたや。思い出してきた。にしても、これ女1人で歩いてたら自殺と勘違いされかねないな。急に心配になったので、カバンの目立つところに、鬼コのキーホルダーをつけた。私、鬼目当てなんですよ
森の中に、階段を見つけ、そろそろ登る

登った先に、赤い鬼コ!

キュートなお顔に

なんてかわいいケッツなんだ
奥まで進んで、賽銭箱にいくらか投げて、周りを見渡すけれど、やっぱりだ〜れもいない。トンボと蚊だけ。ブンブン音が怖くて悲鳴を上げながら神社を飛び出した。汗が止まらないけれど、鬼コの良い尻を見れて満足。弘前に戻る。電車はしばらくこなさそうだったので、バス停を探す。待ち時間で、今日の残り時間どの鬼を見に行こうか悩んだが、弘前の西側に行くのは無茶だと判断し、平川方面に狙いを絞った。緑、赤と鬼コを見たから、次は青だ、尾上方面の鬼コを見に行くぞ。でもいったんホテル戻る。すじこおにぎりを冷蔵庫に入れたい。チェックインもしておきたい。
バスで尾上方面に向かおうと思ったが、良い時間が全然無く、夜の予定に間に合わない予感しかしなかった。私は奥の手、車を召喚した。もともと会う予定だったおぢが、車で迎えにきてくれた。私は鬼コに会う前に軽くなにか食べたくなり、かき氷を食べた。だけきみの、かき氷を食べた。

美味しかった、だけきみが1番良い。これで安心して鬼コの元へ行ける。
車を走らせること十数分。バスや鉄道を乗り継ぐとあんなに大変なのに、あっさりと目的地へついた。しかし駐車場がなかった。ハザードをつけて車を停めて、鳥居に向かった。鬼コもまさかこれほどの熱量で自分に会いに来る30歳女性がいるとは思うまい。

民家と木々の間に一際目立つ鳥居、鬼コ
つやっつやだ
後で調べたところ、定期的に塗り直しているようだ。元々は製作者の名前が彫ってあったそうだが、色を塗った時に消えてしまったらしい。

物好きめ、、、とでも言いたそうなお顔

赤いふんどしがグッドです
会えてよかったよ
民家の間にひっそりあるタイプの神社、静かに手を合わせて、そそくさとハザードをつけた車に戻る。
三体の鬼コに出会うことができて、満足した。近くだったので猿賀神社にも寄った。どこかに鬼コがいないか探したが、見つけられなかった。この辺りも学習ボランティアで来ていたので、懐かしかった。確か図書館に塔があるんだ。
そろそろ時間になったので津軽尾上駅へ。弘南鉄道の車窓から夕暮れと岩木山を眺めながら弘前駅に戻った。廃線になったら嫌だなあと、「109渋谷」の文字が掠れた吊り革を見ていた。高校生が津軽弁でおしゃべりしていた。運動公園を通り過ぎて、教育実習のことを思い出した。あの頃は電車とバスよりも自転車と、ひろあきの車ばかり乗ってたな。
鬼コめぐりのつもりが、意図せず自分の、教育学部関連の思い出の土地巡りになってしまった。
伝承も、聖地も、特別な場所であると同時に、普通っぽい思い出があったり、誰かの当たり前の生活の場であったりするんだな。
過去と今と、古い歴史と、もう弘前に住んでいない私が交錯して、なんとも不思議な1日だった。
小さい神社にひっそり佇む鬼コたち
長い時間、津軽の人々の暮らしを守ってくれているんだろうな
次は、弘前の西側の鬼に会いに行きたい
ちなみに古津軽関係のデジタルスタンプラリーで鬼コをめぐるものあったんだけど、最初撫牛子で位置情報オフにしてスタンプ押せなかったゆえ、即アプリをアンインストールした。向いてない。また古津軽ウィークでオニー集めるのやりたいな