好きと言わせてくれない   作:布団は友達

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特に考えないで。


さらば、ロドスッッ!(1章〜8章)
Lycoris、死す!


 

 

 製薬会社ロドス・アイランドには、出自も経歴も多様な人材が揃っている。

 日夜このテラの大地に貢献すべく戦う我々、なんだけど……。

 

 

 

「我が姫! ――今日もそなたは美しい」

 

 機器のメンテナンス中に後ろから鳥肌の立つ声がした。

 私――クロージャは自分の顔が引き攣っている事を自覚しつつ振り返った。

 

「……レイ君、忙しいんじゃなかったのー?」

 

「そなたにまだ一日の挨拶を、愛を告げるという日課が果たされておらぬ故にドーベルマンの鞭より逃れて参じたッッ!!」

 

「いやいや、何したらそこまでされるのさ」

 

「作戦会議を後回しにしてきた次第」

 

「ちゃんと叩かれて会議に戻れば!?」

 

 けらけらと笑っている。

 裾がボロい古のカズデルの軍旗らしき物を服に仕立てた物を着ており、サルカズの大きな黒い角以外は包帯を厚く巻いて辛うじて鼻梁の輪郭のみ分かる怪しい風体。

 まるで幽鬼のような身なりなのに騒がしい事この上ない。

 

 ロドスオペレーター――Lycoris。

 

 こいつ、分かってるのかな……。

 皆がかつての指揮官――通称『ドクター』救出に向けた準備に取り掛かり、チェルノボーグを目指した計画を練っているロドス艦内はやや緊張感のある空気の中にあるというのに。

 彼の救助と帰還が果たされなければ行き詰まる事になるので、この任務がどれだけ重要か心得ているからこその空気感なのに。

 ……というか!

 何で帰還時の安全を高めるために動員される戦力の要ともいえるコイツは平常運転のポンコツなのさ!?

 

 

「あのさー。君も少しは気を引き締めなよ」

 

「それは叶わぬ相談だ、姫。我はドクターを好かん」

 

「いや……でもさ」

 

「それに、戻って来たとしてもあやつの作る戦争に我は二度と加担せん」

 

 ふん、とそっぽを向く包帯のサルカズ。

 ワガママだなぁ、と呆れつつあの種族の彼をしてそこまで言わせる状況にちょっと複雑な気持ちになる。

 

 ナハツェーラー。

 その種は、性質から戦にしか生きる事を許されない。

 振り撒いた災禍で死を育み、死者の苦辛を糧にして己を高める腐敗の血筋。

 その長たるネツァレムは、カズデルの教科書に載る程の偉人であり、弟子として戦の術を学んだ者には錚々たる伝説が揃っている。

 …………一名を除いて――。

 

 

『レイクァトム』

 

 

 

 その名は、ネツァレムの伝説に影を落とす。

 曰く「戦の化身が後継と目した才」

 曰く「未来の伝説にこの名が必ずある」

 曰く「腐敗を司る種の希望」

 ……いずれも聞けば何ら悪印象は皆無であり、神聖なるサルカズ十王庭の一角を担うナハツェーラーからしてみれば最大の名誉だ。

 しかし、先述の評判が霞むどころか粉々になるような悪評が付いている。

 

「テレジア殿下に一目惚れして求婚し、テレシス殿下に一日中斬り刻まれた」「バンシーの王子を姫と勘違いして求婚、河谷のすべてに呪われた」「戦争の一族ながら戦ではなく愛に生きた穢れしナハツェーラー」「戦神の恥」……etc

 

 ……とにかく酷い。

 昔、彼を連れてきたテレジア殿下は、何故かいつものように優しく微笑みながら。

 

『ナハツェーラーの王に根性を叩き直してと頼まれてしまったの』

 

 それだけで、とにかく酷い奴なのは分かった。

 しかし、事前情報に反して彼は大人しく、殿下の為に敵対勢力を平らげる働きを見せた。

 その戦闘力は凄まじくて、未だロドス……かつてバベルだった頃からオペレーター随一の戦闘力、制圧能力を誇るので一定の信頼を寄せられていた、んだけどさ。

 その後、女性オペレーターを口説く行為で頻りにケルシーに絞られまくるし、移り気で別の女性にアプローチしてまた叱られて……で全部台無し、戦闘能力、指揮能力もエリートオペレーターに申し分ないけど素行の悪さでケルシーによる処刑一歩手前。

 やっとテレジア殿下に優しく注意されて不承不承といった感じで慎むだけだ。

 コイツ、敵に美女がいたら寝返りそうだなんて陰口すら叩かれていた。

 

 

 ところが、バベル代表のテレジア殿下がいなくなって、ドクターも消えて、ケルシーすら急務でこの艦ロドス・アイランド号を空けた時に皆が挫けた。

 

 殿下に義理立てしていたサルカズの傭兵まで去って、てっきりレイクァトム君もナハツェーラーの王の下に帰るのかと思ったら――。

 

 

『そなたがいる事がここにいる理由となろう』

 

 

 それまで殿下のついでに話すくらいで一切私にはアプローチして来なかったアイツが、以来ムカつくぐらい口説いてくるようになった。

 遠目に見ていた被害が他人事ではなくなった時の恐怖といったら……ただ、いつものように他の女性オペレーターにはそんな事をしなくなったし、テレジア殿下みたいにアーミヤや感染者の子供に自作の絵本の読み聞かせを始めたりと少し変わってもいたっけ。

 それに、あたしが疲労で廊下でぶっ倒れてた時は近くの休憩所に運んでくれたりとかはしないけど……。

 

『我の身についた死臭が触れたら……と思うと恐ろしくてな』

 

 なんて、いつもガツガツくるのに直接触れるような事には変に怯えつつもオペレーター用の上着だけかけて一晩中一緒にいたりする一面もあったり。

 だから、まあ、根は悪いやつじゃない。

 そんな事が毎日になって、最初はひたすら嫌だったけど今ではそれほどでもない。鳥肌立つけど!

 

「見ての通り、あたしも忙しいの」

 

「夫婦の契りを交わそう」

 

「……はいはい。さっさとドーベルマンに謝ってきなよ」

 

「お、最初の頃のように即断らないという事は……返答や如何にンッ!?」

 

「――ここにいたか、Lycoris」

 

「その声と我が身を離すまいと情熱的に縛めるこの鞭捌き……ええいドーベルマン! く、その嗅覚の鋭さたるや愛しの姫の居所など掌を見るが如しの我が愛にも勝るぅンンンンンン……!!」

 

「邪魔したな、クロージャ。バカを連れて失礼する」

 

 ドーベルマンに鞭で引き摺られて彼は退場していく。

 

 

「わ、我が帰還するまでには返答をおおおお――あふんっ!?」

 

 

 変な声と鞭で叩く音がしたけど、あー聞こえない聞こえない。

 

 ま、ドーベルマンにこってり絞られれば反ドクター派といえど作戦を遂行するハズ。

 帰ってきた彼から逃げつつ、戻って来るアーミヤ達と連携する準備しとかないとなー。

 

 でも……嫌がってる任務から帰ってきた後に居留守は可哀想だし……ぐ、少しだけ労ってあげよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――クロージャ。Lycorisの自室から、遺書が一通だけ……君宛てだ」

 

 

 ……え。

 

 

 

 






 レイクァトム


 コードネーム : Lycoris
 陣営 : ロドス・アイランド
 性別 : 男
 職業 : 術師
 職分 : ???
 募集タグ : 近距離/遠距離/火力
 戦闘経験 : 十年以上
 出身 : カズデル
 誕生日 : 1月1日
 種族 : ナハツェーラー
 身長 : 194cm
 専門 : 児童相談、愛の伝道師?
 鉱石病 : 不明


 外見は姉弟子に似ているから気に入っている捻れた一対の黒い角、それ以外の頭部全体が包帯グルグル巻きの長身不審者。大師父をリスペクトしてお古のサルカズ軍旗を自身で服に仕立てて愛用、右半身を隠すトーガのような状態。


 類稀なナハツェーラーの戦才。
 ネツァレムが自身が滅んだ後の王庭の主として教練を施していたが、カズデルの両殿下への不敬な行動、ブラッドブルードの大君への無礼千万な発言(「おめーの血は骨董品ってだけで怖くねーよ(意訳)」)を始めとした素行不良……種族の中では異風な性格は壊滅的に相性が悪く、もしやテレジアの理想の中ならば活きてナハツェーラーに他の道を示す指標となるのではと一抹の期待と共に押し付……預けられる。
 初恋のテレジア殿下の指揮下で精力的に活動、ロドスに集う女性にも興味を示し、殿下の言うことしか聞かないでケルシーにボコられつつ反省しない。

 バベル崩壊、殿下が居なくなってから特定の人物以外へのアピールをぱったり辞めた。

 戦闘オペレーターとしての貢献、後進へのアーツ訓練、引き取った孤児や感染者の児童の保育活動……。
 配属初期に反し、性格以外はすべて備えていたとしてそろそろエリートオペレーターにとLogosからの推薦に賛否両論、ドクター救出後にアーミヤが採決を下すという結論で保留。



 チェルノボーグ事変にて、謎の死を遂げる。











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