光炎憧憬


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作:花見崎
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ちっぽけな勇気(リリルカ・アーデ)


「・・・??」

 

 

確かに刺された感覚はあった。完全に気を抜いていた。気を持ち直して視線を移すとそこには外套(フード)を被った小人族(パルゥム)が1人。

 

 

「・・・リリ?」

 

 

最後に見た記憶とはかけ離れてはいるものの、忘れるわけがなかった。【ヘスティア・ファミリア】の中でもヘスティア様を抜かせば1番長い付き合いで、参謀的存在。忘れもしないかつての仲間(リリ)だった。

リリから暗黒期のことについて何回か聞いてたし、どこかで生きているんじゃないかって思ってたけどまさかこんな形で出逢うとは思いたくなかった。

 

 

「ハッ、ハハ!やってやりましたよ!リリだぅてやれば出来るんです!」

 

 

何となくだけどリリの心境が分かった気がする。彼女は死にたがっているんだって。僕は本来辿るべき歴史(正史)を知らない。リリが当時、どんな思いで過ごしてきたのか。それを理解することは出来ないと思う。

 

 

だから、ぼくの行動は決まっていた。

 

 

「・・・手はそれだけか?」

 

 

あくまで僕らは無関係。殺し合う敵同士でも無い。手を取り合う味方でもない。()()()()()()()()()。そして()()()()()()()()()。たったそれだけの事なのだから。

 

 

「あなたもリリをっ!リリをバカにするのですか!()()()()だと!殺す価値すらないとそうおっしゃるのですか!」

 

 

彼女は今、失う訳にはいかない。

 

 

「違うな。戦う意思のないやつをいたぶる趣味は持ち合わせてない。それだけだ。分かったなら早く立ち去れ!」

 

 

リリは歯ぎしりしたまま離れようとしない。

 

 

「お前にもいづれ分かるさ。」

 

 

これ以上構っている訳にもいかず、立ち去ることにした。

 

 

・・・

 

 

正直全てがどうでもよかった。『金を集めてこい』と言っていた両親が死んだと聞いたとしても何も変わらなかった。

それでも、()()()()()()()()()がくれた温もりが生かしてくれた。それでもザニスが団長に就任してから全てが変わってしまった。

 

 

生きたいとも思わなかった。でも、モンスターに殺されるのだけは嫌だった。何度か目にしてきた冒険者たちの死に様を思い出すだけで足がすくんでしまう。

 

 

だからこそ、目の前に彼が出てきたのはある意味運命なんじゃないかと思ったくらいだった。

 

 

死ぬことに後悔はないが、死んででもあの人たちから嘲笑れることだけは耐えられなかった。

リリ自身の無力さは嫌でも自覚してる。Lv1のそれもサポーター専門のナイフなんてたかが知れてる。それに、何かの間違いで傷をつけたとて、ザニス達は歯牙にもかけないだろう。

 

 

言ってしまえば単なる自己満足だった。どうせ死ぬなら何なやり遂げてやろう。そして、向こうでザニスや両親に唾を吐けるような事をしてやりたかった。それだけだったのに。

 

 

「お前にもいづれ分かるさ。」

 

 

なぜ、リリは生かされたのでしょうか。

 

 

・・・

 

 

「リューさんが治療院を飛び出したァ!?」

 

 

【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院にアミッドの悲鳴がまた木霊する。

 

 

「あぁ、私達も朝気がついたんだ。アイツの事だ、そこら辺の闇派閥(イヴィルス)の連中に引けはとらねえだろうが・・・」

 

 

「リオンは妖精(エルフ)の中でも繊細すぎる。下手すりゃ二度と戻らないかもな。」

 

 

「一番傷が浅かったので大丈夫だとは思いますが、精神的にまだ癒えきれない部分がありますので心配ですね・・・」

 

 

「心配することはねぇよ。あたしらが探し出して連れ戻してくりゃいいんだろ?」

 

 

「迷子探しはワタシらの仕事だ。」

 

 

・・・

 

 

バベルの塔の最上階、そこで女神はオラリオを見下ろしていた。

 

 

「今まで見たことがないような透明で美しい魂。でも、そんな魂もどこか薄いような気がするわ・・・」

 

 

ワイングラスを傾けながら口端を釣り上げる女神。

 

 

「凄く美しいわ。例え敵でも私のものにしたいほどに・・・」

 

 

少し何かを考えるような素振りを見せ、再び口を開く。

 

 

「そうね、このままやられっぱなしってのもあれだから。ちょっとだけ悪戯、しちゃおうかしら。」

 

 

 

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