光炎憧憬


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作:花見崎
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親子


「オラリオの後進どもが、俺達を喰らって、『黒き終末』を乗り越えることを望む。」

 

 

「この世に『希望』をもたらすために。妹の子が、戦わずに済む世界にするために。」

 

 

オラリオの『未来』を望み、『絶対悪』に身を堕とした2人が望んだその先が訪れることは決してなかった。

『黒き終末』はオラリオを滅ぼした。

彼らの願い虚しく父親と母親の血に導かれ、オラリオを訪れた二人の子供(ベル・クラネル)もまた『黒き終末』に破れその命を散らすこととなる。

 

 

更にはその結果(ベル・クラネル)は今、ザルド達と共にオラリオに絶望をもたらし、『踏み台』となることを決めた。

『名前も顔も知らない相手から物騒な愛情』を押し付けられた子供が親に過去を遡ってまで愛情に報いる。これほど難儀なものは無い。

 

 

「なぁ、神友(ヘルメス)。お前ならこんな状況でも楽しんじゃうんだろうな。」

 

 

『これぞ下界の神秘じゃないか!』なんて、笑いながらもこの状況を楽しむんだろうか。

もし、アルフィア達にこの真実を伝えてしまえばあいつらはどんな表情をするだろう。

英雄達(アイツら)を黒い泥で穢し、罪人の烙印を押し付けた俺がこんな事を思うのは身勝手だと思う。ただ、()としてこれだけは言っておきたいことがある。

 

 

「1度でもいいから義母(はは)息子()として語らないのか?」

 

 

そう思うのはやっぱり()としてのわがまま(エゴ)なんだろうか。アルフィアが言うにはあの子は自分の両親の顔も、義母である彼女の顔さえも知らない。

正確には本人であって本人じゃ無い。それでも、死に別れた肉親が目の前にいるんだぜ?少しくらい喜んだって良いじゃねえか。わんわん泣きわめいたって良いじゃねえか。それが親と子ってもんだろ?

 

 

「恨むぜ、ゼウス。」

 

 

・・・

 

 

「この程度か?冒険者。」

 

 

「たっ、助けてくれぇぇ!!」

 

 

必死で逃げ惑う冒険者の背中を斬りつける。

ピクリとも動かなくなった屍の上をただ淡々と進み続ける。

何を目的とするでも無い。ただ無心に立ちはだかる冒険者たちを片っ端から斬り伏せていく。『本番』までの『嫌がらせ』。

 

もうウダウダと浅ましく過去を振り返るのはもうやめた。今、僕はオラリオの敵で、悪なのだと。そう心に言い聞かせる。

どんな不条理に押しつぶされようともカッコ悪くも意地汚くも何度でも這い上がってきたオラリオの冒険者(彼ら)ならちゃんと乗り越えて貰えるって信じてる。

単なる押し付けだと人は言うかもしれない。それでも、お義母さん達を見てきた今なら思うんだ。これは押しつけではなく()()のだと。

 

 

『勝者は常に敗者の中に存在する。』

 

 

大切な人に教えてもらった言葉のひとつ。

敗けるのはつらくって、悔しくて、苦しいことだけど、それでも人は前を向いて歩き続きられる。僕が夢見たオラリオなら絶対。僕らが成し遂げられなかった三大クエスト(悲願)だって成し遂げてくれるはず。

 

 

「見せてみろ!お前達の『正義』を!」

 

 

・・・

 

 

「現在、人手が圧倒的に足りない。負傷者の看護、亡骸の処理、及び市民の対応は、全てギルドの職員や有志の者に任せる。我々は対戦闘- 闇派閥の迎撃に全力を傾注する!戦える者はみな、群衆の盾となれ!」

 

 

「「はっ!」」

 

 

オラリオは人手不足に追われていた

昼夜問わず行われる闇派閥の襲撃により増え続ける負傷者や死者

減り続ける人員にオラリオはギルド職員さえ駆り出されていく

 

 

『恩恵』の受けていない戦闘慣れしていない人達は裏方に回されていく

闇派閥と戦える冒険者は軒並み迎撃に回っている。

 

 

「先に言っておく!敵に情けをかけるな!敵は自爆行為に躊躇がない!捕縛は不可能と判断した場合、速やかに撃破に移れ!決して奴らに隙を与えるな!」

 

 

「「了解!」」

 

 

「よし、行け!」

 

 

表面上では指示を出して団長として振舞っているシャクティは内心負い目

動かなければ死傷者が増えていたとはいえ、自分達が離れた結果【アストレア・ファミリア】壊滅にまで陥った。

悲観に暮れている時間はない。そんなことは理解できていても心のどこかでは捨てきれていなかった。

 

 

「お姉ちゃん・・・」

 

 

そんな姉をアーディは心配しつつも声をかけないでいた

否、かけられなかったという方が正しいか。

【ガネーシャ・ファミリア】団長である以上、指揮において冷静に対処する必要が出てくる

 

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

 

「敵襲だぁぁ!!!」

 

 

「慌てるな!『自爆装置』に気をつけて捕縛しろ!」

 

 

「しかし!て、敵はイアンです!」

 

 

「ちぃっ!今すぐ態勢を立て直す!Lvの低い者は他の地区の対応に回れ!」

 

 

「「「はっ!!」」」

 

 

低い戦力をぶつけた所で足止めにさえならないことはみえていた。それほどまでにイアン1人に対する戦力が大きすぎた。イアンにせよ、他の襲撃にしろ、無視することは出来ない。そらならばとLv1かLv2の団員は他の地区に回すことで被害の拡大を収めようとした。

 

 

だが、彼女たちはひとつ見落としていた

 

 

彼の()()

 

 

「ファイアボルト!」

 

 

先まで目の前にたっていたはずのイアンが一瞬にして消失し、直後背後から光とともに彼が現れ、魔法を放つ。

 

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 

魔法は見事後方部隊に直撃。散ろうとしていた部隊もろとも魔法を食らってしまう。

 

 

「やらせない!」

 

 

追い打ちと言わんばかりにロングナイフを振りかざす彼の懐にシャクティが潜り込んではじき返す

 

 

「お前らは急げ!間に合わなくなる前に!」

 

 

「「「・・・はい!!」」」

 

 

1度は動揺したものの、直ぐに建て直した1つの部隊が離れていく

 

 

「お前達の好き勝手になどさせるものか。貴様はここで倒す!」

 

 

お互いが距離を取り合った状態から睨み合いが続く。単純な殴り合いでもイアンに分がある。それでもシャクティは1歩も引きはしない。

【ガネーシャ・ファミリア】団長ゆえの誇りか。それとも民衆を守るための生き様か。無謀とも取れるような戦闘は突然やってくる。

 

 

「足掻いて見せろ冒険者ぁぁぁ!!」

 

 

 

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