光炎憧憬


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作:花見崎
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邪悪開演


「なんだ今の爆発は!?」

 

 

「たっ!大変です!突然の爆発によって死傷者多数!あちこちで火の手が上がり!街も半壊状態で!」

 

 

「あんたら一体何をした!」

 

 

「至極単純なことです。町中に()()()()起爆装置を発動させたまでのこと。それよりいいんですか?『合図』は出ました。もう止まりませんよ?」

 

 

「何を言ってやが・・・まさかてめぇら!?」

 

 

「えぇ、まだ続きますよ?」

 

 

オラリオが火の海に呑み込まれていく

民衆は逃げ惑い、悲鳴によって空気は満たされていく

 

 

「外の状況はどうなっている!フィンたちは!民衆は無事か!?」

 

 

「ほ、報告します!オラリオ全体の各箇所で爆発が起き!町中火の海で、家屋は半壊状態!民衆はパニック状態に陥り、更には闇派閥に襲撃され火の海と化しており!」

 

 

「爆発だと!?やはり奴らの目的は爆弾。前回の襲撃の時に使われなかったのもこのためか!」

 

 

「手のあいたものから早急に制圧に当たれ!民衆の避難誘導も怠るな!」

 

 

「「はっ!!」」

 

 

「アリーゼ、ここは任せていいか!」

 

 

「えぇ、分かったわ。ここは私たちに任せて!」

 

 

「行くぞ、アーディ。」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよお姉ちゃん!そ、それじゃみんなまたね!」

 

 

鎮圧に向かった【ガネーシャ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】に別れていく

アーディはこの場を離れることに一瞬躊躇したものの、シャクティの後を追っていく

 

 

「あら、追わないの?」

 

 

「追わせる気も無いでしょう?」

 

 

「そうね。私たちの仕事は貴方をここから先へ進ませないこと。あなたをここで逃してしまえばその先の惨状は目に見えているもの。」

 

 

「・・・続けましょうか。」

 

 

この時、初めてイアンは攻撃態勢に移っていた

【アストレア・ファミリア】含める猛攻を全ていなしてきた受け身一方の彼が初めて先手を打った時だった

 

 

「構えろ、なにか来るぞ・・・っ!」

 

 

彼自身の実力は未知数

圧倒的な実力差と獲物のロングナイフ

それだけが彼女たちが持っている情報(カード)だった

 

 

「何をする気なの・・・」

 

 

ロングナイフを手前に構え、右手だけを引いた構えで止まっている

誰が見ても彼が何かを企んでいることは明らかだった

それでも、その意図は彼女たちにはまだ理解できなかった

 

 

彼女らには魔法を撃とうとしていることはすぐに思いついた

それでも、どこか引っかかる点があった

 

 

魔法は『詠唱』無しには発動できない

『超短文詠唱』や『速攻魔法』でさえその例にはもれない

詠唱(こえ)無くして魔法は撃てない

 

 

だらこそイアンの真の目的は他にあると踏んでいた

迎撃に備え全員が息を飲み気を引き締める

 

 

 

 

 

 

ほんの、一瞬の出来事だった

 

 

 

 

 

外でうるさいほど鳴り響いていた爆発音が鳴り止み

 

 

 

 

 

静まり返った広場

 

 

 

 

 

鼓動ひとつさえうるさく聞こえるほどの静寂

 

 

 

 

偶然か必然か、生まれた静寂ひとつ

 

 

 

 

 

ゴォォォン、ゴォォォン

 

 

 

 

 

今まで外の雑音に消されていた大鐘楼の音が閉ざされた広場の中を誇示するように響き渡る

 

 

「ちっ!リオン!」

 

 

「分かっている!」

 

 

輝夜の声に反応したリューが魔法を詠唱し始める

その声に応える形でイアンに襲撃をかける

 

 

「【今は遠き森の空。】【無窮の夜天に鏤む無限の星々ー】」

 

 

詠唱を始める

目的はひとつ、イアンの妨害

とはいえ、魔法ではあまりにも遅い

だからこそ、魔法は1手に過ぎなかった

 

 

「行くぞ!」

 

 

残ったメンバーが近接を仕掛けていく

それでもイアンが動じることは無かった

接近により距離を縮めていく

その間2m(メドル)、彼に動きは見られない

そのまま打ち崩せる

 

 

 

 

はずだった

 

 

 

 

 

光を帯びた右腕が突き出される

一番に気づいたアリーゼが回避行動に移る

 

 

「危ないっ!皆避けてっ!」

 

 

「ファイアボルトォォォォォ!!!」

 

 

突き出された右手から稲妻の様な爆炎が放たれる

ギリギリで回避行動に移したアリーゼの真横を通過していき壁で爆発

爆風によって炎は広がっていく

 

 

「なんつー威力してやがる!」

 

 

「しかも詠唱無しだァ!?バケモンかこいつは!?」

 

 

爆風に煽られ、吹き飛ばされた彼女らも徐々に態勢を建て直していく

 

 

闇派閥(イヴィルス)はまだこんな化け物じみたやつを隠していたってのかよ!」

 

 

「さぁ立てよ冒険者・・・宴はまだ始まったばかりだぞ。」

 

 

・・・

 

 

「避難は迅速におこなえ!戦えないものや怪我をしたものは全員中央広場(セントラルパーク)に集めろ!」

 

 

【アストレア・ファミリア】と離れ、外の鎮圧へ動いた【ガネーシャ・ファミリア】は死兵に苦戦しながらも避難誘導に動いていた

本陣がしかれた『都市中央』へ集めることで犠牲者を1人でも減らしていく

それが唯一彼女らに残された択だった

 

 

それでも麻痺しかけていた指揮系統も回復してきたその時だった

 

 

「ほ、報告します!第一、第二、第四、第六区画で敵勢と衝突!」

 

 

「町中で起こる絶え間ない爆発・・・まさかヤツらの狙いは都市全域だとでも言うのか!?」

 

 

もとより険しい顔をしていたシャクティの顔からみるみる青ざめていく

最初こそ各ファミリアによって襲撃した拠点に備えられた『罠』だとばかり思っていた

敵の拠点だ、罠の一つや二つくらいあっても不思議ではない

だからこそ余計()()()に気づくのが遅れてしまった

 

 

タネはすぐそこにばらまかれていたと言うのに

 

 

「落ち着きなさい。冒険者の動揺は守るべき者達にも伝播する。」

 

 

そんな彼らの近くに女神アストレアが1人、声をかけていく

 

 

「貴方達はどうか、ここで力なきもの達のための盾に。ー私の名をもって星の加護を与えます。どうか、耐えて。」

 

 

女神の言葉に削がれかけていた戦意が再びよみがえってくる

 

 

「すまない神アストレア。不甲斐ない所を見せてしまった。」

 

 

「仕方ないわ。こんな状況ですもの。」

 

 

「ありがとう。」

 

 

・・・

 

 

「・・・・まだ立つか冒険者。」

 

 

「当たり前じゃない・・・っ、私がここで折れたらここから先の被害が甚大なものになるのは分かりきてる!」

 

 

「もういい立つな名も知らぬ冒険者。せめてもの慈悲だ、このまま死んだ振りをしたまま無様に見過ごすというのなら、その辺の仲間と共に殺さないでやる。」

 

 

もう既に意識の残っていた【アストレア・ファミリア】はアリーゼただ1人だった

壁は崩れかけ、地面は抉られ天井からは夜空が覗いていた

 

 

「まだよ!正義の剣と翼に誓って貴方を見逃すわけにはいかない!」

 

 

剣を杖代わりにしてフラフラと立ち上がるアリーゼ

圧倒的実力差も尚立ち上がろうとするのは彼女の信念故だろうか

 

 

「まだ夢を見る青いお前に教えてやる。『正義』なんぞ人の業が勝手に生み出した反吐の出るような『空想』だ。『正義』も『悪』も、どっちも人が人を貶め、自己を正当化するだけの『道具』でしかない。『正義』は『悪』であり『悪』とは『正義』なのだ。」

 

 

「そんなことは無い!」

 

 

「あくまでも自己を貫き通すと言うのならその力を持ってかかってこい。昔から利己の押しつけ合いの果ては戦闘だと決まっている。全て圧倒的な力で押し潰す。」

 

 

「くっ・・・!」

 

 

残った力をふりしぼり、イアンに剣を振りかざすも

力のこもらない剣戟は全て彼にいなされる

 

 

「魔法の直撃は痛かろう。せめてもの慈悲をもって楽に死なせてあげましょう。」

 

 

「(ごめんなさい皆・・・アストレア様・・・私、先に向こうで待ってるわね)」

 

 

ズシャアアッ

 

 

ロングナイフによる一撃

この一手によりアリーゼの意識は完全に絶たれた

 

 

再び静まり返った戦場

その中を1人の男が悠然と歩いていく

 

 

「神時代はもう時期終わりを告げる。他ならぬ僕たちの手によって。」

 

 

カツッカツッと、男の足音のみが無機質な広場に響き渡る

炎によって照らされる彼の顔に表情など無かった

 

 

「故に果てろ、冒険者。」

 

 

誰に言うでもない言葉がむなしく霞と消えていった

 

 

 

 

 

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