光炎憧憬


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作:花見崎
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正義とは何か


「ぐあああああ!!!」

 

 

「施設を制圧するわ!ネーゼ、マリュー!イスカ達を連れて散って!私達本隊は奥まで行く!」

 

 

制圧作戦は不気味なまでに静かすぎた

闇派閥の悲鳴も、各所から聞こえてくる金属音も

彼らを制圧せんとする冒険者たちの掛け声も

まるで嵐の前の静けさだと言わんばかりにただただ静かに冒険者たちを迎え入れていた

 

 

「1人たりとも逃すな!全員無力化し、捕縛しろ!」

 

 

闇派閥は1人ずつ捕らえられていく

状況的にも闇派閥側が不利なのは目に見えているはずだった

押しているのはこちら側なのに目に見えない不安によって焦燥感だけが増していく

 

 

「通路奥!後は上!来んぞ!」

 

 

「任せて!」

 

 

「青二才、右をやれ。逆は私が仕留める。」

 

 

「言われなくとも!」

 

 

彼女達は極めて冷静だった

ある種の不安感を抱きながらも確実に制圧していく

 

 

「-【ルミノス・ウィンド】!」

 

 

リューが放った魔法によって次々に闇派閥が吹っ飛ばされていく

 

 

「魔導士でもねえのに相変わらず馬鹿げた砲撃!敵もあらかた吹っ飛ばしたし、こりゃ楽勝だぜ-と言いてえが。」

 

 

「あぁ、()()()()()()()()()()。」

 

 

「やはり罠をこさえているか。敵の拠点であるなら防衛手段の存在は然るべきではあるが・・・」

 

 

「だとしても作戦続行よ!相手も既に施設内の人員を大勢失ってる!このまま最後まで畳み掛けるわ!」

 

 

それでも彼女達は止まらない

例えその先に待つのが地獄だとしても彼女達に撤退という選択肢は存在しない

 

 

「・・・!道が開ける!最深部!」

 

 

長く続いていた道がの先に開けた広場に突入する

彼女たちを待ち受けていたのは闇派閥の幹部ではなく、彼女達と認識もあるイアンだった

 

 

「やぁ、いらっしゃい。」

 

 

彼女達の奇襲に驚きもせず、笑顔で向かい入れる白髪の少年

その笑顔に含みは無かった

ただ純粋に笑顔で歓迎しようとした上での笑顔であった

 

 

「貴方はやはり・・・」

 

 

「意味の無い押し問答は辞めましょう。どうせ【勇者】達にも知れ渡っているのでしょう。」

 

 

「・・・ひとつだけ聞かせて。」

 

 

臨戦態勢の中、様子見から入った両者に長い沈黙が生まれる

それはアリーゼによって破かれる

 

 

「貴方が私たちの敵ということは理解したわ。でも、一つだけ腑に落ちないことがあるわ。貴方はどうしてオラリオの人達を助けるような真似をしたの?」

 

 

アリーゼ達がイアンと初めて遭遇したあの日から、今日に至るまで

少なくともアリーゼ達が分かっている点での彼の行動は全て慈善活動と呼べるものだった

怪我している人あらば簡易的ではあれど駆け寄り手当を施し

腹がすいた子供あらば懐から分け与える

 

 

誰がどう見てもお人好しな素性のしれない良い人だった

それがどうして闇派閥と手を組んでいると思おうか

 

 

「・・・愚問ですね。」

 

 

彼は笑った

 

 

「僕が彼らを放っておけなかった。それだけです。何かおかしいですか?あなた達も似たようなことやっているでしょう?」

 

 

「・・・」

 

 

「それとも、『悪』は人助け(いいこと)をしちゃいけないとか言う理不尽を押し付けるわけじゃないでしょう?」

 

 

「分かってるの?あなたが助けていた人達をこれから貴方は傷つけることになるのよ?」

 

 

「先のことを考えてまでする人助けに()()なんてあるんですか?」

 

 

「・・・分かったわ。ありがとう。」

 

 

「それにしてもフィンさんはいませんね・・・本当にあの神の勘はよく当たる。それにしても大分お早いご到着なご様子で。まさに電光石火の早業ですね。」

 

 

妙に間隔の長い拍手とともに賞賛を送るイアン

 

 

「言葉と顔が一致してねーぞ。薄っぺらい芝居くらい隠しやがれ。・・・何を隠してやがる」

 

 

「そうですね・・・この後の展開でしょうか?」

 

 

「施設内は制圧した!兵士もほとんどを捉えている!大人しく投降しろ!」

 

 

「もうちょっと喋っていたいんだけどなぁ・・・もういいよ、君たち退散しちゃって。」

 

 

「で、ですがイアン様!ここで貴方様を失うわけにわ!それに我々にはまだ()()が!」

 

 

「やはりと言うべきか、伏兵がいましたか。」

 

 

「.しかも結構な数だよ!」

 

 

「安心してください、彼らは隅っこで見学してるだけですから。」

 

 

「随分と余裕そうだな。この数を相手に1人で相手にするつもり!?」

 

 

「もとよりそのつもりでした。生かさず殺さず遊んでやってくれ。これがあの神からの伝達でした。」

 

 

相変わらず浮かべ続けるその笑顔に少しだけ含みが生まれた

 

 

そんな気がした

 

 

「おやおや、随分と私達を舐め腐っておいでのご様子で。」

 

 

「気ぃ抜くなよ。やつは実力者だ。それも恐らくは幹部と同等。考えたくもねえが最悪それ以上だってあるんだからな。」

 

 

「えぇ、そうね。でも、やるしかないわ。」

 

 

「始めましょうか。結果はどうあれ、この戦いはあくまで序章に過ぎないことを遅かれ早かれ気付くでしょう。」

 

 

そう言って彼はロングナイフを取り出し構える

 

 

「へぇ、ちゃんと良い武器持ってんじゃん。」

 

 

「なんだかんだで気にいってるんです。この武器。」

 

 

一対多数による戦闘は言わずもがな有利なのは多数派だ

多勢に無勢という言葉があるように、数の暴力とは時に実力をもひっくり返せる要因になる

そこに駆け引きや単純な実力差、フィールド等々の原因によってその有利不利はいくらでも変えられる

まさに今がその状況だった

 

 

数で勝るといえど、考え無しに突っ込むのは愚策でしかない

正確な指揮下で動いてこそその力は十二分に発揮されるのだ

 

 

「ぐっ、決して油断はしたつもりはありませんがまさかここまで強いとは!」

 

 

「あまりにも戦い慣れすぎている。不利な対面は避けつつも確実にこちらの戦力だけを削ぎ落としている!」

 

 

彼を捉えるべく、時に2人、はたまた3人で絶え間なく攻撃を図るものの全ていなされ、1人また2人確実に戦線離脱(リタイア)させることで着実に戦力を削っていく

 

 

驚くべきはその精度、ロングナイフを器用に使い、向かってくる攻撃を逆に利用することで上手く捌いていく

 

 

「このままではジリ貧になる一方だ。何かほかに策は無いのですか!」

 

 

「喋ってい余裕があるならその高貴な頭をお使いになってその策とやらを捻ったらいかがです?」

 

 

こんな状況下でも口喧嘩の絶えない2人は相変わずと言うべきか

それとも焦りを隠すための行動なのか

 

 

「素晴らしい剣戟ですね!こんな状況でなければずっとこれからも受けていたいくらいです。」

 

 

「よく言うぜ、その全てをいなしながら素早く一撃加えてる時点で嫌味だっつぅの。」

 

 

「僕は褒めてるんですよ。純粋に。」

 

 

「けっ、そうかい。」

 

 

それでも上級冒険者になってくるとお互いに一撃が出ない近郊状態に陥ってくる

 

 

「・・・何を企んでやがる。」

 

 

「何がですか?」

 

 

「とぼけるんじゃねぇ。フィンほど確実性はねえが、嫌な予感がすんだ。」

 

 

「・・・そうですね。答えはYesとでも言っておきましょうか。」

 

 

「案外あっさりだな、もう少し粘ると思ってたんだがな。」

 

 

「ここで嘘をついても仕方ないでしょう。いずれにせよあなた方に何ができるとも思えませんし。それともうひとつ、あなた方はひとつ勘違いをしていらっしゃる。」

 

 

「どういう事だ!」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

彼はより一層不気味な笑顔を浮かべる

その時

 

 

 

 

ドゴォォォォォンッ!!!

 

 

 

「お待たせしました。ここからが本番です。」

 

 

長い長い7日間の戦争の火蓋が切って落とされる

 

 

 

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