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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
小さな女王様

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二巻特典SS 光也くんコミュ 職業選択の自由 2024/12/16 投稿

 私達帝都学習館学園カルテットの四人の中で一番職業選択の自由があるのは光也くんだろう。

 私は華族という血から逃れられず、栄一くんは帝亜グループを継ぐ事が約束されている。

 裕次郎君も、自治体議員か国会議員かはともかく、政治家としての道を外れる事はできないからだ。

 同時に、真っ先にその職業選択を官僚と決めたのも光也くんだったりする。


「光也くんってどうして官僚になりたいの?」


 放課後の図書室。

 宿題を片付けていた私と光也くんは、宿題が終わった安堵感からなんとなしに雑談を始める。

 これは、そんな雑談の一つである。


「祖父や父が官僚だったというのもあるけど、だからといって俺がそれを継ぐ必要はないな。

 ただ、面白いなと思った」


「何が?」


「システム」


 首をひねる私に、光也くんは椅子の背もたれに体を預けて背伸びをする。

 窓の日は黄昏色に変わろうとしていた。


「人が組織だって動く時、その方向性は差異があれども似てくるんだ。

 意思があり、役割があり、行動がある。

 その結果が更なる意思を……そうやって人はここまでやってきた。

 それが面白いなと思ってな」


「それが、どう官僚と繋がるの?」


「桂華院。

 お前はパソコンについてはどれぐらい知っている?」


 ITで財を成した私にそれは釈迦に説法のような気もするのだが。

 とはいえ、それをここで言うほど私も愚かではない。

 机に腕を組んで顎を乗せて話の続きを促す。


「そこそこ知っているつもりだけど?」


「ハードが国としよう。

 だったら、ソフトは官僚だ。

 ハードディスクが国民という所かな」


「なるほど。

 光也くんはこの国のOSの一部になりたいのか」


 パソコンはOSことオペレーティングシステムがないと動かない。

 なお、そんなOSが近年発売されて、IT革命が花開いていた。

 ついでにいうと、そのIT革命で巨万の富を築いたのが私だったりする。


「国というものは法律に動いている。

 という事は、法律をどう動かすかという事で国が動くんだ。

 これ、パソコンのプログラムとかに似ているだろう?」


「なるほど。

 ただ、パソコンは間違えないけど、人は間違えるわよ」


 私はため息とともに苦笑し、光也くんは私と同じように苦笑する。

 その笑い方が実に大人びているのが少し背伸びしているようにも見えた。


「そこがおもしろいと思った。

 実は、この間誕生日にパソコンを買ってもらって、触っていたらこれに気づいた。

 官僚になると決めたのはそれに気づいた時だよ」


 思ったより選択は最近したらしい。

 そんな会話の後、今度は光也くんが私に尋ねた。


「折角だから聞いておくか。

 桂華院は、資格を取って社会人になってOLに将来の夢に書いていたが、本当になれると思っているのか?」


「さあね。

 けど、夢だからこそ、好き勝手に書いて構わないでしょう?」


 私は知っている。

 桂華院瑠奈が破滅した時、その夢すら叶うのが難しいだろうという事を。

 前世の私は、その夢の果てに死んでしまったという事を。

 言うつもりはないが。


「桂華院も他の女子と同じようにお嫁さんと書くと思っていた」


「あら、どうして?」


「嫁ぐ事を宿命づけられているじゃないか。華族のお嬢様なのだから」


 光也くんの指摘に私はぽんと手を叩く。

 前世の記憶に引きずられるが、私も華族のお嬢様である。

 それも公爵令嬢。

 なかなかの格を持つお嬢様なのである。

 ゲーム内では、その内情は火の車だったのだが。


「そうね。

 きっとお見合いをして結ばれるのかしらね。

 けど、恋愛結婚も悪くないかもね」


 そんな事を適当に言う。

 自分がお見合いをして結婚するという先の未来がいまいちリアリティーが持てないのだ。

 少しだけ真顔で光也くんがこんな事を聞いてきた。


「桂華院。

 お前が恋愛結婚をするとした場合、どんな男と結婚するんだろうな?」


「うーん。

 せめて、私を振り向かせるだけの何かを持っている人かな?」


 疑問形で私は答える。

 その答えに光也くんは笑った。

 黄昏色の日に照らされた光也くんの顔は大人びて凛々しく見えた。


「桂華院らしいな」


「なんでそこで笑うのよ?光也くん?」


「さあな」


 はぐらかす光也くんを追求しようとする私の耳に下校の鐘が鳴る。

 教科書やノートをランドセルに居れて、私たちは図書室を出る。


「桂華院。送るよ」


「送るって校門まででしょう?

 いいわよ」


「どうせ帰る方向はさして変わらん」


 そんなことを言いながら廊下を歩き、玄関で靴を履き替えて外に出る。

 外はすっかり黄昏ていた。

 校門前には車が来ており、運転手の茜沢さんがドアを開けて待ってくれていた。


「こういう一日も悪くないわね。

 じゃあね。光也くん。また明日」


「ああ。

 桂華院。また明日」


 多分、大人になると忘れてしまう一日。

 それでも、こんな一日があったという事を、今の私は忘れるまでは覚えておこう。 

 職業選択の自由

 憲法22条。

 なお、これのCMがあり、一躍流行した。


 恋愛結婚

 この時期はトレンディードラマの絶頂期に当たる。

 月9ドラマで大流行た『やまとなでしこ』が放映されたのが2000年10月から12月。

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― 新着の感想 ―
職業選択の自由〜 って 懐かしいですね。 今じゃ……。
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