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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
小さな女王様

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二巻特典SS 裕次郎くんコミュ 泉川太一郎を応援する会にて 2024/12/8 投稿

「ですから、これからの北海道にとって泉川太一郎参議院議員は必要なのであります!」


 札幌の桂華ホテルのホールで北海道経済界の重鎮がスピーチをするたびに、泉川太一郎参議院議員は夫人と共に頭を下げていた。

 そんな様子を私は裕次郎くんと共に端で見ていたのである。


「すまないね。わざわざ北海道にまで来てもらって」


「お互い様よ。

 この会を北海道で開かないようならば、かえって次はないと見られるわよ」


 この手のパーティーは地方では格式があり、地方の名の通ったホテルでするのが本来ならば通例である。

 だが、今回は北海道開拓銀行を救済した桂華グループが支援をしたという事で、桂華ホテルが選ばれたという経緯がある。

 そのため、東京から一流シェフを臨時で雇い北海道に送ったり、同じく救済した帝西百貨店グループのホテルから一流スタッフを北海道に派遣したりとドタバタを水面下でやらかしていた。

 参加者の反応を見ている限りでは、そのあたりのドタバタはばれていないか、口にしない程度の成功は得ているみたいなのでほっとする。


「いずれ、北海道における桂華の象徴みたいなホテルを建てないといけませんな」


 裏で苦労した橘がぽつりと漏らしたのを私は聞き逃さなかった。

 旧北海道開拓銀行本店の本社機能が東京に移転するのとビルの老朽化から建て替えを検討しているとか。

 それを見越しての発言なのだろう。

 話がそれた。

 東京暮らしの私と裕次郎くんがわざわざ裕次郎くんのお兄さんの選挙報告会に顔を出したのは、彼の当選に私が多大な支援をしていたからに他ならない。

 橘を使って資金的支援をしただけでなく、救済した北海道開拓銀行の人脈を利用して北海道経済界に顔を繋いであげたのだ。

 そのかいもあって、彼の後援会には北海道経済界の重鎮がずらりと名前を連ねていた。


「けど、これで参議院議員を六年するとして、次はどうするの?」


「僕もそこまでは聞いていないな。

 兄さん次第だろうね」


 いずれは彼の父親である泉川辰ノ助副総裁も引退する。

 その地盤を継げるかというと少し難しい所がある。

 衆議院議員は解散があって任期がぶれるのに対して、参議院議員は任期が六年と長期間で固定されている。

 このため、鞍替えがかなり難しいのだ。

 何しろ、議員は落ちてしまえばただの人である。

 自分の任期が残っている中で、落ちるかもしれない選挙を経て衆議院に鞍替えするのは、それ相応の覚悟がいる。


「もし、衆議院議員になったら、総理大臣を目指すのかしら?」


「どんな業界でもそうだと思うけど、トップを取る気概は持たないと続かないよ」


「それもそうね」


 改めてパーティ会場を眺めると、泉川太一郎夫人がこまめに会場の輪の中に加わって握手をしていた。

 頭を下げるわ握手をするわで議員の奥さんというのは大変だなという言葉しか出てこない。


「議員の奥さんって大変ね」


「否定はしないよ」


 私の呟きに裕次郎くんが反応する。

 当人もいずれは議員になる運命なだけに、彼の兄の姿は自分の将来の姿と捉えているのだろう。

 なお、ゲームのエンディングの一つに主人公の小鳥遊瑞穂と共に選挙カーに乗って選挙を戦うシーンがある。

 選挙の途中の絵だが、きっと当選するのだろうなという一枚の絵は私の心の中に鮮明に残っている。


「けど、それでもああやって笑顔で奥さんが握手しているのを見ると、お兄さんがとても素敵な人なのだろうなってのは分かるわ」


 私の言葉に裕次郎くんは何も答えなかった。

 そんな夫人が私たちの所にまで来た。

 疲れも見せず、笑顔で私たちを子供と侮ったりはしない。

 泉川参議院議員誕生の一端は間違いなくこの人になるのだなと分かった。


「桂華院さん。

 今回は、主人を助けてくれてありがとう。

 お礼を言わせてくださいな」


「私はたいした事はしていません。

 今、この場にあの人が立っているのは、泉川議員と夫人の尽力の結果です」


 夫人が手を差し出したので私はその手を握る。

 握手をしながら、夫人は裕次郎くんに冗談を言う。


「裕次郎さん。

 この人は絶対に逃したら駄目よ」


「義姉さん。

 冗談はやめてください」


 焦って顔を赤める裕次郎くんが可愛かったので、少しだけその冗談に乗る事にした。

 あくまで雑談の体を装って、こんな事を口にする。


「私、夫人を見て議員の奥方は無理だなと思っていましたが、隣が素晴らしい人ならばなってもいいかなと」


「あら、その素晴らしい人の条件って何なのかしら?」


 夫人と私は裕次郎くんを見たまま。

 裕次郎くんは何を言われるのかと身構えているのが丸わかりである。

 そんな彼に、こんな冗談をぶつけたのである。


「それはもう総理夫人にしていただけるのならば」


 私の冗談に夫人は楽しそうに笑い、裕次郎くんはついに視線を逸らした。

 そして、少しだけ真顔で私にこう告げたのである。


「これからも裕次郎くんを支えて頂戴ね。

 未来の総理大臣夫人さん」


 と。


 拓銀本店の再開発

 現実ではビルの老朽化で2007年解体。2010年に『北洋大通センター』としてオープンする。


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― 新着の感想 ―
気になる点  作者様のスタイルだけど、ずいぶん後からエピソードを付け加えて物語自体を校正していくのって、読みにくいです。最新話の話数がずれてるのを見つけるたびに、目次を頭から見て投稿日時で調べてるけど…
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