《初の甲子園春夏連覇、完全試合達成…。野球選手としての「勲章」は、あまたある。もっとすごいのは、30年以上にわたり、プロ野球の監督・コーチとして指導を続け、多くの名選手を育てたことだ》
来月1日で満81歳。コーチ業は67歳で辞めましたが、生活は今も野球中心ですね。毎春、プロ野球各球団のキャンプを訪ねて取材をするし、少年野球の指導など野球の普及・振興にも取り組んでいます。日本のプロ野球や米メジャー(MLB)のテレビ観戦も欠かしません。
目が行くのはやっぱり、ピッチャーですね。特にドジャースの山本由伸(よしのぶ)投手の投球フォームはすばらしい。投球モーションに入ってボールをリリースするまでの動きにまったく無駄がありません。スムーズに、同じフォームから155キロくらいの真っすぐ(ストレート)をビシッと投げ込む。
ランナーが出たとき、投手は盗塁を防ぐためにクイックモーションにしますが、山本投手はランナーがいないときでも、クイックのように投げられる。とにかく投球フォームが少しも崩れないのがいいですね。
〝二刀流〟の大谷翔平選手ですか? 「投手・大谷」は、さらに速い160キロを超える真っすぐを投げますね(※公式戦での大谷投手の最速記録は165キロ)。ただ、山本投手とは「投げ方」がまったく違う。
あくまで私見ですが、大谷投手のピッチングフォーム、特に上半身の動きに対してアドバイスがあります。ボールをリリースした後に上半身が少しだけ右側に流れるクセを修正すれば、すべての力がボール(の勢い)に伝わるようになると思うのです。大谷投手は、鍛え込んだ体とあれだけのパワーを持った選手です。フォームを修正すれば、170キロだって出せる可能性があるんじゃないか、と期待していますよ。
(同じロッテ出身、完全試合でも後輩の)佐々木朗希(ろうき)投手はボクが見る限り、レギュラーシーズンでは投球フォームがバラバラになっていました。あれではボールに力が入りません。スピードが落ちていたのもそのせいかもしれません。でも、ポストシーズンになって見事に「復活」しましたね。それもフォームを修正しバランスがよくなったからでしょう。今後のさらなる活躍に期待しています。
とにかくボクの指導者としてのモットーは「故障をさせないこと」。投球フォームに無駄があると、故障(ケガ)につながりかねませんから。
《公益社団法人「全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)」理事長に就任したのは平成26年。プロ12球団の選手、監督、コーチ、スタッフなどとして野球に関わったOB約1300人が会員になっている》
初代トップは、川上哲治さん(※巨人監督としてV9達成)。続いて、大沢啓二さん(※日本ハム監督などを歴任。ニックネームは〝親分〟)が就きました。野球のさらなる普及と技術向上を目的に、少年野球の指導から、さまざまな啓発イベントやチャリティー、草野球の〝代打〟まで、お手伝いしています。とにかく球界を盛り上げることなら「何でも」。
ボクらの思いは、現役時代にスタンドからお客さんに応援してもらった「お返し」を少しでもしたい。「野球って面白いんだ」ってことを、もっともっとみんなに伝えたいんですよ。(聞き手 喜多由浩)
八木澤荘六
昭和19(1944)年、栃木県出身。37年、作新学院の甲子園春夏連覇時のエースとして活躍(夏は急病で出場機会なし)、早稲田大を経て42年、プロ野球・東京(現千葉ロッテ)にドラフト1位で入団。48年、史上13人目の完全試合を達成した。54年に現役引退後は千葉ロッテ監督、西武(現埼玉西武)コーチなどを歴任した。