《アメリカで誕生した野球は明治の時代に日本へと伝わり、たちまち人気スポーツに。今や世界中で行われる競技となり、野球を取り巻く環境も大きく変わっているようだ》
日本人選手が米メジャー(MLB)へ行くのはもう当たり前の時代になりましたね。日本の野球の技術レベルは間違いなく向上していますが、日本選手のフィジカル(体力)面のレベルアップも見逃せません。
ボクらの時代、特にピッチャーは筋力アップを目指したウエートトレーニングは、しませんでしたが、今はみんながやっている。だから、150キロのボールを投げるピッチャーがどんどん出てきたでしょう。
球種の数も増えました。昔はストレートにカーブ、シュート、スライダーくらい。フォークを投げるピッチャーはまだまだ少なかった。今では、覚えきれないほどある。カットボールとか、スプリットとか、ね。日本人投手は、こうした多様な変化球にもたけています。
そうそう、子供たちに変化球を投げさせることを「体によくない」と批判する向きもあるんですが、ボクはそんなことはないと思いますね。変化球でも正しい投げ方を教えれば、故障することはありません。
メジャーでは試合のスピードアップも図られています。というのも五輪で野球が採用されたり、外されたりする一因として「試合の長さ」への批判があったからですよ。3時間も4時間もかかるのでは見ている方も疲れてしまう。今のメジャーでは投手側も打者側も時間制限が設けられた。バッテリーのサイン交換で電子機器を使うことも認められています。テンポよく試合が進むことになって観客も気持ちいいですよ。
《日本のプロ野球はどうか? サッカーのJリーグ誕生(平成5年)で人気の陰りを指摘されたこともあったが》
日本のプロ野球も変わったと思います。一番は球場の環境がすばらしくなったことでしょうね。都会の球場だけでなく、地方でも整備が進み、きれいになった。ドーム球場も増えて、雨や雪などに影響されません。
外野のフェンスも昔はコンクリートだったから、激突して大けがをする選手も少なくありませんでした。今や柔らかいラバーなどのクッションに変わり、外野手は思い切ったプレーができる。ホームランになりそうな打球をキャッチしたりして、スリリングなプレーを見られるお客さんは大喜びです。
実力の面でも昔より間違いなくアップしていますが、こうした球場の整備など環境面の変化がプロ野球人気を大いに盛り上げていると思いますね。
《かつて「根性」「熱血」など精神性が重んじられた指導の面ではどうか?》
メジャーのTV中継を見ていると、大谷翔平選手(ドジャース)がダッグアウトでタブレットで自分の打撃フォームなどを確認しているシーンが見られるでしょう。パソコンなど電子機器を駆使したデータ重視のやり方は当たり前になりました。打球や投球の行方や過去のデータを流し込んで瞬時に確認することができるのです。
日本の球界でも、昔ながらの〝鉄拳制裁〟や〝根性野球〟など、厳しい指導のやり方は姿を消しました。たちどころに批判されてしまいますから。
大学の野球部の練習風景も変わりましたね。ボクらの時代なら全員が集合して、プレーしない選手は球拾いなどに駆り出されたものです。それがイヤで辞めてしまう選手もいましたが、今は時間を変えて、全員が練習できるようにしている。自主性も重視されますから、コーチは出番が減ったかも(苦笑)。(聞き手 喜多由浩)