FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。
時価総額1068億円のカバーに対し、ANYCOLORの時価総額は3878億円と4倍近くまで差が開いた――。
バーチャルYouTuber(VTuber)事業を展開する大手事務所2社、「ホロライブ」を運営するカバー(東京都港区)と「にじさんじ」を運営するANYCOLOR(東京都港区)の明暗がくっきりと分かれている。
一時はカバーの方が時代の寵児としてもてはやされたこともあったが、なぜこれほどまでに差が開いてしまったのだろうか。
2024年以来、カバーの株価は48%近く下落しているのに対し、ANYCOLORの株価は70%程度上昇している(11月18日時点)。所属Vtuberの卒業ラッシュが続いた2024年は両者とも株価を落としているが、2025年の4月以降から株価の差は歴然となった。
VTuber事務所は当初、アバターの権利を保有することで演者の独立や流出リスクは低いと目されていた。しかし人気Vtuberが相次いで卒業し、新たなアバターの下、会社に属さない「個人勢」に移行する動きが目立ってからというもの、アバターの権利に本質的な価値は薄いことが露呈した。
ふたを開ければ既存の芸能事務所と同様の「属人性リスク」を内包していることが明らかになったのが、2024年の動きである。
2025年になって、ホロライブの「属人性リスク」はより明白になる。4月にはVtuberとして世界一の登録者を誇っていた「がうる・ぐら」が卒業した。また、国内で主力級の人気があった「沙花叉クロヱ」「紫咲シオン」が相次いで配信活動終了ないし卒業。活動休止となったVtuberの「暴露投稿」をめぐる炎上問題など、IP(知的財産)の根幹となるタレントのトラブルが続発した。
こうしたトラブルを反映してか、カバーの2026年3月期第2四半期(7~9月)決算は、営業利益が前年同期比33.3%減の16億9300万円となった。
対照的に、ANYCOLORは2026年4月期第1四半期(5~7月)決算で、営業利益が前年同期比157.6%増の70億400万円と、四半期として過去最高を記録した。2024年にかけて続いた主力タレントの卒業が沈静化する一方で、事業運営の軸足がタレントそのものよりもグッズや企業案件へ移行したことも、記録的な収益性を記録した要因だ。
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