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小野田経済安保相「悪いことをする外国人は日本にいない状況を」発言の真意〜統計・報道・政治のトライアングル〜

2025年11月18日、日本経済新聞の記事が波紋を広げた。
「小野田紀美経済安全保障相『悪いことをする外国人は日本にいない状況をつくる』」

X(旧Twitter)では賛否が真っ二つに割れた。「当然のことだ」「排外主義だ」——感情的な反応が飛び交う中、ふと疑問が湧いた。

実際の統計データはどうなっているのか?
小野田大臣は本当に何と言ったのか?
報道はどう「切り取った」のか?

冷静に検証してみたい。


小野田紀美氏とは——その役職と立場

まず、発言者の立場を明確にしておこう。

小野田紀美(おのだ きみ)

  • 生年月日:1982年12月7日(42歳)

  • 出身:アメリカ・イリノイ州シカゴ(父アメリカ人、母日本人)

  • 現職:参議院議員(自民党、岡山選挙区、2期目)

高市内閣での役職(2025年10月21日就任):

  1. 経済安全保障担当大臣

  2. 外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣(新設ポスト)

  3. 内閣府特命担当大臣(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策、人工知能戦略、経済安全保障)

注目すべきは、高市早苗首相が新設した「外国人との秩序ある共生社会推進担当」を兼務している点だ。高市首相は自民党総裁選で外国人政策の「司令塔」機能強化を公約に掲げており、小野田氏はその中核を担う。

小野田氏自身がハーフであり、国際的背景を持つ。この経歴が、後述する発言の受け取られ方に複雑な影を落とす。

さらに特筆すべきは、小野田氏と安倍晋三元総理との関係だ。2022年の参院選で安倍元総理は銃撃される前日夜に小野田氏の演説会に駆けつけており、そのXへの投稿が「最期の投稿」となった。11月の記者会見で山上被告について問われた小野田氏は「(気持ちの整理は)一生つきません」と述べ、強い感情を示している。

この経歴を踏まえると、外国人政策担当としての彼女の立ち位置は、一見矛盾しているかに見える。


小野田大臣は実際に何と言ったのか

時系列で発言を追ってみよう。

■ 10月22日(就任会見)

「ルールを守らない方々への厳格な対応や、外国人をめぐる情勢に十分に対応できていない制度の見直しを進める」

「国民が不安や不公平を感じる状況が生じている」

■ 11月17日(日本経済新聞などのインタビュー)

「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に毅然と対応する」

悪いことをする外国人は日本にいない状況をつくる

「ルールを守って暮らしている外国人が住みづらくなってはならない」

「不法就労や不法滞在は許さない」

■ 同日(朝日新聞などのインタビュー)

「人手不足で必要な人を入れることと、ルールを逸脱する人に『ノー』と言うことは、全く矛盾しない」

発言を全体として見れば、小野田氏は「一部の」と限定している。「ルールを守る外国人を守る」という前提も述べている。人手不足対策との両立を主張している。

ただし、「悪いことをする外国人は日本にいない状況をつくる」というフレーズを選んだ。この表現が、見出しになり、議論を呼んだ。


統計が示す「外国人犯罪」の実態

では、データはどうなっているのか。ここが最も重要だ。

基本的な数字——しかし落とし穴がある

2023年(令和5年)の外国人犯罪検挙件数:15,541件(前年比20.0%増)

外国人犯罪検挙人員:9,726人(前年比11.8%増)

この数字だけを見ると「増加している」と感じるかもしれない。しかし、犯罪率(人口あたりの検挙人員)で見る必要がある。

犯罪率の比較——数字の裏側

一般的に引用される数字:

  • 外国人の犯罪率:約0.3%

  • 日本人の犯罪率:約0.2%

一見、外国人の方が1.5倍高い。しかし、この数字には大きな落とし穴がある

落とし穴1:分母に何が含まれているのか

外国人犯罪率0.3%の計算式:

  • 分子:検挙人員約9,726人

  • 分母:在留外国人約170万人(永住者等を除く)

ここで重要なのは、短期滞在者(観光客など)が分母に含まれていないという点だ。

2024年の訪日外国人(インバウンド)は約3,687万人。警察庁の統計では「来日外国人」の定義に「短期滞在」が含まれる。つまり、短期滞在者の犯罪は検挙件数に含まれるが、人口(分母)には含まれていない

もし短期滞在者約3,700万人を分母に加えれば:

  • 分母:約170万人+3,700万人=約3,870万人

  • 犯罪率:9,726人÷3,870万人=約0.025%

つまり、日本人の0.2%より大幅に低くなる

ただし、短期滞在者の多くは数日〜数週間しか日本にいないため、単純に足し算するのも不適切だ。しかし、検挙件数には含めるが分母には入れないという統計手法自体に問題がある。

落とし穴2:年齢構成の違い

日本人の犯罪率は年齢によって大きく異なり、特に20代で高い。一方、外国人の人口構成は20-30代の若年層に集中している。

専門家の分析によれば、年齢構成を調整すると、外国人と日本人の犯罪率はほぼ同等になる

日立財団の研究では、外国人全体で日本人の1.3倍だが、30-39歳の日本人と比較すると同等。年齢・性別を調整すると、日本人とほぼ同じ水準になるという分析がある。

これは疫学研究の基本だ。高齢化した地域Aと若年層が多い地域Bで死亡率を比較する場合、必ず「年齢調整」を行う。これをしないと、地域Aの方が死亡率が高く見えてしまう。

外国人犯罪の統計も同様だ。年齢構成、在留資格、滞在期間など、多くの要素を考慮せずに「外国人の犯罪率は日本人より高い」と結論づけることはできない。

落とし穴3:「来日外国人」の定義

警察庁の統計で「来日外国人」とは、在留外国人から以下を除外した者を指す。

  • 永住者(約81万人)

  • 永住者の配偶者等(約4万人)

  • 特別永住者(約30万人、主に在日コリアン)

  • 在日米軍関係者

  • 在留資格不明者

つまり、約120万人の外国人が統計から除外されている

2023年の在留外国人約288万人のうち、「来日外国人」として統計に計上されるのは約170万人程度だ。しかも、永住者などの犯罪率については詳細なデータが公表されていない。統計に現れない外国人が、全体の4割以上いる。

実際の犯罪率は?

より正確な分析では:

  • 令和2年度の来日外国人約170万人:検挙率約0.3%

  • 永住者など約120万人:検挙率約0.3%

  • 日本人:検挙率約0.2%

来日外国人と永住者の犯罪率はほぼ同じで、日本人よりわずかに高い程度

しかし、これも年齢調整をすれば、ほぼ同等になる。

技能実習制度に集中する問題

在留資格別に見ると、犯罪検挙人員は「技能実習」が令和元年度から急増し、トップになった。

これは「来日外国人だから犯罪が多い」のではない。特定の在留資格(技能実習)に問題が集中していることを示している。

背景には構造的問題がある。技能実習生が100万円以上の借金を抱えて来日する。送り出し機関による搾取。劣悪な労働環境。言語の壁とコミュニティからの孤立。

これらの構造が、一部の技能実習生を犯罪に追い込んでいる。

共犯率の高さ——組織的犯罪の特徴

来日外国人の犯罪には特徴がある。共犯率が高いのだ。

  • 来日外国人の共犯率:41.1%

  • 日本人の共犯率:12.5%

特に万引きでは、来日外国人の共犯率が22.6%に対し、日本人は3.4%。

これは「犯罪が個人ではなくグループで行われやすい」という構造を示している。組織的犯罪の傾向があり、単純な個人犯罪とは異なる特徴だ。

起訴率のデータ——「不起訴ばかり」は誤り

SNSなどで「外国人は不起訴ばかり」という主張が見られるが、データは逆を示している。

  • 外国人の起訴率:41.1%

  • 刑法犯全体の起訴率:36.9%

外国人の起訴率の方がやや高い。「検挙されてもすぐ釈放される」という主張は、統計的根拠を欠いている。

長期的トレンド——犯罪は減少傾向

日本刑事政策研究会の分析によれば、「来日外国人による犯罪は新規入国者や在留者の増加に呼応することなく減少を続けており、来日外国人による犯罪情勢の悪化は招いていない」とされる。

外国人人口が1990年代の約130万人から2023年には370万人超へと3倍近く増加した。にもかかわらず、検挙人員は減少している。

外国人犯罪の検挙件数は2005年の43,622件をピークに減少し、2023年は15,541件。ピーク時の約35%まで減少している

外国人人口の増加は治安の悪化にはつながっていない。むしろ改善している。

これが統計が示す事実だ。

統計の限界——見えないもの

ただし、統計には限界がある。

  • 未検挙犯罪は含まれない

  • 報告バイアスの可能性

  • 体感治安との乖離

統計上の犯罪率が低くても、特定地域で外国人犯罪が集中すれば、住民の不安は現実のものになる。この体感治安の問題を無視することはできない。

まとめ:99.7%は犯罪を犯していない

統計から言えることは明確だ。

外国人の99.7%以上は犯罪を犯していない。

年齢調整すれば、日本人との差はさらに縮まる。問題は技能実習制度という構造にある。

「悪いことをする外国人」という表現は、統計的事実と大きく乖離している。


報道の「切り取り」が生む印象

次に、報道の問題を見てみよう。

日本経済新聞の見出し:

「小野田紀美経済安全保障相『悪いことをする外国人は日本にいない状況をつくる』」

この見出しだけを見た読者は何を感じるか?

「外国人全体への排除」と受け取る可能性がある。前後の文脈(「一部の」「ルールを守る外国人を守る」)は本文を読まないと分からない。SNSでは見出しだけで拡散される。

Xでの反応を見ると、支持する側は「当然のこと」「排外主義の対極だ」と言う。批判する側は「レイシャル・プロファイリングだ」「データ無視だ」と反発する。

結果として、文脈が失われ、感情的反応が優位になる。

東京大学の高谷幸准教授は日本経済新聞のthink!で次のように指摘している。

「『悪い外国人』だけを対象にすれば差別には当たらないと考えているのかもしれませんが、実際に『悪い外国人』を見つけ出そうとすると、まずは外国人に見える人全員を疑ってかからなくてはなりません。これは、『外国人=潜在的にはルールを破る可能性がある人』という暗黙のメッセージになり、外国人にたいする偏見を強化し、社会の信頼を掘り崩すのではと懸念します。」

同じくthink!で、東京大学の小島武仁教授はこう述べる。

「『悪い外国人』は『悪い』のだから問題なしという意見が聞こえてきそうですが、(中略)外国人は悪いという偏見を助長する問題発言です。(中略)外国人が何かの意味で『悪い』傾向は『そもそもない』か、稀なケースで存在したとしても極めて小さいというのがコンセンサスだと理解しています。」

専門家からは、発言そのものへの批判が出ている。


「症状」と「病因」を混同してはいけない

この問題を別の角度から考えてみたい。

症状:一部の外国人による犯罪

病因:技能実習制度の構造的問題、労働環境の劣悪さ、管理体制の不備

「悪いことをする外国人を日本にいない状況にする」という処方箋は、症状(犯罪)に過剰反応し、病因(制度問題)を見落としている可能性がある。

これは「発熱患者を病院から追い出せば、院内感染はなくなる」と言っているようなものだ。

正しくは「感染経路を特定し、衛生管理を改善し、予防策を講じる」。

同様に、外国人犯罪の問題も:

  • 技能実習制度の抜本的改革

  • 労働環境の改善

  • 管理体制の整備

  • 言語・文化サポートの充実

これらの「病因」に対処しなければ、問題は解決しない。

レイシャル・プロファイリングの危険

東大の高谷准教授が指摘したように、「悪い外国人を見つけ出す」プロセスそのものが、外国人全体への疑いの目を正当化してしまう。

特定の属性を持つ人々に対して先入観で判断することは、公正さを欠く。


三者の責任——政治家・メディア・受け手

この問題を整理すると、三者それぞれに課題がある。

政治家の責任

小野田大臣は「悪いことをする外国人」というキャッチーな表現を選んだ。

より適切だった表現は、たとえばこうだ。

  • 「違法行為を行う者への対応を強化し、ルールを守る外国人が安心して暮らせる環境をつくる」

  • 「不法滞在・不法就労の取り締まりを徹底し、適正な外国人受け入れ体制を整備する」

  • 「犯罪を犯した者には国籍を問わず毅然と対処し、必要な措置を実施する」

問題点は3つある。

主語が「外国人」になっている。本来は「違法行為」や「犯罪」が主語であるべきだ。

「悪いことをする外国人」という括り方。属性(外国人)と行為(悪いこと)を結びつけている。

「日本にいない状況」という表現。排除のニュアンスが強い。

政治家の発言は、見出しに切り取られることを前提に慎重であるべきだ。

メディアの責任

日本経済新聞は「悪いことをする外国人は...」を見出しに選んだ。

前後の文脈(「一部の」「ルールを守る外国人を守る」)は本文でしか読めない。見出しだけで拡散されることは予見できたはずだ。センセーショナルな見出しで読者を引きつける構造がある。

メディアには、正確な情報を伝える責任と、文脈を保持する義務がある。

受け手の責任

私たち読者も試されている。

見出しだけで判断していないか?統計データを確認したか?感情的反応を優先していないか?

メディアリテラシーが求められる時代だ。


冷静な議論のために——データに基づいた政策を

ここまでの検証から、いくつかの結論が導ける。

統計は「何を含み、何を除外するか」で印象が変わる

「来日外国人」の定義一つで、約120万人が統計から消える。短期滞在者を分母に含めるかどうかで、犯罪率は0.3%にも0.025%にもなる。

これは政策判断を歪める危険がある。

発言は「どう切り取られるか」で意味が変わる

小野田大臣の発言全体を見れば、一定の配慮は読み取れる。ただし、「悪いことをする外国人」というフレーズは、切り取られることを前提にすれば不適切だった。

本当の問題は技能実習制度にある

犯罪が特定の在留資格に集中しているなら、その制度そのものにメスを入れるべきだ。「外国人」という属性ではなく、「制度」という構造を変えなければ、問題は解決しない。

年齢調整された正確なデータの公表を

永住者を含む外国人全体の、年齢調整された犯罪率データが必要だ。短期滞在者の扱いも明確にすべきだ。これなしに「外国人の犯罪率は高い」と断じることはできない。


感情ではなく、データに基づいた議論を

小野田紀美経済安保相の「悪いことをする外国人は日本にいない状況をつくる」という発言は、統計的事実と大きく乖離している。

  • 外国人の99.7%以上は犯罪を犯していない

  • 年齢調整すれば、日本人との差はほぼなくなる

  • 問題は技能実習制度という構造にある

  • 外国人人口が3倍になっても、犯罪は減少している

ただし、国民の不安感も無視できない。体感治安の問題、特定地域での集中、これらは現実の課題だ。

必要なのは5つある。

正確な統計データの公表(永住者を含む、年齢調整済み、短期滞在者の扱いを明確に)

技能実習制度の抜本的改革

レイシャル・プロファイリングを避けた取り締まり

メディアの文脈保持

受け手のメディアリテラシー向上

政策立案には、感情的な対症療法ではなく、根本原因に向き合った姿勢が求められる。

データは嘘をつかない。しかし、見せ方次第で真実を隠すこともできる。

私たちに求められるのは、冷静に、科学的に、事実を見極める目だ。

統計の見出しに踊らされず、発言の文脈を確認し、データの裏側を読む。それができて初めて、建設的な議論が始まる。



読んでいただきありがとうございました。
コメント、記事購入、チップ等いつもありがとうございます。
大変感謝しております。
関連記事もありますので、下記サイトマップを参照していただければ幸いです。

【参考文献】

  • 法務省「令和6年版犯罪白書」

  • 警察庁「犯罪統計」

  • 日立財団グローバルソサエティレビュー「統計から読み解く移民社会④」

  • 日本経済新聞「小野田経済安保相インタビュー」(2025年11月18日)

  • 東京新聞「外国人犯罪は増えた?減った?統計データで確認」

  • テレ朝NEWS「外国人の起訴率に関する報道」

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私には、富裕層外国人に紛れている闇社会の外国人の話をしているように聞こえます。

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