クジラの保全と地域産業との両立を考える「2025沖縄ザトウクジラシンポジウム・ワークショップ(沖縄美ら島財団主催)」が18日、那覇市内で開かれた。国内外の研究者やツアー関係者らが登壇。人気が急上昇する一方、母子への影響が大きいホエールスイムのあり方などを議論した。
グリフィス大学(オーストラリア)研究員のステファニー・スタックさんは、沖縄でホエールツアーが与えるクジラの行動への影響を調べたところ、ウオッチングでは統計的に有意な影響は現れなかったが、スイムでは変化を引き起こしたと発表。「母子クジラは弱い。休息中の母を守ることは次世代を守ることに直結する」と強調した。
沖縄本島中南部ホエール協会の大谷友斗スイム事業部長は、スイム目的の海外旅行客が急増し、売り上げがウオッチングを上回っていると紹介。「環境意識の高い参加者を増やす仕組み作りが市場の成長につながる」と話した。
一方、慶良間諸島周辺でのスイムを自主ルールで禁止している座間味村ホエールウオッチング協会の宮城清副会長は「クジラの未来を考えなければ私たちの未来はない。クジラから選ばれる海であり続けるよう取り組みたい」と語った。
ドイツの環境保護団体副代表のファビアン・リッターさんはオンラインで登壇。カナリア諸島での高速船とクジラの衝突事故を解説し、「クジラの重要な生息区域での高速船運航にはとても懸念しており、配慮が必要。速度制限や生息域に重ならないルートを選ぶことが重要だ」と訴えた。(社会部・塩入雄一郎)